米国では、Eコマースで販売された商品の30%が返品されている。

国の調査会社『 eMarketer 』の調査によると、今回のホリデーシーズンの売上が、14兆円を達成した一方、その内の3割にのぼる約4兆円が返品されていた、との発表を行いました。

買い物をする際、多くの日本人は買うべきかどうか、悩む事は多いと思う。
しかし、米国人には、あまりこういう感覚は存在しない。まず買ってみて気に入らなければ返品すれば良い、と思うからだ。

アメリカ小売業では、基本的にどこでも商品の返品を受け付けている。
それも、そのハードルはかなり低く、数回着た衣料品は勿論、食べかけの食料品、レシートの無い商品、さらには店によっては、1年前に購入した物であっても、店側は無条件で返品を受け付け全額を返金している。

この習慣は、勿論Eコマースでも踏襲され、消費者にとって返品のしやすさが店への安心感に繋がっている場合が多い。
その為、サイトには『返品ボタン』が存在し、それをクリックすれば、送付状が印刷できたり、商品と返品用の送付状を同封して発送するなど、各社が返品の手間をどれだけ削減出来るか、という点に工夫を凝らしているのである。

この商品の返品を許容する商習慣が始まったのは、19世紀末と、実に100年以上の歴史を持つ。
当時、まだ自動車が普及する前のアメリカでは、人々は近所の商店で買い物する以外無かった。その為、商品のバリエーションは少なく、割高だったのだ。

そんな人々の不満を解決したのが、『シアーズ』だった。
今では、百貨店として認知される同社だが、当時はカタログ・ショッピングを世界で初めて行った企業として知られていた。同社は、カタログを家庭に送り、割安な商品の通信販売を行ったのだ。このビジネスは大いに受け入れられる事になるが、そのカタログに書いてあった文言が、『ご満足いただけなければ、全額返金致します。』という言葉だったのだ。

この成功体験は、他社が真似する事となり現在に至っているのである。

・経営を圧迫する返品コスト。

この手厚い返品慣習であるが、当然そこにはコストが発生する。

特にEコマー業者では、返品に掛かるコストも企業側が負担している場合が多く、頭の痛い問題となりつつある。Eコマースの場合は、返品の際に店員と対面する事が無い為、より返品へのハードルが下がってしまうのだ。

また、利用者の中には、それを悪用し、ある程度の期間使用した物を計画的に返品する者や、部品を抜き取った後に返品をするなどの悪質な事象も多く存在するのである。多くの企業では、取引停止などの手段を講じるが、悪質性の判断は非常に難しいというのが現実である。

当然、返品に掛かるコストは商品価格に転嫁される為、正直な利用者が、悪質な利用者が引き起こすコストを負担する、というジレンマが存在するのだ。

近年では、業者間で悪質返品者のリストを作成して共有して行こうという声も出てきているが、実現には至っていない。

・日本では返品のハードルの高さが、Eコマース普及の妨げに。

一方、日本では返品のハードルは非常に高い。

最近になってAmazonが衣料品の試着サービスを始めたが、それまでは返品に対し非常に厳しい対応を取ってきた現実がある。この事が、先進国のEC比率が、どこも10%を超える中、日本だけが6%台に留まっている1つの要因となっている。

この問題を、どう解決するかという事は非常に難しい問題と言える。
つまり、緩くし過ぎると悪用する者が出て来るし、厳しくし過ぎるとサービスが普及しないのである。

だが、目指すべき方向としては、テクノロジーの力を借りて情報の正確性を高める一方、悪質な利用者を排除して行くという方向性であるべきだ。
それは、ZOZOが行っている利用者の体のサイズに合わせた商品作りに代表されるような、人工知能を用いた『個』への対応だと言える。

本来Eコマースは、固定費を抑える事で、効率的運営が可能なモデルとして始まった。
しかし、現実は『返品』の多さにメリットが掻き消され、儲け難い体質になってしまっているのだ。
近年は、インスタグラムの流行により写真を撮る為だけに服を購入し、撮ったら返品するというユーザーが増えたと言われている。そのようなコストを一般の利用者に転嫁する事は理不尽であり、サービスの普及の妨げになってしまう。その為、業界として最低限の取り締まり、悪質者の排除は必要だと思うのである。