顧客情報を独占!? Amazonとの距離感に苦しむ小売業。

今や世界最大級のEコマース・プラットフォームへと成長したAmazon。

今回、ついにアップル社がAmazonと直販を行う契約を締結し、本格参入する事を決めた。従来、アップル製品は、Amazonで購入出来るものの、マーケットプレイスなどの非正規事業者によって販売されていました。今回、アップル社はAmazonとの契約に際し、この非正規事業者を締め出す事に成功したのでした。

アップル社がAmazonとの間で、この排他的処置を盛り込んだのは、『ナイキ』の失敗が。大きく影を落としている。
かつて、ナイキもAmazonに”屈服”し、参入を試みたにも関わらず満足する結果とは、程遠い状態となった。利用者がナイキの製品を検索した場合、口コミ数の多いサードパーティーの事業者が優先して検索され、ナイキの売上は、さほど伸びなかったのである。

ただ、そうは行ってもAmazonの力は強力で、今や小売業で、その力を無視するのは難しくなっているのは事実である。
今、各企業は、この無視できない巨人との距離感に苦しんでいる。彼らを無視は出来ないが、近づき過ぎると殺されかねない、という悩ましい関係性だと言えるのです。

Amazonで商品を売るデメリットは、顧客情報が販売業者に殆ど入ってこない点が挙げられる。Amazonが顧客情報を渡す事を渋っている訳である。ネットで商品を販売する際は、コンバージョン率などの情報は不可欠で、それが無いと戦略の立てようが無いのである。

そうやって彼らは、膨大な量の販売ビックデータを蓄積し、売れそうな商品を見つけると、プライベート商品にして、自ら開発、販売を行ってしまう。販売店にしてみれば、味方だと思っていたAmazonが、突然、敵になってしまうのである。
これは、繁盛店の傍に自らの直営店を作ってしまう、日本のコンビニ業界と似ているが、販売データを相手に握られる事は、非常に不利に働くのである。

ただ、そうは分かっていても無視出来ないのが、今のAmazonの強さだと言える。
小売業者にとって、もはやAmazonに協力しないという選択肢は無いに等しく、どのような形で協力するかが問題なのである。
ただ、Amazonがブランドに対して顧客情報を出し渋る事への不満は、将来的にAmazon自身の足元を掬う可能性がある。

中国で、ネットショッピング・サイト『T-MALL』を運営するアリババは、この顧客情報をブランドと共有している。そして、各社が中国向けに新商品を開発したり、商品を改良しようとする際には、そこに積極的に情報提供を行い頼れるリソースとなる事で、自社サイトに出店する価値を生み出そうとしている。

この両者の思想の違いは、ビジネスモデルに拠るところが大きい。アリババは、日本の楽天のように完全なるプラットフォーマーで、自社での小売りは一切行っていないのである。

現在、Amazonは中国に進出を果たしているが、欧米の小売業者の商品を中心に扱っている為、アリババと正面から競合する事態には至っていない。
しかし、将来的に第3国で両者が競合した場合、この差がAmazonにとって不利に働く事は容易に判断出来る。欧米ではAmazonはオンリーワンな存在であるが、対抗しうる存在が現れた時は、小売業が離れて行く可能性があるのだ。

人工知能が普及し『情報』の価値が大きくなる現在のビジネス環境では、Amazonの戦略は圧倒的に強みを発揮する。しかし、参加する小売業に新しい『選択肢』が生まれた場合、今のスケールのみのAmazonでは、繋ぎ止めるだけの魅力は存在しないのである。

先の記事でも述べたが、今、インドでは、Amazon・ウォルマート・アリババと言う小売業の巨人たちが、三つ巴の戦いを始めようとしている。この戦いでは、地元の小売業をいかに味方に引き入れる事が出来るか、という事が非常に重要になる。その時に、どれだけ地元業者に対して影響力を行使出来るか、という点に注力する必要があると言えるのである。