買い物代行のインスタカートの企業価値が76億ドルに…。

インスタカート社は米国で食料品の即時配達事業をを行う新興企業です。『買い物代行業』と言うと、日本では『便利屋』みたいな印象を受けますが、彼らは、そこに最新のテクノロジーを持ち込み、大きく利便性を向上させました。

今回、新たに6億ドルの資金を調達した事で、その企業価値は76億ドルにも達します。既に50万人の顧客を持ち、売上高は年間20億ドル。ただの買い物代行業が、なぜ短期間でここまで躍進出来たのか、不思議に思う方も多いと思います。今回は、その実情を見て行きたいと思います。

買い物には2種類が存在していて、ワクワク、楽しい買い物と、単に『補充』としての買い物。日々の食料品の買い出しは『補充』に分類される。ただ、日本では、買い物を人に頼むなんて『無精』というイメージがあるが、アメリカではちょっと違います。

広大な国土を持つアメリカでは、買い物だけで数10キロの距離をクルマで出掛ける、という事は日常茶飯事で、多くの時間と手間を要求される。
その上、アメリカの食料品は大きくて重い。飲料は1ガロン(3.8リットル)で、パッケージも大きく、意外と重労働なのだ。

インスタカートは、そんな苦痛な買い物を、代わりに済ませてくれる。
利用者は、専用アプリから店と商品を選び、ピックアップの時間を設定する。その情報を受け取ったショッパーは、その店に出向き、代わりに買い物をしてくれる。希望の商品が売り切れていたりすると、利用者に連絡を取り、『違うブランドでも良いですか?』など気軽に相談してくれる。このフランクさがAmazonフレッシュなどには無い要素と言えます。

決済は、グーグルpayやアップルpayなどの電子決済で行う仕組みとなります。
利用方法は、都度払い(5.99ドル)と年間費(149ドル)を払う2パターンあり、平均的な顧客は、月2回利用し、1回の買い物で、95ドル分の買い物をする。

彼らの成長を後押ししたのは、小売業が持つ危機感です。Eコマースの王者アマゾンが『ホールフーズ』を買収し、生鮮食品の即日配達事業を始めた事で、業界は騒然としました。対抗するには、自らが宅配事業に乗り出すしかありません。しかし、自前の配送員を持つには採算性の確保が難しく、結果的にインスタカートと提携する道を選んだのです。その為、彼らは非常に協力的で、多くの生鮮スーパーが、インスタカート専用のレジを設けるなど、効率的なシステムの構築に寄与しています。この事が他社との差別化となり、アイスなどの冷たい物は冷たい内に、温かい物は温かいままで届ける事を可能にしたのです。

既にインスタカートは全米300のチェーンと提携を行っており、米国民の70%が利用可能な状態にあります。
非常に単純なビジネスモデルに見えますが、実は小さなノウハウが沢山詰まっているのです。例えば、ショッパーが効率よく買い物が出来るように、店のどこに、何があるかという情報をスマホで確認出来るようにしたり、温度管理が必要な物は最後に買ったり、専用の保管場所を用意するなど気配りが行き届いています。

Uberを始め、様々な競合が参入する同市場ですが、インスタカートの独り勝ちと言っても良い状況です。これは、彼らの顧客本位の営業姿勢がスーパー、利用者双方に認められたからに他なりません。テクノロジーは、物事を便利にはしてくれますが、最終的に必要なのは、そう言った細かい気配りなのかもしれません。