薬の自販機まで!? 中国で急拡大する遠隔医療ビジネス。

先進国の多くで高齢化が進む中、医療問題は全世界共通の課題だと言えます。
日本では、急病で総合病院に行くと、検査のたらい回し、その間の膨大な待ち時間と、一日を病院で費やす事になる。当然だが、体調が悪い状態で経験する行為としては、まさに最悪のものと言えます。

中国では、もう少し事態は深刻だ。
根底にあるのは、中国人の診療所に対する不信感です。小規模な診療所には誰も行きたがらないのだ。その為、どうしても大病院に人が集中してしまい大混雑、3時間の待ち時間に3分の診療というのが常態化していました。

これは、程度の差こそあれ日本でも共通した現象だと言えます。
こう言った課題を、人工知能の力を活用して解決しようとする動きが今、世界中で起こっているのです。
そんな中、中国で注目を浴びるベンチャー企業が『平安好医生』です。

彼らが提供するサービスは、インターネットを使った遠隔地医療サービスです。利用者は、専用アプリから『平安好医生』専属の1000人の医師に相談出来る。実際2017年には、1日平均37万回もの問い合わせに対応しています。この膨大な量の相談をこなすのに重要な役割を担っているのが人工知能です。
問い合わせの内容を理解して、適切な答えを医師に提案する事により、従来の5倍の作業量が可能になったのです。確かに重い病気などをアプリで済まそう、という人は少ないが、カゼなどで処方箋が欲しい人や軽度の病で病院に行く手間を省きたいというニーズは確実に存在するのである。

また、この事業の将来性を飛躍的に高めるのが個人が自宅で実施出来る、検査機器の充実です。

例えば、テンセント傘下の企業が最近発売した糖尿病検査機器は、SIMカードが内蔵されている。これにより、リアルタイムで計測数値を医師が把握出来る為、わざわざ病院に行く必要が無くなったのである。中国での糖尿患者の総数は実に、1億1400万人と全人口の11.6%にも及びます。従来の検査機器に通信機能を付けただけで、患者の負担を大きく減らす事に成功したのです。

また、この分野は世界中のベンチャー企業が挙って進出する分野であり、そのテクノロジーの進化は目覚ましい物と言えます。
イスラエルのベンチャー企業『Tytocare』が開発した在宅検査機器では、1つのポータルデバイスで、心臓・肺・耳・肌・喉・体温などの包括的な簡易検査を医師の下に高精度で届ける事が出来る。

このような検査機器の充実は、将来の医療の形を確実に買えようとしているのです。

また、この個人の健康に関する『ビックデータ』は、保険・健康食品・フィットネス関連事業などを行う事業者にとっては、かなり有益な情報だと言える。当然、かなり高度なプライバシーを要求される分野ですので、運用には細心の注意が必要だが、情報を匿名化する事で、人工知能の学習データとして活用する事などは可能だと言える。

・テクノロジーで変わる病院

テクノロジーの進化は、病院自身を変えつつあります。

米中双方に共通する概念は、『医療はビジネスである。』という点です。
その為、中国では、どんな緊急性の高い状況でも『医療費のデポジット』というのが常識であると言えます。つまり、一定の手付け金を支払わなければ医療行為がスタートしない訳です。これは、検査や薬を受け取る際にも同様であり問題は、その度に支払いの長い列に並ばないといけないのです。

これを解決したのが、『アリペイ』や『Wechatペイ』と言ったスマホ決済でした。
これにより、自動で決済が出来るようになっただけで無く、分割での支払いが可能になったのです。この事は、利用者の病院の滞在時間を何と60%も削減する事になったのです。

また、病気の診断への人工知能の活用も進んでいます。
深圳市中病院では、テンセントが開発した人工知能による画像解析診断ツールを使用しています。この技術により、レントゲン写真や胃カメラの映像を解析すると、僅か4秒で癌の診断が可能となる。正答率は90%以上と見逃しの可能性は殆ど無いレベルだと言えます。既にこの分野では、人工知能の能力が人間を凌駕している。

処方箋の分野でも、IT技術が活用されている。
医師が処方した薬はクラウド上でAIがチェックを行い、薬の組み合わせや分量に異常があった場合は薬剤師に警告が発せられます。それにより、薬剤師は医師に確認を行う事で、それが意図的な物なのか、誤りかを判断する仕組みになっている。

現在の医療システムは様々な問題を抱えています。

利用者の負担になっている『待ち時間』の原因の大半は、医師の不足と検査結果の待ち時間と言われており、その解決に人工知能は大きく寄与する事が分かってきました。
そして、なにより大きいのが、人工知能の導入は医療に関わるコストを大きく削減してくれる点にあります。

高齢化が進む日本において、医療への人工知能導入は、その課題の解決策として大きな期待が寄せられているのです。

今の医療の現状は、体調が悪い人間が長時間病院の待合室で放置され、検査場をたらい回しにされます。その為、もっと感謝されるべき医師や看護師が、患者の怒りの捌け口となってしまっているのです。このような誰も幸せにならないシステムが、何十年も放置され、この国の医療システムは破綻寸前にまで追い込まれる事になります。

既に日本の医療費は、国家予算の半分を占める42兆円にまで膨らみ、さらなる増加が予想されています。その為、医療の効率化は急務なのです。この分野を国が重点分野と捉え、積極的に関与して行く事で、この危機は、将来の日本を支える1つの産業の育成にも繋がります。
今、世界が同じような問題に苦しんでいる中、高齢化の進展が何処よりも早いと言われる我が国がモデル・ケースを形成し、そのシステムを海外に輸出する、そう言った戦略こそが何よりも求められているのではないかと思うのです。