Amazonのシェアが49.1%に拡大。政治リスクが高まる可能性も。


トランプ大統領のAmazon嫌いは有名だ。

隙があれば、Amazonを批判するトランプ大統領にとって、この市場の過半数に迫るシェアを有する現状は、独占禁止法での捜査を開始する理由を与えてしまうかもしれない。

Amazonの2018年の米国内での売上高は、2582億2000万ドルとなり、これは米国全体のオンライン小売売上の49.1%占め、総小売売上の5%に相当する。

本来では、喜ばしいこの偉業の達成も、ジェフ・ベゾス氏にとっては頭の痛い問題なのかもしれない。
グーグル・Facebookと、巨大IT企業に対し批判的な態度を繰り返すトランプ大統領であるが、Amazonに関しては、1年以上を通して批判を続けているのだ。その大きな要因は、度重なる小売業の倒産の度に囁かれる『Amazon脅威論』なのだ。

・崩壊する米国の小売業。

2018年は、トイザらスに代表される小売業の大型倒産が相次いだ。
ドラッグストア大手のウォルグリーン、トイザらス、GAPは全米で数百店舗の閉鎖を発表し、その他にもシアーズ、JCペニーなど、年内に閉店した店舗は3800店舗以上になると言われている。

この惨事に対し、国内の雇用拡大を政策の最重要課題に設定するトランプ大統領は、分かりやすい『標的』にAmazonを設定したのだ。

ただ、Eコマースの市場規模は、米国でも未だ15%程で、全体の85%はリアル店舗が担っている。
この現実を踏まえると『Amazon脅威論』は、いささか過大評価されているのは否めないのである。
この米国の小売業の衰退に関しては、以前の記事で詳しくお話しているので、そちらを見て頂きたい。

トランプ大統領の批判に関しては、お得意のTwitterでのツイートを引用すると以下の通りである。

選挙のずっと前から、わたしはアマゾンに対する懸念を示してきた。
「他の企業と違い、彼らは州政府や自治体にほとんど、もしくは全く税金を納めていない。我々の郵便システムをデリバリーボーイのように使い(これがアメリカに巨大な損失をもたらしている。)

ただ、この批判は正しいとは言えない。
GAFAの『課税逃れ』に関しては、以前の記事に書いたので、そちらを参照して頂きたいが現状のところ違法とは言えない。
では、郵政公社に関してはどうだろうか?

・米国郵政公社の現状。

米国郵政公社とAmazonとの関係を、『全く馬鹿げたもの』と切り捨てたトランプ大統領のツイートを検証してみたい。

まず、アメリカ郵政公社について馴染みの無い方が殆どだと思いますので、簡単な説明をしたいと思います。
日本では、郵政というと、郵便だけでなく貯金・保険といった領域もカバーしてますが、アメリカでは『郵便事業』のみを行っています。

何でも民間が行うアメリカに於いて、郵便事業が未だに国営で運営されている事に違和感を感じる方も多いと思いますが、国土の広いアメリカでは、郵便事業は、構造的に高コストで儲かり難いビジネスなのです。

それでも、2006年までは何とか黒字経営を行ってきました。
しかし、Eメールの普及と小切手の衰退により年々仕事は減少。2007年以降は、毎年数十億ドルもの赤字を計上してきました。

この年々減少する荷量に変化を起こしたのがAmazonとの取引でした。2017年には、郵政公社にとって最大顧客がAmazonとなったのです。

このような状況下で、仮にAmazonとの取引が無くなると、大きな問題が発生します。それは、トランプ大統領の重要視する『雇用問題』です。

現在、郵政公社が抱える従業員数は約270万人。
これは、世界最大の小売業ウォルマートの220万人を凌ぎます。
実は、郵政公社はアメリカ最大の雇用主なのです。その為、民営化による大規模なリストラは社会的に影響が大きいだけでなく、儲かり難い事業の為、引き受け手も居ないという状況なのです。

うして見て行くと、アメリカが抱える様々な社会問題がAmazonに転嫁されている事が分かります。
特に、ベゾス氏はトランプ大統領が忌み嫌う『ワシントン・ポスト』の事実上のオーナーという点も影響していると言えます。

現状、Amazonが独占禁止法で起訴されるという事は、現実的ではありませんが、彼がAmazonに関するツイートを行う度に株価は下がり、ベゾス氏にとっては頭痛の種となっています。

一国の首脳、それもアメリカの大統領が、このような無責任な言動を行う事は以前では有り得ない事でしたが、今では、ある意味の『慣れ』が蔓延してしまい、もはや日常と化してしまいました。今後、トランプ大統領は政権への批判や支持率低下を煙に巻く為に、様々な『仮想敵』を作り出す危険性をはらんでいます。

特に、中国企業に関しては、風当たりが強くなる事が予想され、政治リスクが無視出来ないレベルまで高まる可能性が高く、両国に依存する日本は、難しいかじ取りを迫られるのではないでしょうか。