Amazonの顔認証技術が、米国を監視社会へと変えるのか?

以前の記事で、国中に張り巡らされた数億台の監視カメラから、人工知能の画像解析技術を用いる事で、18億人分のデータベースから瞬時に個人を特定する中国の監視システムを特集しましたが、実は、同じような事態が米国でも起ころうとしている、という話題です。

この『監視システム』を開発したのは、世界最大級のEコマース企業であるAmazonです。米アマゾンは、サーベイランス・ビジネス(監視ビジネス)に公式参入しており、彼らが開発した新型の顔認証システム『アマゾン・レコグニション』を、政府機関や法執行機関に対し、積極的に導入を働き掛けています。

このシステムは、人工知能を搭載しており、あらゆる人間をリアルタイムで識別、追跡・分析をし、数千万人のデータベースから瞬時に個人を特定する能力を持っています。
これに対し、全米の人権団体が反対しており、『このシステムは、人々の素性を調査・監視する為の簡単で正確な方法であり、当局が関心を持つ人を特定したり、不法移民や黒人活動家と言った、政府が疑わしいと目を付けた個人を監視する為の計画となる可能性が高い。』と警告しています。

特にトランプ政権発足後、国民は様々な集会や運動に関わるようになる中、イベントや空港と言った公共の場所での監視活動が常態化する危険性が囁かれているのです。

これに対し、19人のアマゾンの株主グループが、同社CEOのジェフ・ベゾス氏に対し、このシステムを政府に販売したり、マーケティングに活用する事を中止するよう求めました。
また、企業内部からも、上級エンジニアを含む100人以上が連名で同じ内容の抗議文をベゾス氏に送りました。

ベゾス氏は、過去にトランプ政権によるイスラム教信者への差別的対応に批判する声明を出していますが、反面、その行為を後押しするような技術を政府に売りつけようとしている、として批判を浴びているのです。

このプライバシーと人工知能という相反する要素に対し、どこで線引きを行うか?という問題は、非常に悩ましいものであると言えます。人工知能の精度を上げる為には、個人情報が必須だが、行き過ぎると自由を失う事になります。つまり、この問題は便利さと自由のバランスという課題に密接に関わっているのです。

一方、プライバシーの概念が薄い中国では、そのような問題はあまり表面化しない為、どんどんと技術が発展している現状があります。手をこまねいていると、技術的に中国に大きく引き離されない危険性を秘めているのです。
ゲームは明らかに中国有利の情勢で進行していますが、このまま勝負を結してしまうのか、しばらく情勢を見守りたいと思います。