スマホ決済で、果たして何が変わるのか?

日本でも、遂にスマホ決済が本格的に動き出した。

利用者にとっては、財布を持ち歩かなくて良いとか、レジに並ぶ時間が短縮されるなど、ペイメントに関わる手間が省けるというメリットがあるが、正直、それで社会の何が変わるの?という思いをお持ちの方も多いと思います。
今回は、その辺りを少し深堀りして行きたいと思います。

・スマホ決済による利用者側のメリット。

・ペイメントの簡略化

利用者側の分かりやすいメリットは、お金を持ち歩かなくても良いという事。
但し、これには何処でも使えるようになるという事が前提で、限られた場所でしか使えないのであれば、意味が無い。
これは、まさにクレジットカードでは、ダメなの?という問いの答えにもなるのだが、スマホ決済が進んだ中国では、交通機関から、街の屋台まで全ての場所で使えるというところに価値がある。

・個人毎に適正化されたサービスが受けられる。

電子決済の本質は、まさにここにある。

今までの経済は、消費者をマスで捉え、みんなに喜ばれるサービスを提供する事が求められた。しかし、これからはスマホ決済によって得られた購買データから、その人に合った、より精度の高いサービスを提案する事が出来るのである。
これにより、消費者は多くの時間や手間を節約できる事になる。

・スマホ決済の事業者側のメリット

スマホ決済は、まさに王者のビジネスと言える。
特に、この電子決済のプラットフォームを取る事は、そこから得られる『ビックデータ』により、劇的にビジネスは変わるのである。

現在、ソフトバンクやLINEなどの大手IT起業が続々と市場に参入し、100億円還元キャンペーンなど大規模なプロモーションを繰り広げている。しかし、このペイメント事業自体は、薄利多売で、正直それほど儲かるビジネスでは無い。では、なぜ各社が大金をつぎ込んで広げようとするのか、それは、そこから得られるデータには、莫大な価値があるからだ。

・スマホ決済から得られるビックデータの活用が重要。

スマホ決済で得られる消費者の購買情報の価値は莫大である。
考えてみて欲しい。誰が、いつ、どこで、何を買ったのか。この情報が分かると、ある意味その人の全てが分かると言っても良い。

例えば、使う金額によって、その人の年収や社会的地位、それに買った商品から趣味・趣向、それに家族構成。それに、どこで買った、という所からは行動範囲。これを時系列的に分析すると、その人のかなりの部分が分かる。

また、薬局や病院などでの支払い履歴を見れば、相手の健康状態まで理解する事が可能だ。
こう言った高精度の情報が、個人情報と紐づいている所に意味がある。
これらの情報を、販促に用いる事で、高レベルのマーケティングが可能になるのである。

・広告の成果が可視化出来る。

これらIT起業にとって、『広告』は重要な事業の柱である。

ただ、今までは効果検証が非常に困難であった。その為、その指標を広告のクリック率に頼ってきた。即ち、利用者が広告をクリックして、広告主のホームページを見たから、このユーザーは関心があると判断していた訳です。しかし、実際のところ、このクリックが利用者の意思によってなされたのか、誤ってクリックしたのかは、判断出来なかったのである。

しかし、購買情報を得る事で、指標を今までの『クリック』から実際に商品を買ったという『事実』に変える事で、広告の効果検証の精度が劇的に上がるのである。

・スマホ決済導入への課題。

・決済手数料

最大の課題は、やはり決済手数料である。

現在は、各社キャンペーンを行い決済手数料0円というのが定着しているが、本格運用の段階では、各社3~5%を設定している。これは、小売店の利益が減る事を意味しており、抵抗は大きい。実際に、日本でクレジットの導入が進まなかったのは、この手数料が問題だったからだ。
中国では、1%前後というのが普通だが、日本でそれを実現するには、各社が、かなりのスケールを追う必要がある。

・利用者側へのメリットが薄い。

財布を持ち歩かなくて良い事は、有り難いが、現金の使用になれた人間にしてみると、それだけではメリットが薄く感じてしまう。
特に、クレジット決済を使い慣れた層には、『マイル』が溜まる訳でも無く、メリットに乏しい。
中国では、アリペイなどにお金を入れておくと、アリババがその資金を運用して年率4~6%の利子を付けてくれる。キャッシュバックなど、分かりやすいメリットが必要。

・銀行の振込手数料の問題。

デビットカード方式のスマホ決済では、お金をチャージするのに、銀行振込と言うものが必要になる。この手間と、それに関わる手数料は、事実上、スマホ決済のコストとなる。
口座とデビットカードを直結させるなど、少しハードルを下げてあげる必要がある。

・購買情報などのプライバシー問題。

基本的にスマホ決済とは、個人情報を与える代わりに、便利さを享受するというシステムである。

しかし、お金の情報は、かなり高度なプライバシーに属する。
これが、不正使用や漏洩する事で、それが脅かされる事を意味する。電子決済とは、お金に名前が書いてあるのと一緒で、例えば、あまり知られたくない遊びをした時など、今までは現金で払えば足が付かなかったのが、電子決済では、それが記録されてしまう、と言った弊害も生まれる。

様々な問題をはらんでいる電子決済であるが、この流れは不可逆と言える。

小売店は、お金を扱わない事で、人手不足の解消、セコムなど保安関係の経費を削減できる。
銀行は、これにより大規模な支店の統合と、家賃・現金輸送のコストなどで、1台当たり平均して年間1000万円掛かると言われるATMを減らせる。
政府は、お金の流れが電子化される事により自営業者などによる慢性的な脱税行為を防ぐことが可能で、事実、韓国は、これにより税収が伸びた実績がある。

このように、この流れは止める事は出来ない、という事を前提に、いかに法整備も含めたシステムを構築して行くか、という事が重要です。そして、特に個人情報に関しては、きちんとした保護制度を確立する必要がある。

あと何度も言うが、スマホ決済に意味があるのではなく、そこから得られるビックデータをいかに活用出来るかが重要という事を忘れてはならない。
テクノロジーは、人を幸せにする為に活用する、という大前提を確認した上で、進んで行かなければならないのである。