ゲーム事業世界一のテンセントの過去と未来。


中国経済に於いて、アリババと双璧を成すIT企業、それがテンセントです。

熱血漢でカリスマ性に溢れたアリババのジャック・マー氏と比べ、テンセント創始者であるポニー・マー氏は、静かで沈着冷静という印象でメディアに登場する事も、それ程多くありません。
その為、ポニー・マー氏が果たしてどんな人間なのかという情報は、非常に少ないと言えるのです。

ジャック・マーとポニー・マー。ある意味、対極の人間なのかもしれません。

上の表は、世界の企業の時価総額トップ10を現わした物です。
米国企業が独占する中、6位のアリババ、9位のテンセントと中国勢の2社がランクインしています。

昨年11月、テンセントは、アジアの企業としては初となる時価総額5000億ドルの企業となり、瞬間的に5位となりました。
これは、トヨタ自動車の時価総額2000億ドルの2倍の数字を誇るのです。


この帝国を一代で築き上げたのが、先程から述べているポニー・マー氏なのです。

貧しい家庭に生まれ、常に劣等生だったジャック・マー氏に比べ、ポニー・マー氏は、かなり恵まれた家庭に生まれた『優等生』だと言えます。

1971年46歳の彼は、深圳市の航運総公司の総経理(社長)だった父、馬陳術氏の息子として生まれました。
1993年には、深圳の通信企業にソフトウェア・エンジニアとして入社した彼は、1998年に4人の仲間とテンセントの前身となる会社を立ち上げます。
翌年には、地元の通信会社の深圳通信と共同で、パソコン向けSNSサイト『QQ』を立ち上げるのでした。その後、このシステムをスマホ用に移植した『移動QQ』をリリース。国内各省の事業者と提携を行い、中国全土を覆うネットワークを作り上げたのでした。

・『We chat』への移行こそが、ポニーマー最大の英断である。

この『QQ』は、スマホ向けの『移動QQ』と合わせて国内でもヒットし、テンセントは急激な成長を遂げる。
しかし、ポニー・マー氏はここで人生最大とも言える決断を行う。
それは、『移動QQ』のサービスを廃止し、スマホベースでシステムを作り直す決断をしたのである。そして、作られたのが『We Chat』だったのです。

パソコンとスマホの違いはオンとオフという概念で説明が出来ます。
パソコンのSNSでは、コンピュータから離れると、完全にオフの状態になりますが、常に持ち歩くスマホは違います。常にオンの状態にあるのです。その為、パソコン用のシステムをスマホに移植しただけでは、不十分で、スマホ用に最初から作り直す必要があったのです。

ポニー・マー氏は、後にこの決断が生死を分けたと語っています。
即ち、Wechat無しには今のテンセントは存在しなかったのです。

実は、このPCからスマホに移行する間はテンセントに関わらず。グーグル・Facebookなど様々なプラットフォーマーが共通の悩みを抱えていた。それは、画面の大きさだ。
IT企業の多くは、『広告』が収益の柱となるが、画面の小さいスマホでは、広告の掲載量が限られてしまう。そこで、新しい収益源を見つける必要に迫られたのだ

彼らは、それによりゲーム・決済と言う新しい分野に進出して行く事になる。

因みに2017年の業績は、売上高が約4兆円、純利益は1兆2000億円にも及ぶ。更に驚異的なのは、その成長率で、売上高で56%、純利益で74%という高成長率を維持している点だ。そして、その内の半分弱の1兆6千億円をネットゲームのみで、稼ぎ出しているのだ

・独特の進化を遂げる中国のアプリ・ビジネス

中国のアプリ・ビジネスは、独特の進化を進めている。

それは、『アプリ内アプリ』とも言えるシステムで、1つのアプリを開けると、その中に様々なアプリが入っている。イメージ的にはPCのフォルダを開けると、様々なファイルが入っているようなイメージだと言える。

テンセントの場合、『Wechat』のアプリをダウンロードすると、チャットは勿論、決済・ゲーム・飲食店の予約・動画・タクシーの呼び出し、など日常生活で使用するアプリが全て入っている。
その為、利用者は1つアプリだけダウンロードすれば良く、各アプリの登録・設定も一度で出来てしまう為、非常に使い勝手が良い。

実は、いま日本の若者層に流行っている動画アプリ『Tic Tok』も以前は、Wechat内の子アプリでした。

このように、アプリ開発を行う新興企業にとっても、アリババ、テンセントのアプリ内コンテンツに採用されるかどうかが、成否を分けると言っても過言ではないのである。
この事が、中国内に於いてアリババ、テンセントの影響力を強くしている要因であると言える。

では、具体敵に『Wechat』と言うアプリがどれだけ凄いか説明しておこう。
アクティブ・ユーザーは月間10億人。
その内1日に90分以上使用するユーザーが50%を超える。

この事がいかに凄いかは、ネットビジネスをしている方だと、良くご理解いただけると思うが、一言で言うと『化け物』である。当然だが、世界一使用されるアプリとなっているが、広告収入だけでも凄い額になる筈である。

・突然の危機に晒されるテンセント。

実は、このテンセントは現在、危機に晒されている。
何と自社の稼ぎ頭であるゲーム事業に、自ら足枷を嵌めたのである。


具体的には、ゲームのプレイヤーの年齢ごとに、プレイ時間の制限を加えたのである。この背景には、中国政府の圧力が存在する。
加熱するゲーム・ブームによる若年層の視力の低下や、ゲームの暴力性や中毒性を問題視した政府が、新しいゲームの開発の凍結を行ったのだ。中国では、ゲームの開発にも許認可が必要で、今回の時間規制は、テンセント自身が、自主規制を設ける事により、政府との関係性の改善を狙った物と思われる。

これにより、テンセントの株価は大幅に下落。一時は、時価総額のトップ10を陥落する程のダメージを受ける事になる。
中国でビジネスを展開する限り、政治リスクからは逃れられないが、ゲーム事業は、同社の主力事業だけに、今後の影響が懸念されます。