最新の物流システムを武器に躍進するJD.COM(京東商城)とは?

 

アルファベット傘下のグーグルが、中国大手ECサイトを運営するJD.COMに5.5億ドルという巨額の投資を決めました。
日本では、あまり馴染みが無い企業で、ご存知でない方も多いと思いますが同社は現在、中国においてアリババ集団に次いで2位の電子商取引会社で、直販額では中国でトップの位置を占めています。

アリババがプラット・フォームを提供し自社では販売を行わない『楽天型』企業であるのに対し、JD.COMは売り上げの半分を自社で販売する『Amazon型』企業であると言えます。

2004年に創業された同社は、現在年間15兆円を売り上げる巨大企業に成長しました。日本最大のEコマース企業楽天が3.4兆円ですので、そのサイズ感がお分かり頂けると思います。

彼らの最大の武器は全国に張り巡らされた『物流網』に他なりません。
主要物流拠点は全国7カ所、倉庫の数は405棟にも及び、延べ床面積は900万平米にも及びます。これは東京ドーム190個分の相当する面積で、さらに配送拠点6906か所を展開。コールドチェーンや越境EC物流の体制まで整えているのです。

これにより、中国国内で有れば注文の約85%を翌日までに行う事が出来ます。
これは国土面積が日本の25倍もある中国では驚異的なデータであり、首位を走るアリババでさえ敵いません。それを支えているのが自前の物流・配送ネットワークであり、出資や提携で外部の配送会社を活用するアリババ集団との大きな違いであると言えます。

彼らはEコマース企業でありながら6万7000人もの物流部隊を抱えている。
これは、佐川急便の4万7000人を凌ぐ数字で、小売業としては異例の規模だと言える。
それだけでなく、無人倉庫やドローンの活用など最新のテクノロジーを導入して、物流の効率化を計っているのです。

彼らがここまで物流に拘るのは、顧客満足を高めるには物流のスピードと品質がカギとなる事を理解しているからです。
この考えは、現在世界中のEコマース企業にとって共通認識となっており、アリババのジャック・マー氏が今年1兆7000億円という巨額の投資を発表したのも、その危機感の表れと言える。

アリババが運営するECサイトの『T-MALL』はシェア57.7%、一方、JD.COMは僅か25.4%のシェアしか保有しておらず、アリババは一見、盤石な体制を築いたかのように見えます。
しかし、ジャック・マー氏が危機感を感じるのは、そのビジネスモデルの違いにあります。

楽天とAmazonはほぼ同時期に創業されましたが、現在は世界を席巻するAmazonと、未だ日本という小さな市場から脱皮出来ない楽天との差は、ある意味象徴的とさえ言えます。
両社のビジネス・モデルは一見似ているように見えるが実は全然違います。

楽天は、アリババ同様にネットモールであり、そこに”場所”を提供する事で『地代』を回収する。その為、別々の店で複数の商品を買った場合は、当然だが別々に配達され、物流の品質を楽天がコントロールする事は困難であると言える。その反面、在庫を抱える必要が無く、物流コスト網も必要無い為、時間もお金も掛けずに気軽に出品店を増やす事が可能なのです。

一方、AmazonやJD.COMは、あくまで自社で仕入れた商品を売るので、とにかくお金も時間も掛かる。物流倉庫は勿論、在庫管理に商品の効率的な発送。どれもノウハウの蓄積が必要で、一朝一夕では出来ず、莫大な設備投資が必要です。
その為、当初は楽天が先行し世界を席巻するかと思われました。

しかし、ある時期に雲行きが逆転する事になります。ポイントは『スケールメリット』です。
AmazonやJD.COMの強みは、ある程度物流システムのインフラが出来上がってしまえば、全て自社で賄える為、販売量が増える事でスケールメリットが享受でき、仕入れ価格を各段に安くすることが出来ます。

一方、楽天・アリババは商品の仕入れを各店舗が行う為、モール自体がどれだけ大きくなっても仕入れ価格は劇的には低下しないのです。当然ですが、この差は販売価格に大きく影響を及ぼします。
また、偽ブランドが横行する中国では、JD.COMが直接仕入れる事の安心感も無視できないのです。

ジャック・マー氏程の男がこの事に気が付かない筈はありません。しかし、仕入れに関しアリババが出来る事は限られてますので、まずは物流から手を付ける事にしたのではないでしょうか。
例え別々の店で購入したとしても、荷物が別れて届く事は、良い顧客体験とは言えません。

早くて安心な配達は、かつては『サービス』と受け取られてきました。しかし、米中を中心に、今は必然となりつつあります。

楽天のCEOである三木谷氏も物流への投資を示唆していますが、これはAmazonの驚異的な追い上げに危機感を覚えたからだと言われています。実際3.4兆円と言われる売上額も『楽天トラベル』などの他のサ-ビスを含めた数字であり、毎年発表していたモール単体の売上高は2016年以降、発表を取り止めました。

個人的にですが、楽天の先行きに不安を覚えるのは、最近発表された携帯事業への本格参入です。確かに自社の運営するスマホに楽天市場のアプリを搭載できることは強みとなりますが、方向性が間違ってるような気がしています。
現在、楽天の配送拠点は国内に5カ所、対するAmazonは公表しているだけで15カ所存在します。延べ床面積も最新の小田原物流センターだけで20万㎡と、楽天全ての物流センターを合わせた総数15万㎡を1カ所のみで凌ぐスケールを有しているのです。

結局のところ消費者は『便利』さに貪欲です。その意味で量より質への転換が求められれていると言えます。

今後、Eコマース市場は、オムニチャネルを含めたサプライチェーン、特に『物流』が大きな競争要因となってきます。その為には、自動運転や人工知能といったテクノロジーを駆使した『自動化』が不可欠です。
その為に、各社巨額の先行投資が必要となってきますが、それに耐えられない企業が再編されるフェーズに突入する可能性は十分にあります。

その意味で、現在のJD.COMの方向性は非常に興味深い物と言えます。カギとなるのは、このシステムに如何に人工知能を効果的に導入し、効率化を図る事が出来るか。
暫く、この企業から目が離せそうにありません。