
政府のハイウェイ建設のプロジェクトでシアトルを訪問したジャック・マー氏は、現地でベンチャー企業を起業していた友人に会う事になる。
彼のオフィスを訪ねたジャックは、ここで初めてインターネットと言う物を目にする。
『ジャック、見ろよ。これがインターネットだ。』
『えっ、何それ?』
『これがあれば何でも出来るんだぜ!!』
とにかくコンピュータに触ってみろ、と進める友人にジャックは躊躇します。
当時コンピュータは高価な製品で、万が一自分が触って故障する事を恐れたのでした。
しかし、執拗に進める友人に負けたジャックは、ここで『ビール』と入力して検索してみる。
ここで彼が気付いたのは、各国のビールが検索される中、『中国のビールが無い!!』という事だった。
それから、彼は中国と入力してみます。すると出てきた検索結果は、何と0件だったのです。何もヒットしない、データそのものが存在しなかったのです。
そこで、『中国に関する物をインターネットで作ろうよ。』と、その友人とホームページを立ち上げたのでした。
朝9時半に立ち上げたホームページには何と昼の12時半には5件もの問い合わせが入ります。そこには、サイトに関しての質問と共に、
『あなたは、何処に居るのですか?』
『一緒にビジネスを始めませんか?』
これを見て、面白いと感じたジャックは、『アリババ』の起業を思い立ったのでした。
・『信用』を築く事こそが、アリババの理念である。
ジャックは、中国に戻ると『中国版イエローページ』など様々なネットビジネスを展開し、40社余りを創業。しかし、どれも上手く行かずに悩んでいた。
中国のビジネス慣習は、お互いに顔を合わせて信用を築く。
しかし、ネットの世界では、この信用構築が難しいのだ。
中国では政府も人々もお互いを信用出来ないし、メディアも信用できない。まるで、みんなが騙し合ってるような社会だったのだ。

私たちはお客様がどんな人物か全く知らないけれども、注文されたものをお送りする。お客様は私たちが実際どんな会社か、どんな人が働いているかを知らないけれども、注文した商品の代金を支払う。
こうやって知らない者同士が取引をして、商品が海を超え山を越えて販売される。信用がなければ、とてもこんなことできませんよ。
ジャック・マー
この『信用』こそが、彼が最も注力したものでした。
彼は、信用を勝ち取る為に3年間は商品を売らず、情報提供に徹しました。
ある程度の下地が出来ると、彼はネットでの販売に舵を切ります。しかし、ここで問題が発生します。銀行が、ネットを通じたビジネスモデルに難色を示し、融資が受けられないのでした。
また、当時ネットでのお金のやり取りは、法律に抵触する物でした。ライセンスが必要だったのです。何の人脈も無いジャックにライセンスが交付される訳も無く、彼は苦境に立たされます。
『今』やるんだ! 今すぐに!!
実行してもし万が一、何か法的な問題があれば、私が責任を取って刑務所にでも入ってやろう!!それくらいの覚悟はできている。
それでも、今やらなければいけないんだ。eコマースは中国にとって、そして世界にとって、非常に重要なシステムなんだ。ジャック・マー
この時期、中国の殆どの産業は政府が主導して立ち上げたものでした。
しかし、アリババは政府の援助を受けられないばかりか、投獄のリスクすら存在したのです。
その上、銀行は資金を融資せず、彼は資金調達の為に何度もアメリカを訪問する事になります。
やがて、彼の情熱が実を結び米国のVCからアーリーステージの資金を調達。その資金を基にアリババの歴史が始まるのです。
瞬間的な情熱は無意味である。持続できる情熱だけがビジネスになる。
ジャック・マー
ジャックマー氏の座右の銘は、『永遠不放棄』(絶対に諦めない!!)
数々の失敗や苦境を乗り越えてきた彼だからこそ、言葉に凄みが宿るのだと言える。
今こそ日本人がジャック・マーから学ぶべき事 ①