自動化が進む中国の物流事情。

Eコマースのボトルネックは『流通』と言うのが今や共通認識になっていますが、Eコマース先進国である中国では、かなり深刻な状況だと言えます。

2017年の世界全体の荷物流通量が800億個と言われる中、中国は401億個と、地球上の荷物の半分以上を占めています。特に11月11日の『独身の日』は、アリババ1社だけでも一日で2.5兆円もの売り上げを上げるなど、流通業者にとってまさに修羅場とも言える状況を作り出します。

上記の写真は、その時の状況を分かりやすく映し出した画像ですが、このような冗談のような状態が現実に起こり得る訳です。

その為、中国のEコマースにおける可及的問題は『物流の自動化』だという事がお分かり頂けると思います。

宅配業務の共通した課題は、『儲からない事』です。

例え10万円の商品を買ったとしても、1000円の送料は惜しむ、それが人間なのです。その為、各社ギリギリの人員で廻している、というのが現状です。このような状況で問題が発生した場合、ちょっとした事が倒産の引き金になりかねません。

実際に昨年、上海にある宅配大手が大量の荷物の遅延を引き起こした事がありました。

あまりの荷物の多さに配送が延滞し、荷物の届かない利用者の問い合わせが殺到。現場では既にパニック状態の為、電話に出る人員さえ確保出来ない状態でした。この事が、施設が閉鎖された、という風評に繋がり荷物のキャンセルが殺到。銀行で言う『取り付け騒ぎ』のような事態が起こり、あわや倒産か、という状況に追い込まれたのでした。

 

いかに流通を効率化させるか?

この命題に対し、人工知能を用いた自動化で答えを出そうと言う取組みが中国では起こっています。

サプライチェーンの中でも比較的自動化がし易いのが配送センターでの仕分けです。日本の郵便局などではほぼ自動化が完了している分野ですが、ハガキと違い様々な形、材質が違うEコマースではなかなか厄介な問題です。

 

 

 

 

杭州市にある企業の配送センターでは、ロボットを使った自動仕分けシステムが登場しました。

この掃除ロボット『ルンバ』に似たロボットは、最大8㎏の荷物を載せて地上に開けられた既定の穴まで運びます。プラットフォームの下部はバスケットになっており、荷物が一杯になるとアラートが鳴り、車に乗せられ配達に向かう仕組みです。

荷物には全てQRコードが貼られており、それにより、どの穴まで運べば良いか判断します。このロボットは自動運転の技術により、お互いがぶつからない様に設定され、バッテリーが少なくなると自分で判断して充電器に向かいます。

これにより、1日で20万個のい荷物を捌けるようになりました。また、それに要する人員も300人から20人へと大幅な効率化に成功したのでした。

 

・物流にドローンを活用。

 

日本ではドローンというと、まだオモチャという認識でですが、中国では既に物流の現場で実用化されています。

その中でも大規模な物が物流大手『順豊』とECサイトの『京東』が共同で計画している手法が国内300箇所にドローン専用の飛行場を建設し、そこから無人飛行機で荷物を運ぶ、というものです。

 

 

私達がイメージするドローンとは、かなり異なりますが、無人飛行機が専用の貨物ユニットに荷物を搭載し、それを何と空中で切り離します。

 

 

そして、専用の貨物ユニットが上の写真です。一目見て分かると思いますが、完全にミサイルですよね…。ミサイルの中に荷物を入れて、パラシュートで落とす、というシステムのようです。

実は、これを製作している会社は無人偵察機などを国に収める軍事産業で、その技術を民間転用したようです。

 

 

その後は、小型のドローンで小口配送を行う事になります。現在は国の許可を待ってる状態ですが、技術的な問題は全てクリアしており、実用化を待つだけ、という段階に有ります。

 

そんな中、国内最速でドローンを実用化したのが、テンセント傘下の食品スーパー『超級物種』です。これについては以前このブログでも取り上げましたが、宿敵であるアリババが経営する『フーマー・フレッシュ』が顧客からのネット注文を30分以内で届ける、というサービスに対抗する為、彼らが出した答えがドローンだったのです。

ちなみに、こちらは顧客の下に直接ドローンが届けるのでなく、ラストワンマイルは配送員に引き継ぐシステムを採用しています。

 

 

空の次は地上ですが、実は北京市では自動運転カートによる配送が実用化されています。恐らく世界初の取組みだとは思いますが、彼らは各種センサーで周りの状況を把握し、交通ルールを守りながら時速15㎞で走る事が出来ます。

現在20数台が運用されてますが、自宅前まで来てくれるのではなく、既定のポイントに到着すると利用者にメールで通知が届き、そこまで取りに行く必要があります。その為、利便性としては劣りますが、中国ではバイクと自転車専用の通行帯が存在するところが多く、低速での走行が廻りの交通を邪魔しない事が運用のハードルを下げていると言えます。

 

・宅配ボックスの活用

日本同様、不在率の高さが流通の効率化を妨げています。特に中国は共働きの世帯が多い事が問題に拍車を掛けており、『宅配ボックス』の活用が重要となってきます。

 

 

最近は宅配ボックスもハイテク化が進み、上の画像のような人工知能を活用した物まで出てきました。

直径2.5m、高さ4.2mもの巨大な八角形の物体は、中に最大600個の荷物を収納する事が出来ます。利用者は予め顔画像を登録する事で、機械の前に立つだけで本人を認識して、荷物が出て来る仕組みになっています。

 

さらに凄いのが、荷物の運搬をドローンで出来るよう屋上部にヘリポートのような設備を有し、そこから自動で荷物を搬入出来るシステムになっています。また地上からも同様、自動運転カートでの搬入も同様です。

何とも、まるで未来都市のようですが、問題となるのが現在配送員として存在する300万人とも言える労働者の存在です。急激な失業者の増加は社会不安にも繋がりますので、共産党がどのような対応を取るか注目されます。

 

人工知能の実用化により仕事が無くなる、という事は現在多くの専門家に囁かれていますが、AIで最先端を行く中国は一つのベンチマークと成り得ます。

日本は中国や米国と比べると、かなり遅れており『ゼロリスク信仰』とも呼べる国民性と相まって急速に力を失いつつあります。既に挽回不可能とも言える距離感は感じますが、恐れてばかりいては前には進めません。人工知能は既に確定した未来であり、避けて通る事は出来ないのです。

まずは、既存の企業においてテクノロジーを理解する人間がトップに就く事。今、急激な若返りが求められている事を認識すべきだと思います。