特異な中国型成長モデルは、世界のスタンダードになるのか?

急成長を続ける中国経済において、中国企業は独自の成長モデルを築きつつある。

それは、『多角化』である。中国を代表するアリババ、テンセントなどの企業は、本業のIT分野に留まらず、スーパー、保険、医療、旅行、エンタメ、ホテル、金融など、あるゆる分野の企業を買収し多角化を図っている。
このような、多角化は戦後、日本や韓国などの財閥経営などには一部散見されるが、現在の経営学の王道は、ドラッガー氏が提唱した『選択と集中』、すなわち、コアコンピタンスに経営資源を集中させて、一点突破を図るという戦略である。

今や経営の常識となりつつある理論に背を向けて、敢えて多角化を進める彼らの狙いとは、何であろうか?、その事に目を向ける事で、彼らの戦略が見えて来るのである。

・中国の人工知能とビックデータを基にしたM&A戦略

アリババとテンセントには共通した企業戦略がある。それが、先に述べた『多角化』である。アリババは、直近の5年間で総額419億ドルの資金を企業買収に費やしている。これは、利益の約半分を買収に振り分けている計算で注力の程が分かる。
一方、テンセントは625億ドル。多い年には、実に利益の97%を企業買収に費やしているのである。そして、共通して言える事は、あらゆる分野の企業を買収している点です。

世界的に見た場合、企業買収は本業とよりシナジーを直接的に発揮出来る重点分野に投資するのが一般的で、このようなM&A戦略は他に類を見ないのです。

現在は産業革命真っ只中にあり、その源泉はビックデータである。
                          
                      ジャック・マー

ドラッガーが生きていたら、今の中国をどう表現するのか興味深いが、一見、無秩序に見えるこのM&A戦略にも、実はきちんとしたコアが存在する。

それこそが、『ビックデータ』なのである。

彼らの最大の強みは、アリペイやネットモール、SNSなどから得られる『ビックデータ』の莫大な量と質にある。
これらを人工知能で解析を行い、新しいサービスを生み出している。当然、そこから得られた情報をアウトプットするビジネス領域が必要になって来るのである。
このデータの取得とアウトプットを同時に行える事が彼らの最大のアドバンテージなのだ。
つまりは、彼らの事業の核はEコマースや電子決済では無く、『ビックデータとそれを人工知能で解析する技術』にあるという事である。

このように考えると、事業領域は無限の広がりを見せる事になる。
これは、まさに壮大な実験であり否定的な意見も少なくない。ロイターのコラムニスト、ロビンマク氏はアリババを称して『時代遅れの複合企業』と切り捨てたし、同様の意見は、多くの経済学者の間でも見られるのである。

ただ、仮にこの壮大な実験が成功すると、今までの経営の概念が大きく覆されることになるのだ。つまり、業種間の壁が取り払われ、まるでバトルロイヤルのような状態が蔓延することになる。いや事実、中国では、それが現実になりつつあるのだ。

そう考えると、今私たちが生きている、この時代が如何に凄い変革期なのかが分かります。果たして、この先どのようになるのかは分かりませんが、この中国の動きは少なくても関心を持って見守る必要があります。そして、仮に業種間の壁が取り払われるような時代になった時に、どう生き残るのか?それは、各自が考えなければならない問題なのです。