信用スコアの国家管理が進む中国。利便性と自由の共存は可能か?


日本でもヤフーが、『J スコア』という信用スコア事業への参入を発表しましたが、これは、中国のアリババ子会社が展開する『芝麻信用』がベースになっています。

その中国において、政府が信用スコアを利用して、国民を統治しようとする動きが進展しています。

具体的には、地方政府がアリババの『芝麻信用』と同様のシステムを独自に作り、良い市民には特典を付け、問題市民に対しては、権利を制限して生き難くしていこうというシステムになります。

・個人の情報が数値化される時代。

まず、『信用スコア』について、今までの金融機関の融資の際などに用いられている『信用情報』と何が違うか、という点を明確にしておきたい。

基本的に、現在使用されている『信用情報』は、お金の貸し借りに限定した情報で構成されている。その為、いつローンを組んで、その支払い状況がどうだったか、という点と、現在の年収や社会的地位を組み合わせて判断する。

一方、『信用スコア』に関しては、もう少し取得する情報の範囲が広い点と、その判断に人工知能を用いる点が異なる。
具体的には、ネットの上の検索履歴やSNSでの交友関係と言ったものまで含めた情報が利用される。恐らくではあるが、それ以外の情報、例えば出生地や生きてきた環境と言った個人のバックボーンも活用される可能性が高い。

実際、アメリカでは人工知能が様々な範囲で活用されており、州によっては、刑務所の服役者の保釈の判断にも人工知能が活用されている。それには、人種・出身地・家族構成など様々な統計データから、再犯率の高そうな人を見つけ出し、危険と思われる人の保釈を阻止する用途で使われている。
このシステムの問題点は、なぜ保釈が出来ないのか、という明確な説明が不可能な点にある。人工知能は、結果は示すが、思考の過程は示さないのだ。

これは、法の下の平等と言う概念に対し、問題を提起している。

・独自の信用スコアを採用する中国政府。

今、中国では地方政府が独自の信用スコア制度を構築し、市民を監視する動きが強まっている。

代表的な所で言うと、アリババ本社がる杭州市では、『銭江ポイント』という信用スコアが採用されている。これは、2016年にアリババの協力の下に開発されたシステムで、早い話、アリババが展開する芝麻信用そっくりである。

評価項目は、以下の5点となります。

(1)身分特質  本人の戸籍所在地や学歴、職業、社会保険の加入状況など
(2)遵紀守法 適正な納税、公民の義務の履行、違法行為がないことなど
(3)商業信用 購入代金の適正な支払い、借入金の返済状況など
(4)生活信用 公共料金の適正な支払い、公序良俗に反する行為の有無など
(5)社会的行為 ボランティア、社会奉仕活動への参加、積極的な献血など

550点以下向上を期待
550~600一般
600~700良好
700~750優秀
750以上極好 模範的市民

同様のシステムは、全国の市町村で続々と導入されており、近い将来全土で採用される事は確実視されています。

・アメとムチで国民を統制する中国政府。

中国では、このスコアの点数により優秀者には、

・公務員の優先採用。
・渡航ビザの優先発行。
・自動車ナンバーの優先割り当て。
・公共住宅の家賃優遇。
・医療機関への優先的受診。

などの特典を与えて行く考えだ。

しかし、点数の低い者へのペナルティとしては、これらの特典は与えられることは無く、それ以外にも電車や飛行機の利用を制限され、自由さえも奪われる事になる。

このシステムは、中国全土に張り巡らされた『天網』と結び付き、より厳格な監視社会を形成しようとしているのである。

『天網』とは、人工知能を用いた監視カメラネットワークである。
中国では、全土に1億7000万台という膨大な数の監視カメラが存在し、その画像を人工知能の画像解析に掛ける事により犯罪の摘発を行っている。
これにより、政府の顔データのデータベースを基に、毎秒30億回という照会を行い、犯人を特定し、数分で現在の居場所まで分かってしまうのである。

福建省のある市では、このシステムを活用し、横断歩道での信号無視の取り締まりを行っている。これにより2カ月間で2回の信号無視を行った個人はブラックリストに登録され、権利を制限される。

このような動きを見て行くと、一党独裁の中国ならではの現象と思いがちだが、中東のドバイなどでは、人工知能と監視カメラを用いた取締りが既に行われている。

これは、監視カメラ間の移動時間から、走行距離を逆算するシステムで広く活用されている。このシステムでは、違反が発覚するのが警察からの通知がある数日後となる為、短時間で知らない内に違反を繰り返す事がある。
元々、お金持ちが多い同地区であるが、その分罰金も高額で、レンタカーを借りた旅行者が、4時間で32回の違反を繰り返し、520万円の罰金を課せられる事件も起こっているほどだ。

このように、国家に予算的制約がある中、犯罪の摘発に監視カメラと人工知能を活用する流れは不可逆な物と言える。
この監視システムと信用スコアが合わさると、社会は非常に住み難い物となるのである。

個人的には、この『信用スコア』に関し、あまり良い印象は持てない。
中国では、個人情報を差し出せばスコアが上がる仕組みになっており、今や、その数値がステイタスとなっている。その結果、結婚など条件にもスコアが問題視されるようになるなど社会のあらゆる場所で用いられている。

やがては、それが『階層』を生み出している。
そして、人々の生活は、そのスコアに縛られる事になるのだ。

例えば、SNS上の交友関係までがスコアに影響する為。有力者に嫌われないよう気を付けたり、良い人で貧困方正な振る舞いが求められる。

私には、便利さと引き換えに、自由を引き渡す、そんな印象しか持てないのだ。