ファーウェイは、なぜこんなにも米国に敵視されるのか?

中国通信機器大手ファーウェイのCFOがカナダで逮捕され拘留された事は、世界に大きな衝撃を与えました。表向き容疑は、『対イラン経済制裁を回避する金融取引に関与した疑い。』となっていますが、当初から『別件逮捕』という噂がメディアの間でも囁かれています。

多くのメディアは、彼女が米中間の貿易戦争の『見せしめ的』に逮捕された、という報道が多く見られますが、では、なぜファーウェイが狙い撃ちされる事態になったのでしょうか?今回は、この事件の裏側を見て行きたいと思います。

・急成長する通信機器メーカー・ファーウェイ。

上の2つの表を見て頂ければ分かりますが、ファーウェイは携帯電話の基地局では1位、スマホ・デバイス部門では2位の世界シェアを誇る大企業です。

国内偏重の中国企業では珍しく、2000年以前より積極的な海外展開を行い、2012年には、融資インフラ最大手だったエリクソンを抜き、世界最大のベンダーへと飛躍します。その後は、スマホ端末の販売にも事業を拡大し、短期間で急成長を遂げてきました。

また、研究開発への熱心な取組みは有名で、毎年売り上げの10%以上を研究開発費に廻し、製品の技術向上に勤めています。また、彼らは業界に価格破壊の波をもたらし、通信料・端末の価格に大きな影響を与えたのでした。

・問題とされるファーウェイ創業者 任 正非氏の経歴。

上記のような企業紹介を見ると、単なる優良企業としか映りませんが、問題はファーウェイ創業者である任 正非氏の経歴に有ります。

彼がファーウェイを創業したのは1987年。それ以前の彼は、人民解放軍の通信部門研究を担う情報工学学校のトップを務めていました。起業後も、この関係性を活かし、軍関係の仕事を多く受注して成長してきた経緯があります。つまり、軍と近しい関係にあると言えます。

米国が憂慮するのは、任氏と軍の、この関係性にあるのです。

・中国の特異な法制度。

実は、中国には先進国には類を見ない特異な国内法が存在します。

それは、中国では政府に銘じられれば、国内企業や市民・組織は、治安当局に協力と支援を行わなければならない、と法律で規定されています。
つまり、ファーウェイのような大企業であっても、政府に命令されれば、どんな命令にも全面的に従う必要があるのです。

この事は、政府が命令すれば、ファーウェイの販売した基地局に不正アクセス出来てしまう、という事を指すのです。

中国は、過去において世界中にサイバー攻撃を行ってきた『前科』が有ります。それにより、多くの機密情報や知的財産が盗まれた事は明白で、米国政府は、この点を非常に憂慮している事が、今回の事件に結びついているのです。

現在、世界中で5Gへの対応の為、通信基地局の設備更新が行われています。この流れの中で、ファーウェイの機器に更新されるリスクを取り除く事が、今、世界で行われているファーウェイを排除する動きになります。

ただ、この事で『中国は許せん!!』というのは、余りにも短絡的だと言えます。
実際に、このような不正アクセスは中国だけで無く、既にアメリカのNSAなども行っている事は、スノーデン文書によって明らかになっているからです。

この問題の本質は、米国は、他国の覇権を決して許さないという事です。
且つて、経済成長著しい日本も半導体、自動車など様々な分野で紛争が発生し、最終的には為替制度そのものを根本からひっくり返すという荒業で、米国は日本の台頭を阻止しました。同盟国である日本でさえこうですので、後のソ連・中国に対しては言うまでも無い事とと言えます。

この問題が厄介な点は、世界1位と2位の経済大国が対立している点にあります。
この戦いでは、中華思想を持つ中国も、決して後に引くような事は無いでしょう。ジャック・マー氏は、米中の争いは20年続くと予言しましたが、あながち間違っているとも言えません。

この事は、北米と中国への市場に依存する日本においては大問題だと言えます。強権的なトランプ大統領の存在は勿論、中国の政策決定グループは、非常に実利的でしたたかな面を持ち合わせています。この狭間で、どのような方針を貫くかで、経済に影響する度合いは大きく変化します。

日本の持つ優位性は、中国に近いと言う地政学的な側面です。両社にとって非常に価値のある、この地の利を、どれだけ活用出来るか、その事が非常に重要になってくる筈です。