Tic Tocの成功に見る、中国企業の潮目の変化。


今年、若者層から大きな支持を得た『Tic Toc』。

ユーチューブに代表される激戦区の動画投稿アプリの中で、瞬く間にブームが広がった。
最大の特徴は、15秒という絶妙な時間だと言える。利用者は、予め登録されている楽曲の中から、好きな曲を選び、ダンスや口パクの動画を投稿する。

通常の動画作成の場合、企画・トーク・編集と言った様々な要素が必要だが、15秒に時間を限定する事で、動画作成のハードルを下げた事が成功に繋がったと言える。
私もアプリをダウンロードしているが、短時間の動画の為に消費のスピードがかなり速い。見ていて飽きないのだ。
そして、気が付けば30分位の時間が平気で経っている事さえある。

この企業に関しては、以前の記事でご紹介させて頂いたので、興味のある方は見て欲しい。

この大ヒットアプリを運営しているのが、中国の新興企業『バイト・ダンス』である。
既にダウンロード数は5億回を超えており、日米、中国を含め150か国以上で利用され、その内、多くの国でNO.1アプリとなったのだ。
また、同社はこれだけでなく『Buzz video』、それに中国の大人気ニュースアプリの『今日頭条』の運営も行っている。

企業価値は既にウーバーを越す8兆円と目されており、世界最大のユニコーン企業といえるのである。また、他のユニコーン企業と異なる点は、既に年間に8000億円の利益を出しており、黒字化している点にある。

また、中国のスタートアップとしても、明らかに特異な存在と言える。
それは、アリババ・テンセントという2大巨頭の資金を最近まで、受け入れて来なかった点にある。
実は、最近になってアリババの資金を受け入れる事になったのだが、これはテンセントとの確執が要因となっている。その経緯については割愛するので、
前の記事を見て欲しい。

因みに、彼らが資金を受け入れているVCは、コールバーク・クラビス・ロバーツ( KKR )やセコイア、ジェネラル・アトランティクという層々たる顔ぶれだ。特に最近では、ソフトバンクVFが3000億円という大規模投資を行っている。

では、なぜ彼らから投資が得られたのか。
それは、バイトダンスが初期の段階から『世界』をターゲットにしてきたからだ。
中国では、アリババやテンセントなど中国をメイン市場としている企業が多い。なぜなら、全世界の5人に1人は中国人という莫大な市場が存在するからだ。

しかし、最近は潮目が変わりつつある。このバイトダンス社を始め、ドローンで世界で7割のシェアを持つDJIのように、初めから世界市場に打って出る企業が生まれてきたのだ。

これには理由がある。既に中国市場は飽和しつつあるのだ。

2000年以降、中国では毎年20~50%のネットユーザーが年々増加するという傾向が続いた。それに伴い、多くの企業が生まれ中産階級が形成されていった。
しかし2016年以降、中国のIT企業は、東南アジアを中心とした新興国への投資を活発化させて行く事になる。

東南アジアやインドと言った国々では、先進国と違いGAFAなどのプレゼンスが低く、まだまだ入り込める余地がある。おまけに、膨大な人口を抱えており、市場としての『伸びしろ』は非常に大きい。
また、それら新興国には現在、スマートフォンが急激に普及しつつある。中国同様に『リープフロッグ』が起こりやすい土壌が出来つつあるのだ。

バイトダンスやDJIの台頭は、中国企業のグローバル化を暗示している。
内弁慶だった中国企業が、変わりつつあるのだ。

日本企業にとって、莫大な資金を一気に投下する彼らのビジネススタイルは、脅威と言える。
中国企業は、国家に守られている、というイメージはあるが、壁の内側では壮絶な競争を繰り広げている。その修羅場を勝ち抜いた彼らは、決して簡単な相手ではないのだ。
ただ、彼らは、まだまだ海外展開のノウハウは持っていない。その意味では、日本企業に有利ではあるが、この先10年は、インド・東南アジアを主戦場とするグローバル企業の戦いが活性化する物と予見できるのである。