『アリペイ』を使うと、なぜお金が増えるのか?

中国のアリババ傘下であるアント・フィナンシャルが運営する『アリペイ』。
QRコードを使った決済のばかりがクローズアップされますが、このアプリには様々な機能が内包されており、年金の加入から病院の予約まで多くの事が1つのアプリによって出来るのです。その中で、アリペイ普及に大きく寄与した『余額宝(ユエバオ)』に焦点を当ててみたいと思います。

アリペイはデビットカード方式の電子決済システムです。その為、その利用を促進する為にはお金をチャージしなければなりません。現在、多くのユーザーが給料が入ると全額をアリペイに送金します。
理由は簡単です。アリペイにお金を移す事で4~6%もの金利が付くからです。この機能が『余額宝』です。

『余額宝』はアリペイのアプリから申し込む事ができ、1元から購入出来る利便性の高い金融商品である。
その本質は、MMFのまとめ買いになります。即ち、リスクの少ない先進国や企業の債権を購入するのである。この時、アリババが纏めてMMFを大量購入する事で金融機関から優遇金利を得ているのです。

この機能の素晴らしいところは、いつでも買えて、いつでも売れるという点にあります。普通、金融商品を買うと、一度解約又は、売却し現金化してからでないと、利用出来ない。しかし、『余額宝』は、その事を気にする必要が無い。その為、銀行預金と全く同じ感覚で使う事が出来るのです。この違いは非常に大きいと言えるのです。
本来であれば、現金を銀行口座から、ネット証券の口座に移し、新たに会員登録をした後にようやく投資が行える、という手間と時間、労力・コストを取り払ってしまったのである。

当然、この機能は利用者に受け入れられ、急速に成長する事になります。具体的には、サービス開始から、たったの4年で世界最大のマネーリザーブ・ファンドに成長したのです。この事が、当局の監視の目に留まり、上限金額の設定など過去3度も規制の追加が成されました。これは、優良債権での運用という事で、リスクは非常に少ないながらも、仮に取り付け騒ぎなどが起こった際に、影響を最小限に抑えると言う配慮によるものでした。

現在では、同様のサービスが『Wechatpay』などでも採用されている。このフィンテック企業の躍進は、過去の金融システムでの証券会社や投資信託会社の領域を脅かし、将来的には銀行の役割すら奪ってしまうかもしれません。

紙のお金が電子化される事は、もはや金融そのものがIT企業の専門分野に移行する事を意味します。現在は国の規制の下で守られている金融機関も世界の潮流には逆らう事は出来ません。ITやブロックチェーン技術の向上は、今まで金融機関が得てきたお金の移動に関する手数料収入を限りなくゼロに近づけるのです。
最近国内メガバンク3行が合わせて3万人以上のリストラ計画を発表しましたが、背景にはこのような危機感が存在するのです。

現在、国策としてアリペイ同様の電子決済が日本でも導入されようとしています。それに関わるプレーヤーとしては、IT企業・銀行・信販会社の3社が挙げられますが、その枠組みから弾き出される業態が現れても不思議な事ではありません。実際、中国ではクレジットカード会社が弾き出され、アプリを銀行口座と直接結びつけるデビットカード方式が採用されています。

この電子決済の潮流が、金融界にどのような影響を及ぼすか、注意深く見守る必要があります。結局のところ、この市場を制した者が、お金の移動に関する『ビックデータ』を手に入れ、巨大な力を持つことはアリババ・テンセントが中国経済に与える影響を見ると明らかだと言えます。つまり、この問題は金融の枠に収まらず、経済全体に影響を及ぼす問題なのです。

資本主義経済では、消費者の姿をより明確にとらえられたものが勝利を勝ち取ります。お金の動きに関する情報とは、その人の趣向や家族構成、謂わば、消費者自体を丸裸にしてしまう情報と言えるのです。