今年、Amazonを打ち負かすかもしれない2つの企業とは?


『アマゾン・エフェクト』という言葉まで生み出し躍進するAmazon。

2018年の小売業界は、まさにAmazonを中心に廻ったと言っても過言では無いと言える。

米国では、すでにEコマース市場の49%を獲得して敵無しとも言われる一方、政治的なリスクは確実に高まりつつある。

トランプ大統領が、FacebookやAmazonという企業を毛嫌いしている事は有名だが、彼への批判を繰り返すワシントン・ポスト紙の実質的オーナーであるジェフ・ベゾス氏には、近年は名指しで反トラスト法をちらつかせる程、その圧力は露骨になりつつある。
このような状況の中、今は大規模な買収など目立った動きは。『虎の尾を踏む』状況に成りかねないのだ。

2019年は、その意味でライバルたちの躍進の年になる可能性がある。
今回は、その中心的役割を担う企業にスポットを当ててみたい。

・Amazonを猛追するウォルマート。

ウォルマートは言わずと知れた世界最大の小売業者だ。

その売り上げは、日本全体の税収に匹敵する50兆円超にも及び、それは、Amazonのそれの5倍の規模を誇る。
その彼らが、明確にAmazonを駆逐する為、ボノボス、Jet.com、モッドクローズ、エロクイなど様々な企業の買収を行いEコマースの強化に努めている。

ウォルマートは、これらネット直販業者を買収する事で、新たな顧客層だけでなく、人材も獲得したのだ。それは、Jwt.com創業者のマーク・ロアー氏であり、ボノボスの創業者であるアンディ・ダン氏の事を指す。
彼らの共通点は、独自にAmazonに対抗する手法を見つけ、それを実践した事だと言えるのである。

これらEコマース業界で躍進する企業の買収と共に、重点を置いたのが、サプライ・チェーンと物流だ。

ウォルマートの最大の強みは、全国には張り巡らされた店舗網だ。全米で5352店舗にも及ぶ店舗網は、全米の人口の90%が、自宅から10マイル(約16㎞)圏内に収まってしまう。
これだけは、Amazonが、どれだけ頑張っても真似する事は出来ないアドバンテージだと言える。この物流網を如何に効率的に運営するかが、戦いの勝敗を決すると言っても過言では無い。
この既存の店舗を商品を備蓄する『倉庫』として活用する事で、敏速な配送が可能になるのだ。

・フリップカート買収で先手を取ったウォルマート。

上記のように自社が劣っている部分を強化すると共に、『先手』の一手も着実に打っている。
それが、インドのEコマース市場でトップの地位を築いていた『フリップカート』の買収だ。
これについては、以前の記事で詳しく特集しているので詳細は割愛するが、現在の市場規模は小さいものの、世界で最も成長している市場で優位性を築いた事は、まさに『渾身の一手』と言えるのだ。

世界規模で見た場合、このインド市場への進出は大きな転機となる可能性を秘めている。
業界のビックプレイヤーであるAmazonとアリババにとって、自国の市場が飽和状態にある事は確実で、この後の成長を目指す為には外に打って出る他無い。その最重要の市場で、今回の買収は、オセロで言うなら『カド』を押さえる一手なのだ。

インドは、商業インフラが整備されていない為、中国以上にEコマース比率が高くなるポテンシャルを秘めている。勿論、道路事情などを踏まえると物流面などの課題は多いと言えるが、ウォルマートにとって、まさに生命線と言えるのだ。

・プラットフォーマーとなりつつあるインスタカート。

『インスタカート』。
この企業名をご存知の方は、かなり世界の動向に敏感な方だと言えます。
当ブログでは、以前に特集記事を書いておりますので詳細はそちらを確認して頂きたいと思います。

既に76億ドルもの企業価値が存在する同社ですが、急激な成長を続けており、現在では300の企業、1万5000店舗との提携を行っています。事業内容は、いわゆる『買い物代行業』で、ウーバーイーツの生鮮食品版と言えます。
利用者は、スマホから注文を行い、提携スーパーからピックアップされた商品を自宅に届けてくれるサービスを展開している

生鮮スーパーにとっては、自前では出来ないデリバリー事業を代行して行ってくれる力強い味方と言える。
その便利さから、クローガー・コストコと言った大手のスーパーとの提携を繰り返し、今や全米の70%の地域でそのサービスが受けれるまで成長したのだ。

利用者にとって、注文から早ければ1時間以内で配達してくれる同社のサービスは、単なる買い物代行業の枠を外れ、生活の『プラットフォーム』となりつつあるのだ。
生鮮食品の特性として、その賞味期限の短さから商品数を増やすと、どうしてもロスが増えるというジレンマが存在する。
しかし、自社で在庫を持たないインスタカート社は、その事を心配する必要が無いのだ。

また、日常的に購入が必要な生鮮食品を抑える事は、膨大な『ついで買い』が期待できる。つまり、生鮮食品以外の横展開が非常に容易なのだ。それは、Amazonの牙城を脅かす事を意味するのである。

生鮮スーパーがAmazonを利用せず、インスタカート社と提携して自前でシステムを構築するには訳がある。
今やAmazonは、小売業にとって無くてはならない存在になる一方、彼らは、大きな不満を抱えている。それは、顧客情報をAmazonが独占してしまう事だ。
これに関しては、
以前の記事で書いたので、そちらを参照して頂きたいが、インスタカート社は、Amazonと真逆の対応を行っているのだ。

つまり、インスタカート社の場合は提携企業の利用が増えなければ、同社の収益が増えない、というビジネスモデルの為、自社で分析したデータを積極的に提携企業にフィードバックしているのだ。これにより、適切な在庫数や商品ラインナップを効率化する事が出来る為、双方が運命共同体として存在している。

この事は、小売業にとって非常に大きな意味を持つ。
Amazonは自社で情報を独占して、儲かりそうな商品をプライベートブランドとして、自社で販売する。小売業にとって味方だと思っていたAmazonが、突如として商売敵になってしまうのだ。しかし、それが分かっていても、もはやAmazonは無視できないまでに巨大化してしまっているのだ。

インスタカート社の強みは、小売業者とwin-winの関係を築ける点にある。

これは、言わば『嫌われ者』のAmazonと比べ、非常に優位なポイントと言える。、
今や生鮮食品の分野においては、インスタカートは質・量の両面に於いて優位性を確立できている。この巨大市場でAmazonに打ち勝つことが出来れば、自然に横への展開もし易くなる。
まだまだ、創成期とも言える食品EC市場であるが、ポテンシャルに於いては、相当の可能性を秘めていると言えるのである。