米中貿易戦争の原因と展望。

米国と中国の経済摩擦が深刻な状況へと進展しつつあります。
今年7月、トランプ大統領が中国の知的所有権侵害への報復策として、中国からの輸入品500億ドル分に対し、25%の関税を掛けると発表した。それからは、両者の報復合戦となり、瞬く間に関係が悪化したのでした。

両国は共に中華思想を持ち、精神構造など、ある意味非常に似ている。しかし、経済的見地から見ると、その構造は対局と言って良い。
即ち、『消費過多』なアメリカと『消費をしない』中国という構造である。

数値的に見て行こう。
アメリカは、所得水準が高く、貯蓄率が少ない。それは、世界に占める個人消費のシェアが29.4%なのに対し、アメリカの名目GDPに占めるシェアが24.3%と大幅に下回っている事でも分かる。基本的にアメリカ人は、カードを使い借金をしてでも買い物をするという文化がある。自分たちが生み出す以上のモノを消費すると、当然だが貿易赤字になる事は避けられない。

また、グローバリゼーションが進む中、賃金の高いアメリカから、人件費の安い中国へ工場を移すと言う流れは急激に進み、現在、アメリカの製造業のシェアが18.1%まで低下してしまった。これは、70年代の29.7%から考えると、かなり大きな動きだった事が分かる。米国の工場の受け皿となった中国は、生産力を高め『世界の工場』としての地位を確立する。これにより、実に世界の製造業の1/4が中国に集まるという事態になったのである。

こうして、世界の工場となった中国には、米国や日本から、コア部品や素材を輸入し、中国の工場で完成品にして米国に輸出するというサプライチェーンが出来上がった。

その国が『消費地』なのか『工場』なのかを見る指標として、『個人消費シェア-製造業シェア』が分かりやすい。この指標で行くとアメリカは+11.3ポイントと世界でも突出して高い『消費地』である事が分かる。一方中国は、▲15.4ポイントと突出して低い『工場』なのである。ちなみに日本は、▲1.8ポイントで『工場』、同様にドイツも▲1.7ポイントとなっている。

では、関税について見て行くと、米国は最恵国税率は、単純平均で3.5%で、同じく中国は9.9%。6.4ポイントという明確な差が存在する。当然、アメリカとしては不満なのである。
中国は、今回の貿易摩擦を背景に、関税の引き下げを続けており、結果的に7.5%位まで低下すると予測される。
(参考数値:日本 4.0%、EU 5.2%、韓国 13.9%)

では結局、この貿易戦争の顛末はどうなるのか?
それは、アメリカがどうしたいか、によって違ってくる。
単に、貿易不均衡を是正したいだけなら、話はそれ程複雑ではなく妥協点を見いだせるでしょう。

ただ、それだけでは満足できないなら話は変わります。
中国が、アメリカのGDPを追い抜く、という予測は、時期こそバラつきがあるものの、ほぼ共通した認識であると言えます。
この事から、安全保障上の脅威を取り除きたいと考えるなら、話は経済に収まりません。無理難題を押し付け相手を刺激し、やがては冷戦に突入するでしょう。
今のトランプ大統領の政策は、明らかに後者であり中国政策については、ナショナリズムを喚起し易い為、支持率の向上に役立ちます。

ただ、今の経済の流れは変える事は出来ません。
もちろん、共産党の崩壊のような内政の混乱が生じれば別ですが、ほぼ、確定した将来だと言えます。そして、その中国さえも、いずれインドに抜かれる、と言うのが、大方の意見です。その時のアメリカの国力にも寄りますが、『三つ巴の戦い』が生じる事も否定出来ないのです。
個人的には、物事が悪い方向に流れるのではないかと危惧して止みません。
この貿易戦争の顛末がどうなるか。注意深く見守る必要があります。