Amazon VS ウォルマート。オムニチャネルが本格化。

2017年8月、アメリカの小売業が震撼する出来事が起こった。
それが、米ネット通販大手のAmazonが、1兆5000億円を掛けて生鮮スーパーの『ホール・フーズ』を買収すると発表したのだ。
それは、ついにAmazonが生鮮食品市場へと本格参入を果たした瞬間だった。

生鮮食品の市場規模はおよそ60兆円。その規模はもちろん、日常的な買い物が必要な為、事業者としては安定した売り上げが見込める。いわばリアル店舗の『最後の牙城』が生鮮食品分野だった。
今回の買収劇は、その最後の牙城をAmazonが切り崩しに来た、という事を意味するのだ。

現在、Amazonが力を入れているのがオムニチャネル化。つまり、ネットと実店舗の垣根を無くす事だ。

食品とECとの親和性が低いと言われる所以は、消費者が商品の鮮度や質を判断しずらいという点にある。
しかし、一方に於いて、毎日の食料品の買い出しは面倒で、出来れば楽をしたいというニーズも存在する。
その為、企業側に求められる事は、品質を担保した上で、出来るだけ素早く消費者に届ける事。つまりは、実店舗での購入との差異を縮める事にあるのだ。

その為に必要なのが、実店舗の存在だ。

ここでは消費者は、いつでも手に取って実際の商品を確認出来る。その上、店舗は商品倉庫の役割も果たすのだ。
そして、店舗に求められるのは如何に効率的に買い物を済ませられるか、という点にある。消費者は、欲しい商品を探して店内を歩き回るのでは無く、ネットのように、素早く商品に到達できることを望んでいると言える。

その為に、Amazonが取り入れているのが以下の2点の方法だ。

・カーブサイド・ピックアップの導入

カーブサイド・ピックアップとは、今、全米の小売店が続々と採用しているシステムです。
顧客は、まずECサイトにて商品を注文する。すると、店舗スタッフが店内から注文の商品をピックアップし、それらを揃え次第、専用アプリで利用者に伝える。
連絡を受けた顧客は、そこから店舗に行き、店舗駐車場の所定の位置にクルマを停める。すると店員がやってきて、注文の商品を車のトランクや助手席に積んでくれるのだ。
これにより、利用者はクルマを降りることなく買い物を終わらせる事が出来る。

日本と違い米国では、1つの商品が大きく、そして重い。買い物は意外と重労働と言えるのだ。

・2時間以内の配送実験

Amazonは全米24の都市でネットからの商品注文後、2時間以内に配達するというサービスをプライム会員用に始めた。まだ、試験的な導入の為、全ての店舗で行うには時間を要するが、追加で8ドル払うと1時間以内の配達も可能という事で大きな話題を集めました。

Amazonは、生鮮食品分野ではウォルマートには敵いませんが、2017年のオンラインの食品販売では、Amazonが18%と、全米最大のシェアを占めているのです。

・ウォルマートの躍進

世界一の小売業者であるウォルマートであるが、Amazonの戦略に対し黙っている訳では無い。
彼らは自分の市場を守るだけでなく、潤沢な資金を背景に様々なEコマース企業を次々と買収し、逆にAmazonの牙城に攻め入ろうしているのだ。実際、かれらはEコマースの分野だけなら40%を超える成長率を実現し、これはAmazonを大きく凌いでいる。

最近、ウォルマートが日本の子会社である西友を売却する方針を示したが、彼らの戦略は明確だ。つまり、実店舗への投資を抑えEコマースの拡大を加速させる、というものだ。

彼らの持つ最大の武器は、全米の2/3の人口が半径5マイル(8km)に収まるという強烈な店舗網だ。これだけは、Amazonには決して真似出来ない。

本来、両者は市場には明確な住み分けが存在した。 
つまり、所得層の上半分はAmazon、低所得者から中間層の下半分がウォルマートと言った具合だ。しかし今回、両者がM&Aを繰り返した事で、その壁が取り払われてしまったのだ。

ウォルマートのオムニチャネルへの取り組みは以前書いたので、今回は割愛しますが今後、両社が小売りの覇権を掛けて激しい攻防を繰り返す事が予想される。

・オムニチャネルの課題。

オムニチャネルの課題が、『流通』にある事は明らかであるが、それ以前に考える必要があるのは『在庫管理』だ。

生鮮食品では今でも閉店間際になると売り切れてしまう商品も多く、これにEコマースからの注文も増えるとなると、厳格な在庫管理が必要になってくる。注文する度に商品が品切れになっていてはシステムは決して浸透しないのだ。

ただ、一方に於いて過剰在庫を抱えてしまうと、食品ロスが発生して、利益率も下がってしまう。この適正化こそがシステムのキモであり、人工知能などのテクノロジーとの親和性が高い分野でもある。

また、興味深いのが物流の部分に両社とも大きな投資を行い、内製化しようとしている点だ。
一見、アウトソーシングした方が安くつくように思うが、実は物流は情報の集積で効率化が可能だ。外部に任せると、この情報が社内に蓄積されない為、結果的に内製化した方が効率的だと言えるのだ。

Amazon vs ウォルマート、第三者的な視点で見ると非常に興味深い戦いだが、この潮流が近い将来日本にも到達する事は明らかだ。オンラインとオフラインの垣根は崩れ去り、嫌応無く同じ土俵に立たされることになる。

ただ、現実問題として実店舗を持つ側にアドバンテージは存在します。地理的に顧客との接点を持つという事は、Eコマース業者にとって容易い事ではありません。
その武器をいかに活用するか、その事こそが実店舗が生き残る為に必要な要素と言えるのだ。