今、なぜD2Cなのか。その本質と、SPAとの違いとは?


ここ数年、小売業界ではD2C ( Direct to Consumer )がトレンドになっている。

これは、以前から存在する『中抜き』、つまりサプライチェーンから卸業や店舗さえ無くしコストの低減を狙う、というような捉え方をしてしまうと、その本質を見失ってしまう。結論から言うと、D2Cとは、『徹底した”個”への対応の結果』に他ならないのである。

今回は、このD2Cの本質について見て行きたいと思う。

・変化する消費行動

日本が、バブル経済だった頃は大量消費時代だった。
つまり、テレビや雑誌というメディアが大量の情報を与え、それに沿った大量販売が起こる。みんなが同じ情報を得て、同じものを買う、謂わば非常に分かりやすい時代だったと言える。

しかし、バブル経済が弾けると物が売れない時代へと突入する。
熱気に浮かれていた消費者は、そこで冷静になり、ある事に気付いてしまうのだ。
それは、『メディア』への不信感だ。

ファッション業界などでは分かりやすいが、メディアは次々と流行を作り出す。
去年は、これが流行ると言いながら、翌年にはそれを否定、そして、新たな流行を示す。
つまり、メディアというのは、過去を否定する事で流行を作り出していたという側面があるのだ。この一貫性の欠如こそが問題だった。

その事が、ユーザーの不信感に繋がり、やがて消費者は物を買わなくなってしまう。

・スマホの登場による情報化社会の到来。

この流れを変えたのがインターネット。もっと具体的に言うとスマホの登場だ。

スマホが登場する前のメディアは、『マス』の情報を重視する情報発信から、『個』への対応が重要になってきたのだ。
つまり、消費者はマスメディアの情報より、例えばインスタの自分お気に入りのマイクロインフルエンサーの真似をしたいという人間が増えてきたのだ。

・消費者の多様化により小ロット生産時代へ。

この消費者の趣向の多様化に対応する為、少量多品種生産という時代に突入する。
これにより物作りのスパンが短くなる一方、メーカーにとって悩ましいのは、小ロット故に、コストの上昇を招いてしまう事だ。

通常、商品の原価は高くても3割位だと言われている。
消費者は、倉庫・流通の付帯費用、そして、売れ残り品の廃棄費用までを負担させられる事に疑問を感じ始めたのだ。この消費者の、必要無いコストは払いたくないという意識が、『必要な分だけ作る。』というD2Cの本質に繋がるのだ。

・SPAとD2Cの違いとは?

SPAとは、企画・製造・小売りというサプライチェーンを垂直統合して、自社で全てを行う業態を指す。日本で言えば、『ユニクロ』などが成功例として挙げられる。

従来の小売業の欠点は、間に卸売業を挟む事による消費者情報の遮断であった。
つまり、メーカーには消費者のニーズを汲み取る仕組みが存在しなかったのだ。SPAでは、販売も自社で行う事により、消費者の声を製造・企画の場にフィードバックする事が可能になったのだ。

D2Cでは、この精神をより『濃縮』する事を目指している。

SPAでは、まだ不十分なのだ。
例えば、服のサイズで見てみるとメーカーは全てのサイズを製造する事は不可能だ。その為、一般的なデータから平均値を算出して、それらのサイズのラインナップを在庫する。しかし、忘れてはならないのが、置き去りにされたサイズや体形の消費者が存在するという事なのである。

この考えを突き詰めると、やがて店舗は必要無いというD2Cの考えに行き着くのである。

・なぜEコマース企業はリアル店舗に進出するのか?

ただ、一方に於いてAmazonを含め、D2C企業でさえ最近はリアル店舗への進出が目立って来ている。
勿論、これは小売業界に於いて、まだ大多数の売上がリアル店舗から発生している、と言う現実もあるが、別の理由も存在する。

それは、『情報』の取得に他ならない。

消費者の情報と言う観点で見ると、やはりネットはリアル店舗には敵わない。
『消費者が、何を手に取ったのか?買ったのか?動線は?』
このようなネットでは当たり前に収集していた情報を、リアル店舗は取得してこなかったのだ。
それを、センサーやカメラ、そして人工知能を用いて取得しようとする動きが『Amazon Go』に代表される最近の動きだと言える。

つまり、店舗の役割が『物』を売る場から、『情報』を取得する場へと変わってきてるのだ。

その為、最近では店舗に商品を置かず、試着や顧客の体のサイズを測り、商品は後日郵送するという形態の店舗も増えてきている。アップルストアなどを見れば分かるが、店舗は物を売るのが主体では無く、ショールーム(商品・ブランド理念)としての役割と、データを取得する場へと変化しているのだ。

このような動きを見て行くと、今起こっている事は『原点回帰』だという事が分かる。

そもそも商売の本質は、『人が欲しいものを与える。』というごくシンプルな行動だったはずだ。しかし、やがてスケールを求める様になり、メディアを使い消費者をコントロールするようになった。
その事が、もはや限界に達したのだ。

今は、テクノロジーの発展によりSNSなどで、製造者と消費者が相互に評価し合うシステムが確立した。またメルカリなどの中古品を扱う2次流通が発展した事も大きい。
つまり、良い商品には中古でも高い値段で取引されるという『評価基準』が明確になったのだ。

この『良い商品』を作り出す為に荷は、『情報』が不可欠だと言える。
消費者との間で、どれだけ高品質なコミュニケーションの場が得られるか、が勝敗を分けるのである。その意味で、今起こっているD2Cの流れは必然と言えるのである。