アリババ VS テンセント 中国の特異な経営戦略は常識を変えるのか?

 

現在、中国経済は3強により支配されている、と言われています。

しかし、実際はBAT(バイドゥ・アリババ・テンセント)と呼ばれる中でも百度(バイドゥ)は他2社に大きく水を開けられている状態で、実質アリババとテンセントの2社がお互いに覇権を掛けて壮絶な戦いを繰り広げています。

 

集中の決定とは戦場の決定である。
この決定なくしては、戦闘はあっても戦争にはならない。
集中の目標は、基本中の基本というべき重大な意思決定である。
資源は限られている。集中することなくして成果をあげることはできない。

ピーター・ドラッカー

 

『選択と集中』

ピーター・ドラッガーによって提唱された、今や『常識』とも言える経済原則です。日本に於いても過去バブル経済で多角化に走った企業の末路から、この理論を疑う経営者は少数派だと言えます。

ただ世界を見渡すと、この流れに逆行する国が1つだけ存在します。それが中国なのです。

 

アリババはEコマース、テンセントはゲーム、それぞれ創業時の業種は異なります。しかし、共通するのは、『多角化』を経営方針としている点です。

その分野は、金融・食品スーパー・流通・医療・旅行など多義に渡り、手当たり次第事業領域を広げている、という印象を受けます。実際に両社は過去5年間において、アリババ(419億USドル)、テンセント(625億USドル)と収益の大部分をM&Aに費やしているのです。

この常識を逸した『多角化』は韓国やインドなどの新興国の財閥経営では一部見られますが、世界の潮流からは逸れた存在であると言えます。

ただ、興味深いのは、この動きは日本のバブル経済の際の日本企業とは大きく異なる性格を持っている点です。

 

 

この一見節操のないように見える多角化ですが、実は明確な『柱』が存在します。その柱とは『ビックデータ』に他なりません。

人工知能が全ての産業を再定義する。

孫 正義

彼らが狙うのは人工知能を活用してあらゆる産業に革命を起こす事なのです。その為に、自社で運営するアプリやSNS、Eコマースから膨大な量のビックデータを抽出し、そのデータを活用する為のプラットフォームを買収により手に入れている、と見るべきでしょう。

これは、シナジーを重視する欧米のビジネスモデルとは大きく異なり、ビックデータをコアコンピタンスとして企業経営の中核に設定する、という全く新しいモデルだと言えるのです。

そして、このモデルの驚異的な所は成長スピードの速さに有ります。

例えば、アリババが経営するコンビニのフランチャイズでは、彼らが運営するEコマースや電子決済アプリの『アリペイ』の購買データを利用し、個々の商圏をAI分析する事で商品の最適化を行います。実際にそれにより短期間で50%の売上増加を達成したのです。

 

このビジネスモデルの正誤は私には判断出来ませんが、現状を見る限り上手く機能しているように見えます。

この事は、自動車業界のEV化・自動化が進みグーグルやテスラなど様々な新興企業が出現したように、全くの異業種が同じ市場で対峙するという、謂わば、業界の壁を壊す危険性を持っているのです。

人工知能の出現はあらゆる産業障壁を破壊し、『富の集約化』を引き起こす可能性があるという事です。この事は、ゲームのルールが完全に変わる事を意味しているのです。

時代が変われば、常識も変わる。頭では分かっていても人間の行動を変える事は容易ではありません。ただ、世界の転換期である現在において、その遅れは命とりになりかねません。

 

元来、民主国家は時代のドラスティックな変化には不得手だと言えます。一方、中国のような全体国家は、ある意味『力業』で強引に物事を推し進める強さ?があります。一党独裁国家では世論など気にする必要が無いのです。

この不利な環境の中、どれだけスムーズに次の時代に移行出来るか、それが非常に重要になってくるように思います。