中国全土に24時間以内の配送を目指すアリババの戦略とは?

中国最大のショッピング・イベントである『独身の日』。
この日、中国最大のECサイトを持つアリババは1日で3.5兆円を売り上げるという偉業を達成しました。これは、日本の楽天の年間売上額に相当し、それをたった1日で達成した事になるのです。

驚くべき事は、これらのサイバーテロ並みの急激なアクセスに耐えうるサーバーの能力と、4億個もの荷物を即日で発送してしまう流通能力にあります。今回は、この『流通』にスポットを当てて、お話して行きたいと思います。

この膨大な量の荷物の配送を担うのが、アリババ傘下の物流会社『菜鳥網絡』である。

この企業の特異な点は、自らは荷物を運ぶ事をしない点にある。彼らの仕事は、ECサイトやアリペイなどから得られる膨大な購買情報から顧客動向を分析し、提携物流企業と流通システムを構築する事に有ります。
具体的には、自社で倉庫を全国各地に建設して、それを全国の物流会社が使えるようにします。在庫する商品は、アリババが保持するビックデータを解析する事により、周辺地域で売れるであろう商品を、予め予想して最適な在庫数を確保しているのです。

中国全土に24時間以内、全世界には3日以内に商品の配送を完了する。

これが、アリババが掲げる壮大な目標である。日本の25倍もの広大な面積を持ち、地方に行けば、満足な道路さえも整備されていない中国においては、かなり挑戦的な目標と言えます。
ただ、実際アリババの物流能力の急成長は、目を見張るものが有ります。
アリババの発表によれば、当日の内に4億個もの荷物が発送され、一番早い荷物は注文から2時間後に顧客のもとに配達。これには300万人の人員と23万台のトラックが投入された。

今年で10年目を迎える独身の日のセールであるが、当初は、物流能力の不足により大量の荷物が滞留、遅延を引き起こし大問題となった。各地の倉庫に荷物が入りきらなくなってしまったのだ。

当然、荷物の破損や紛失も増え、大混乱となったが、それが僅か6年前で、荷量は現在の1/10にも満たなかった。
それが、僅か数年で飛躍的な能力向上を果たしたのだ。
ここに興味深いデータがある。1億個の荷物が配送され、顧客が受け取りのサインをするまでに要した時間の推移である。

2013年  9日
2014年  6日
2015年  4日
2016年  3.5日
2017年  2.8日
2018年  2.6日

 こう見ると、その能力は着実に向上しているのが分かる。その上、この間に荷物の取扱量は、13倍に急増しているのだ。では、彼らが如何にして、これを成し遂げたのか、について見て行きたいと思う。

・統一した物流システムの構築

自ら配送を担当しない菜鳥網絡にとって、提携する物流会社とのシステムの統合は必然である。その為まずは、『タオバオ』や『Tモール』の販売・在庫システムとリンクした物流管理システムを作り上げ、全国の提携物流会社のシステムとの相互性を確保しました。
その上で、統一した伝票を作成し、それぞれの荷物に付ける管理番号を設定し、バーコードを作成。それをスマホで読み取れるシステムを構築しスタッフの仕事を軽減したのです。

菜鳥が出来る以前は、各店舗が異なる伝票やシステムを使用しており、流通会社に掛かる負荷は非常に大きい物でした。改善するにも、システムの変更は非常にコストが掛かり手作業や人海戦術に頼った運営がされていたのです。そこに菜鳥が費用を負担する事で、各社のメリットは非常に大きいと言えるのです。

・人工知能を駆使した倉庫システム

菜鳥は、中国全土に巨大な倉庫を建設して提携する物流会社が自由に使えるように配置しました。
ただ、それだけだけでなく在庫する商品も過去の販売データから、販売数を予想して予め最適な商品と数を確保しておく取組みを始めました。これにより注文があってから、メーカーの倉庫から出荷するより格段なスピードアップが計られ、当然コストも下がる。これらの取組みには人工知能の技術が活用されているのである。

このように、アリババは最新のテクノロジーの力を活用して物流システムの再構築を進めている。
特に、今年の独身の日セールの傾向として顕著なのが、海外からの注文の増加が挙げられる。その数は実に2000万個にも及び、世界220カ国からの注文があった。これは、前年比で94%の伸びを示しており、ロシアなどを中心に重要が顕在化しつつある。

菜鳥は、海外の物流業者との提携も積極的に進めており、前述の通り全世界3日以内の配達を目指している。これは、アリババが中国だけではなく『世界のショッピングモール』として明確な意思を持ちつつある事を示しており、競合Amazonとの競争を想定しているものと思われます。

物流の世界では、『情報』と言う概念が今後ますます重要になってくると思われます。
つまり、注文が発生してから荷物を動かすと既に遅く将来の需要を予測して、予め最適な在庫を確保しておくことが求められるのです。それには人工知能の技術が不可欠で、その為に必要なビックデータを採取できる企業が生き残れる、という時代が目前に迫っているのです。

物流のイノベーションは、日本の小売りの現状を激変させる可能性を秘めています。この事は、世界が益々狭くなることを示しているのです。特に、日本は地政学にも中国と近く、Amazonとアリババの覇権争いは、アジアを主戦場に繰り広げられる可能性が高いと言えます。その際に、如何に優位性を確保するか、その事を真剣に考えるフェーズにあるのです。