1日で2兆8000億円を売り上げた男、ダニエル・チャン(張勇)氏とは?

 

ダニエル・チャン。
彼の名前をネットで検索すると、香港の俳優であり歌手でもある美男子の顔が出て来る筈です。しかし、残念ながらそれは別人。有名歌手と同性同名を持つ、物静かな彼こそが、ジャック・マーの後を継ぎアリババ集団を率いるCEOのダニエル・チャン氏である。

会計士であり財務に強みを持つ彼の手腕は有名だが、中でも彼の一番の功績は『独身の日』に仕掛けたセール・イベントの成功だと言えます。
『11月11日』この①が4つ並ぶ日を、中国では独身男性が4人並ぶ絵になぞらえ『独身の日』と言われる。中国では以前から、この日にパーティーをしたり、買い物をする風習があった。

2009年、アリババが展開する『T-MALL』のCEOであった同氏は、この日をネット・ショッピングを楽しむ日、というセールス・イベントを企画する。
これが年々、社会に浸透し2017年の同日には何と1日で2兆8000億円という売り上げを上げるまでに成長したのです。
アリババでは、毎年この日に備え、大量に押し寄せるアクセスにサーバーがダウンしないように、数か月前から泊まり込みでの作業が恒例になっています。

・主要ECサイトの比較

まず、日本ではあまり馴染みの無い『アリババ』ですが、企業規模を確認頂く意味で、2017年の流通総額の比較をしてみたいと思います。

  • Amazon : 20.6兆円(グローバル・ベース)
  • 楽天 : 3.4兆円
  • ヤフー : 1.5兆円(ヤフオク含む)
  • アリババ : 80.6兆円(タオバオ+T-MALL)

見て頂ければ分かると思いますが、アリババは『独身の日』1日だけでAmazonの年間売り上げの10%近く、楽天の年間売り上げの殆どを稼ぎ出す計算になります。

・ダニエル・チャン(張勇)の経歴

若い頃は劣等生と言われ大学は浪人。そして、教師の職を辞めてまで起業した『中国版イエローページ』は敢え無く失敗、と苦労を重ね叩き上げで成長してきたジャック・マー氏とは対照的に、ダニエル・チャン氏はまさにエリート街道を邁進してきた、云わば『秀才』と言えます。

上海財政経済大学を卒業後、世界的会計事務所『アーサー・アンダーセン』や『プライスウォーターハウス クーパース』に勤めた後、中国の大手オンラインゲーム企業で最高財務責任者'(CFO)に就任。その後、更なる飛躍を目指しアリババの子会社タオバオのCFO、同子会社のCEOなど着実に出世を続け、本社の取締役、そして最終的にはジャック・マー氏の後継者としてCEOに就任します。

・驚く程スムーズな経営権の継承

一代で巨岩の成功を成し遂げた起業家にとって、事業の継承ほど難しい事はありません。このような企業はトップが強烈な個性とカリスマ性で会社を牽引しているからです。
ソフトバンクGの孫正義CEOを見ても分かるように、彼らの強烈なバイタリティーは『引退』という選択肢を許しません。

今回のジャック・マー氏の引退発表は、その事自体はもちろん、彼が数年前から継承の準備と権限委譲を行っていた、という事実に驚かされました。
確かに54歳と言う年齢はIT企業の社長としては若くありませんが、その事で彼の能力を疑う人間は皆無だと言えます。その上で引退を決意し、次の夢の実現の為に新たな一歩を踏み出す彼の潔さには常人離れした何かを感じずにはいられません。

後継のダニエル・チャン氏はマー氏に比べると地味な印象を拭えません。しかし、私は彼らの関係性にアップルのスティール・ジョブ氏とティム・クック氏を重ねてしまいます。
ある意味、常軌を逸した天才と、その彼が敷いたレールを堅実に進める後継者と言う構図ですが、一見地味な印象のクック氏は堅実に企業を成長させ、時価総額で世界初の1兆ドルという偉業を成し遂げました。

ダニエル・チャン氏は自らの類い稀な能力はもちろん、マー氏は存命の為いつでも相談する事も可能です。このメンターの存在はダニエル氏にとって心強い存在となる事は確かです。
まだ、起業後15年という僅かな日数でアジア最大の企業となったアリババが、この後どのような発展を遂げるのか、目が離せない存在であることは確かだと言えます。