スタバが中国で苦戦!? 『ラッキン・コーヒー』の新戦略。


中国のカフェ業界では、競争が激化している。

もともとコーヒー文化が無かった中国であるが、12年前スターバックスが1号店を出店してからは、徐々にその人気が増しつつある。
現在は年間15%を超える成長市場へと発展し、2020年には市場規模が17兆円を超えると予想されている。その人気を牽引してきたのが、スターバックス・コーヒーだ。

現在、彼らは中国全土に3000店以上の店舗網を持ち、2021年には5000店舗に拡大する計画を発表している。

そんな順風満帆とも言える市場環境に今年、陰りが見えてきた。

同社の2018年4-6月期の売上が、前年対比で-2%となり、その成長に急ブレーキが掛ったのだ。同社は近い将来、中国が米国を抜いて最大の市場になると予想していただけに、この事実は株式市場でも大きなインパクトをもたらした。

市場が急成長している中、売上がマイナスを記録する事(前年同期は7%成長)は、そのブランド価値に大きな異変が起こってる事を意味している。実は、その原因の一つが『ラッキン・コーヒー』の存在にあったのだ

『ラッキン・コーヒー』は中国発祥のコーヒー・チェーンです。

創業は2018年と、歴史は浅いが既に2000店舗と急激に店舗数を増やし、たった1年間で企業価値1000億円以上を誇るユニコーン企業へと急成長したのだ。
では、なぜ彼らは、これだけ短期間で急成長出来たのか、その成長の秘訣を見て行きたいと思います。

中国では、コーヒー未だ高級品だ。

スターバックスでは、コーヒー1杯が、およそ600円。ペットボトルの飲料が80円だと言う事を考えると、スターバックスでコーヒーを飲むという行為は、一種の『ステータス』として中国社会に浸透して行ったのでした。
そんな『高級店』にも関わらず、スターバックスでは常に行列に並ばされることに、利用者の不満を感じていたのだ。

実は、コーヒーを作るには結構時間が掛かる。
それは、一杯毎に豆を挽いて抽出、ラテの場合はミルクを泡立てる必要がある。その為、どうしても1杯作るのに5分は必要で数人の団体が来店すると、すぐに行列が出来てしまうのだ。

また、スターバックスでコーヒーを飲む事がステータスとなった事で、利用者の店内のでの滞留時間が大幅に伸びてしまった。
多くの利用者は、友達同士で話し込んだり、パソコンを持ち込み仕事を始めた事により、客数の回転率が極めて悪くなったのだ。このことが売り上げの足枷となり、価格を下げられない状況へと陥ってしまった。

この消費者の不満に目を付けて登場したのが、『ラッキン・コーヒー』だったのです。彼らの戦略は明快だ。

即ち彼らの戦略は、スターバックスより良い材料を使い安価に、そして、並ばず(待たせず)提供することなのだ。

・コーヒーをスマホから注文

の行列を無くすべく同社が行った事は、注文カウンター自体を無くしてしまう事でした。そして、注文は専用のスマホアプリからのみにしたのだ。

まず、利用者はアプリを開くと、現在地から一番近い店舗が表示される。
アプリから事前注文しておけば、店内で待たされる事も無く出来上がりを見計らって店舗に行けば、直ぐに商品が受け取れるのだ。また、時間の無い利用者には、自宅や職場へ配達してくれることも可能だ。

また、スマホから注文する事で、商品をより個人の趣向にカスタマイズ出来る事も大きい。コーヒー濃さ、砂糖の量など細かな説明を、毎回口頭で説明するのは、非常に煩わしい行為だと言えるのだ。

また、クーポンや割引制度も充実しており販売促進に一役買っている。

店舗は、繁華街やオフィス街を中心に展開しており、仕事中に利用する顧客も多い。客は、事前に注文しておいて出来上がったら取りに行き、直ぐにオフィスに戻る。テイクアウト率が上がる事で、座席の回転率も上げるという好循環を生み出しているのだ。

また、デリバリーを導入することで、店舗の立地が必ずしも一等地である必要が無くなった事も大きい。経費に占める家賃費用は、決して小さく無いのだ。

・スタバより高品質な豆を使用し、低価格で販売。

いくらシステムが優れていても結局は味である。

同社は、スターバックス社が使用するより20~30%高価格の豆を使用している。そして、世界的バリスタ大会で3位に入賞した人物を招き、研究開発を行ってきたのだ。そうして、開発した商品をスタバの7割の価格で販売した事が同社の急激な成長を支えてきた。

その為のコストを捻出する為には、いかに経費を抑えるか、という事が重要になってくる。そこで彼らが行った事は、店舗の性格を3種類に分類する事だった。

・広い店内と座席数を備えた大型店舗
・テイクアウトを主体とした小型店舗
・配達を専門に行うデリバリー店舗

このように店舗の性格を明確に規定する事により、それにあった店づくりを行ったのだ。こうする事で、坪単価を上げて利益率を確保する事に成功したのだった。

・スタバの失敗から学べる事。

中国市場でのスタバの失敗からは、多くの事を学ぶ事が出来ます。

彼らが間違ったのは、本国でのシステムをそのまま中国に持ち込んでしまった事に有る。中国では、アリババのジャック・マー氏が提唱した『ニューリテール戦略』によって、小売業の在り方そのものが大きな変革を受けた。特に、スマホ決済の浸透は、財布さえ持ち歩かない人達を生み出したのだ。
現地の企業が、こぞって、それに対応したのに反しスタバは、それらへの対応が遅れてしまったのだ。

また、デリバリーサービスへの対応の遅れも大きい。
中国の飲食店では『外売』と呼ばれるデリバリーサービスが当たり前になっている。しかし、スターバックスの経営理念である『サード・プレース』、つまり、家庭でも職場でも無い、第3の空間を提供するという考えが、デリバリーとは相容れなかったのだ。
ただ、中国人は結局は便利さを優先したのだ。その後、同社はアリババと提携する事で、デリバリー事業を始めたが遅きに逸した感は否めない。

日本では『行列』は繁盛店の象徴という認識が未だ大きいですが、その考えは早急に改める必要がありそうです。行列は決して『良いユーザー体験』とは言えないし、それに甘んじる事は効率化の妨げになってしまう。

確かに『行列』は、1度目の来店を促す効果は大きいが、消費者は、待つ間に期待感が必要以上に増幅してしまう。その為、店側がその期待を遥かに上回れない限り、2度目の来店を促すのは非常に難しいのだ。

現在、世界的な流れとしてスーパーや飲食店でレジ自体を無くす取組みが進んでいる。しかし、この事を省力化と捉える事は危険だ。それは、利用者がいかに効率的に買い物が出来るか、という視点を突き詰めた結果に過ぎないからだ。それが実現出来ないなら、結果的にネットに駆逐される、その危機感の表れと言えるのである。