キャッシュレス時代の闇。

 

スマホ決済のプラットフォーマーであるアリババ、テンセントが、それを活用した様々な便利なサービスを世の中に発信し、支持を得ている事は何度もご紹介してきました。彼らは利用者の購買行動と個人情報を紐づける事で、世界に類を見ない効果的なマーケティングモデルを作り出し、まさに『痒いところに手が届く』ような便利さを提供し続けているのです。

 

しかし、一方においてキャッシュレス社会とは、その便利さを引き換えにお金に関するビックデーターを彼らに無料で与え続けなければならない、という側面が存在します。

・丸裸にされる利用者達

 

アリババとテンセントは、中国の決済データを独占する事で、まさに利用者を丸裸の状態にしました。彼らは、利用者の勤務先・年収・住所などの情報は勿論、購買記録から平均購買単価や好きなブランド、子供は居るか、などの家族構成まで知る事ができ、お金に関する全ての経済活動を把握しています。

それらを分析すれば趣味、趣向や好きな味覚、場合によっては人に知られたくない秘密まで把握する事ができ、ある意味、家族や親友よりあなたを知る存在と成り得るのです。

実際に中国では7万にも及ぶ『裏サイト』が存在し、そう言った個人情報の売買が行われているそうで、犯罪に使用される事も多いと言います。

 

・『芝麻信用』による階級社会の成立

これは、多かれ少なかれどんな社会でも存在する問題ですが、中国では『芝麻信用』の存在が、それをより明確に規定しています。

 

『芝麻情報』とはアリババが運営する人工知能で個人の信用度を数値化するシステムです。

日本に於いても、ローンなどを組む場合は、信販会社や銀行は『信用協会』のデータベースにアクセスして、顧客のローンの有無や履歴、返済状況などをチェックします。このシステムとの違いは、この数値が社会生活を送る上で非常に大きな意味を持ち、それにより受けられるサービスの質が左右される程の影響力を持つ事です。

 

 

この数値は350~950点の間で推移します。基本的に数値が高い人程『信用できる人間』とされ、様々な特典を受けれる仕組みです。

 

  • 700〜950点:極めて良好
  • 650〜699点:とても良い
  • 600〜649点:良い
  • 550〜599点:普通
  • 350〜549点:やや低い

基本的には上記のようにランク分けされており、800点以上の人は殆ど存在しません。それだけに800点を上回る事は非常なステイタスとされており、1点でも点数を上げるべく人々は躍起になるのです。

・スコアを決める5要素

  • 身份特质:年齢や学歴や職業など
  • 履约能力:支払いの能力
  • 信用历史:クレジットカードの返済履歴をふくむ信用履歴
  • 人脈関係:SNSなどでの交流関係
  • 行为偏好:趣味嗜好や生活での行動

SNSでの交友関係まで入っているのが面白いですが、非常に項目が多義に渡っているのが分かります。ただ、逆に言うとアリババはこれら全ての情報を持っている事を意味します。

・数値化に使用する情報源

 

スコアリングにはアリババ集団が提供する様々なツールやサービスを基に人工知能が算出する仕組みです。

  • 決済サービス「支付宝(アリペイ)」の決済履歴
  • シェアリングエコノミーサービスでの評価
  • 保有している金融資産の価値
  • ネットショッピングでの購入履歴
  • 公共料金の支払い履歴
  • 社会のために寄付をしているか?

このシステムの運用の秀逸な点は、勤務先や年収などの情報を渡せば渡すほど点数が上がる仕組みで、利用者が個人情報を差し出しやすい環境を作っている点です。

また、ネットショッピングの履歴も大きな要因となる為、買い物を誘発する『仕掛け』になってるのが分かると思います。

ただ、一企業がこれだけの個人情報を把握している事には驚かされます。

・信用スコアは毎月更新

スコアは毎月更新され、常に変動します。このスコアは『社会的地位』に直結しており、人々は常にその数値を気にしなければなりません。

仮にSNSで影響力のある人に嫌われたりすると、関係を切られ数値にダメージを与えてしまいます。日本人の私達からすると、ただの数字に過ぎませんが、この『ただの数字』が社会生活を営む上で、あり得ない程の大きな影響を与えるのです。

 

・高い芝麻信用スコアを維持するメリット

私達、日本人からすると一企業が運営する、ただのサービスに過ぎませんが、中国社会では、その数値により海外渡航の際のビザが下り難かったり、住宅を借りる際に制限を受けるなど、社会のあらゆる分野で影響を与える程の地位を確立しています。(出国の際に専用ゲートを使用出来ると言う特典まで存在します。)

これが低いが故に受けられないサービスも多く、『面子』を異常に気にする国民性と相まって、今やその数値は国民の多くが無視できない存在にまで発展したのです。

キャッシュレス化の進展はプライバシーという概念の崩壊を意味します。私達、利用者は個人情報とバーターで便利さを享受する事が出来るのです。それなら現金のままで良い、という方も多いと思いますがキャッシュレス化の動きはもはや止められません。人件費など『現金主義』を維持するコストは、余りにも高いのです。

その為、ある程度の法整備はされるとは思いますが、プライバシーの概念は確実に変化します。人工知能の活用には『情報』が不可欠だからです。

 

ただ、それにより生活が窮屈になるなら本末転倒です。どんな未来がこの先に待ち受けているかは分かりませんが、技術は人間が幸せになる為に活用すべき、という原則を忘れてはならないのです。