機敏なる巨人ウォルマートによるAmazonの倒し方。

リアル店舗では世界一の小売業の座に君臨するウォルマート。
シアーズ、トイザらスに代表される小売業は、Amazonの存在に怯え、今年だけでも3800以上の店舗が閉店に追い込まれています。
特に一時期、急拡大したショッピングモールは大きな影響を受け、2010~2013年に掛けて来場数は半減、倒産が相次ぎ、全米中に廃墟となった建物の山を築く事になったのです。

そんな中、果敢にもAmazonに立ち向かう企業も現れました。その代表格が、ご存知『ウォルマート』なのです。彼らは利益の半分をつぎ込んで、EコマースへのM&Aを繰り返した事は以前の記事でお知らせしました。
彼らの戦略は明確です。『リアル店舗への投資を抑えて、Eコマースに集中する。』
すなわち、Amazonを対抗軸とした『Amazonシフト』に他なりません。

ウォルマートの強みは、オムニチャネルと店舗での商品受け取り、にある事は明確です。
全米に4700店舗を構え、全人口の9割が半径10マイル(16㎞)に捉える店舗網。この先Amazonがどれだけ頑張っても、これだけは決して真似出来ない。

それでもAmazonが、ここまで成長してこれたのはウォルマートとの住み分けがきちんと機能していたからです。Eコマースとリアル店舗という枠組みは勿論、所得層の上半分をAmazon、下半分をウォルマートがターゲットとしていた事で、お互い干渉せずビジネスが進行できたが大きな要因でした。
ただ、Amazonは大きくなり過ぎた事で、既存の小売業の淘汰が起こり垣根を超えた戦いが始まったのです。

Eコマース市場調査会社のjumpshotの調査によると、これまで独り勝ちと思われていたAmazonの成長が頭打ちになり、ウォルマートに代表されるライバル企業がシェアの奪還を開始した事が明確になりました。
Amazonの商品部別成長率は20%増ですが、各分野の平均成長率は32%。つまり、Amazonの成長率が、業界の成長率に追い付いていない事が分かります。

一方、ライバルであるウォルマートの成長は著しく、家電、日曜大工、食料品、フィットネス、婦人服、日用雑貨、医薬品、美容品の分野では前年対比、平均して70%もの伸びを見せています。
つまり、ウォルマートはAmazonと比べ3.5倍の成長率を維持している事が分かるのです。

Eコマースは、もはや顧客とのリアルな接点をいかに持つかと言うフェーズに来ています。

それは、Amazonが未だ一桁台のシェアしかない『食料品』、40%台の『家具』『婦人服』という市場の状況が証明しています。
これらの商品の共通点は、自分の目で見て、触って質感を確認したい、という利用者のニーズを表しています。云わば、Eコマースとは親和性の低い分野と言えるのです。

ただ、特に『食料品』は巨大な市場規模を有しており、ここで後背を期す事は致命的な問題となります。購入頻度の高い食料品は、売上は勿論、頻繁にサイトに訪問する事への『ついで買い』も多く、何より人間は使用頻度の高いサイトにロイヤリティを持つと言えます。

この食料品の市場に於いて、ウォルマートは強烈な強みを発揮します。既にオムニチャネル化はかなりの部分で進行しており、着実に成果を出しつつあります。

これだけの成熟した大企業が、短期間で成し遂げた事に驚きを隠せません。これは、単にリアルをネットに移行する、という単純な話では無く、ターゲットとする顧客を『マスから個』へと変更する大改革だと言えます。

一時は時代遅れとも揶揄された巨大な店舗網と物流システムは今、巨大な武器となってAmazonを怯えさせる存在になりつつあります。
両社共にアプローチは違いますが、利用者との接点を模索しています。これは、リアル店舗によって、はたまた新しいテクノロジーにより達成されるのか、先の事は分かりません。
ただ、目指す先は同じです。いかに個別の利用者に対してきめ細かいサービスを提供できるか、その事が問われているのだと思います。