小売業のトレンドはオムニチャネルへ。

最近は、O2Oがより広義なニュアンスで語られるようになり、オムニチャネルと共に小売業のトレンドとなりつつあります。

これらの言葉は、実店舗とオンラインの融合を指しており、それぞれの垣根をなくす事で利用者に便利さを提供しようとするもの、と言えます。

実店舗の良さは、商品を手に取って見る事が出来る為、安心して買い物する事が出来ます。しかし、一方において空間的制約が存在し、商品の選択肢はネットに比べ少なく、欲しい商品の在庫が無い、という事も珍しくありません。

ネットは、沢山の選択肢が存在しますが、商品が自宅まで届くのに時間を要し、また、実際のイメージと異なる商品が送られてきた、という事は誰もが経験する事だと思います。

オムニチャネルとは、このそれぞれのメリット・デメリットを相互に補完し、云わば『良いとこ取り』を可能にしようとする試みなのです。

・ウォルマートのオムニチャネルへの取組み

世界最大の小売業を展開するアメリカのウォルマートでも、オムニチャネルへの取り組みが進んでいます。それが、『カーブサイト・ピックアップ』という手法です。

これは、元々は『カーブサイト社』という企業が始めた事業でした。

利用者は同社のアプリをダウンロードし、最寄りの提携ストアを選択、注文をすると、1時間以内に商品が準備されて、その旨の通知が届きます。利用者は所定の場所にクルマで到着すると、名前を告げるだけで専門のスタッフが商品をトランクに乗せてくれるのです。

現在アメリカでは、同様のサービスを大手チェーンの1/4が導入しています。

日本でもネットで購入した商品をコンビニで受け取れるサービスは存在しますが、時間軸が『日』となっており、むしろ流通側の在宅率の低さを補う、という側面が大きいと言えます。

しかし、近い将来には必ず導入される事は確実で、そのオペレーションが重要になってくると言えるでしょう。

・オムニチャネル化が進む中国市場

この分野においては中国が非常に進んでいると言えます。

昨今の中国では『外売』という方式が急激に浸透してきています。これは、一種の『出前サービス』なのですが、飲食業だけでなく小売業も積極的に取り入れています。

あるスーパーでは、ネットで購入した生鮮食品を半径3キロ以内であれば、30分以内に無料で配達します、というサービスを行っており、既にネットでの販売比率が60%を上回っています。

中国では、決済も含めた全ての工程がネット上で完結し、その便利さと選択肢を享受しながら、弊害であった『時間の壁』を壊す取組みが進んでいるのです。

最近、中国のスターバックスがアリババと提携し、コーヒーの『外売』を行う事がアナウンスされました。この事業の凄いところは、『コーヒー』という商材にあります。

ご存知の通り『コーヒー』という物は冷めてしまったり、氷が解けてしまうと商品価値を失います。その為、スターバックス社は長年『外売』の参入に消極的な姿勢を示してきました。しかし、今回『アリババ』という強力なパートナーを得る事ができ、実現に漕ぎ着けました。

このシステムでは、ネットで注文が入ると、独自のアルゴリズムで、どこの店舗が一番近いか、だけで無く、現時点での余剰人員まで考慮して、最適な店舗を割り当てます。また、それだけでなく、『アリババ』が経営するスーパーの一部に専用のスターバックス・キッチンを確保して、敏速なデリバリーを実現する計画まであるそうです。

日本企業のオムニチャネル化への取組み

残念ながら、日本はこの分野においてはかなり遅れていると言えます。大手小売業の多くはネットの活用が不得手で、情報提供に留まる事例が多数散見されます。

日本の小売業では、『Amazon脅威論』が囁かれて久しいですが、彼らがAmazonに勝てるチャンスはこの『オムニチャネル化』しかありません。

現段階ではAmazon社は日本に於いて倉庫以外のインフラは持ち合わせていない為、まだ日本の小売業にアドバンテージがあります。しかし、Amazonによる米ホールフーズ・マーケット買収で見て取れるように、彼らがオムニチャネルの覇権を狙っているのは確実だと言えます。

最近になり『イオン・ドットコム』などの通販サイトも登場しつつありますが、内容はかなり『お粗末』な物と言えます。

ページは見難いですし、商品数も少ない。そして、何より『実店舗の活用』という視点が抜け漏れています。問題は経営陣にネットに詳しい人材が居ない事と高齢化にあります。

オムニチャネルの主戦場は『食品』にある事は確実です。この分野は、日常的に買い物が必要で身近な存在です。外資にここを抑えられると、既存の小売業は『詰んだ』も同然です。

近い将来、Amazonやアリババなどの世界的企業が日本の小売業に進出してくるのは確実です。それまでに、どれだけの準備が出来るか?この先数年の取組みが生死を分けると言っても過言では無いのです。