米中貿易戦争勃発するも、市場は冷静!?

荘厳な筈の国連総会で突如、笑いが巻き起こった。

トランプ氏の演説で彼が『私は我が国の歴史上、どの政権より多くを成し遂げた。』と自画自賛した際の出来事であるが、彼が本気でそう思っている事は疑い無さそうである。『その反応は予想していなかったが、大丈夫。』とすぐに平静を装ったが、彼のナルシスズムとナイーブ性を特徴ずける一場面だと言えます。

 

存在自体が冗談にも思える現アメリカ大統領であるが、忘れてはならないのが彼は選挙で選ばられて、国内の約半分を占める共和党員の約8割は、現在も彼を支持しているという点。彼の思想は、決してマイノリティでは無いのです。

今の所、市場はかなり楽観的な動きをしていますが、世界の1位と2位の国、が貿易戦争をして他国に影響が及ばない筈がありません。株式市場の動きはこの先慎重に見て行く必要があります。

 彼がこれほどの支持を得るのは、アメリカの弱体化と人口構成の変化が大きく寄与していると言えます。具体的には、中国の台頭と、WASPと呼ばれる過去アメリカの権力構造に於いてトップを占めていた層が、移民の増加により少数派に成りつつある事への焦りが顕在化したものである。

この問題の本質は『貧富の差』の拡大だと言えます。

 

上位1%の富裕層がUSでの40%の金融資産を持ち、上位20%で90%以上を占める。

上のグラフにもあるように、アメリカの貧富の差は、もはや自力では解消できない程開き、それが階級社会を作り出すまでに至っています。トランプ氏は彼らに『移民』という分かりやすい捌け口を用意する事により、大統領にまで昇りつめたのです。

 

・米中冷戦の始まりか!?

そのアメリカが中国との対立を明確にしている。

米中両国ののGDP変遷には諸説あるが、近い将来中国が米国を抜き去る、という点では一致している。概ね2030年頃という予想が大勢であるが、今の状況が続くと、それが早まる可能性すらある。

確かにとトランプ氏が言うように、中国進出の際に現地企業との合弁を義務付ける今の中国の方針はWTOの規約に違反している。結果、中国は短期間での技術移転に成功し、人工知能など、一部の分野では世界をリードするまでに急成長を成し遂げました。

 

ただ、残念ながら今のトランプ氏と中国の首脳部では政治的能力が違い過ぎる。今の中国の政策立案を担う若手層は驚く程優秀で戦略的だと言えます。おまけに、したたかさまで兼ね揃えており、相手が悪いと言えます。

 

戦後、先進国は国際ルールの形成に力を尽くしてきました。トランプ氏はこれを今、急速に壊しつつあります。それにより中国が同様の行いをする事への隠れ蓑を提供するばかりか、先進国が築き上げてきた『関係性』を分断する機会を与えてしまっている、と言えます。今、米国の最大のアドバンテージは『同盟国』が存在する、という点です。中国にはこれが存在しない。

トランプ氏には、そこが見えていない。

そもそも『TPPは、中国に今までの経済ルールを押し付ける為の枠組み』でした。これがあれば、アジアの問題にアメリカを連れて来れる、というメリットが存在したのです。

しかし、トランプ氏はそれをぶち壊してしまった。これは、アジア圏の覇権を中国に明け渡すことを意味するのです。

 

私が中国を恐れるのは、彼らの持つ政治体制が、人工知能との親和性が高いからです。

民主国家で人工知能を活用しようとする場合、必ず『プライバシー』という概念が邪魔をします。それは、情報とは『個人情報』に他ならないからです。しかし、中国のような権威主義国家は、その事に気に留める必要はありません。そもそも政権交代自体が存在しないからです。彼らは、必要な時に必要な事を実行する『強制力』を有しています。その事の正誤は別にして、そのような相手と戦う事は、先進国には非常に不利な要素だと言えます。

 何度も言いますがTPPは中国に我々にとって有利なルールを押し付けるチャンスでした。しかし、最大の不幸はそのタイミングに場当たり的な政策を推し進めるアメリカ大統領が現れてしまったことです。

確かに世界のリーダーの座がアメリカから中国に移ると言う確証はありません。中国自身、人口問題や、なにより一党独裁と言う問題を抱えています。

問題は中国自身がそれまで持つか、という点とアメリカの『出方』にあります。米ソ冷戦時代は両国の代理戦争が世界各地で勃発しました。同じことが米中で起こらないと言う確証は何処にも無いのです。

 どちらにしろ、この先十年は両国の政治関係を起因とした問題が顕在化してくると思います。その中で日本は自由貿易を守ると言う明確なスタンスを打ち出す必要があります。

日本は地政学的にも中国に近く、非常に有利な条件を有しています。それを十分に理解した上で交渉に当たる『したたかさ』こそが、今、日本に最も必要な物だと言えるでしょう。