コーヒー市場に見る中国経済の限界。戦略の転換は必至か?

中国の経済は、アリババとテンセントを中心に廻っている、と言うと言い過ぎだろうか?

中国で躍進するスタートアップには、必ずと言って良い程、この両社の資金が入っていると言われている。それは、中国独特の市場環境にある。
彼らの成長スピードは、常軌を逸したレベルに速いのだ。
多くのスタートアップは、採算度外視で莫大な資金を投入する。とにかく初めに市場を押さえる事を最優先する為だ。その為に、無謀とも言える投資を繰り返す必要があるのだが、その莫大な資金の出所が、アリババ、テンセントという訳だ。

この両社の代理戦争とも言える戦いが、今コーヒー業界で加熱している。
それは、業界首位のスターバックスと、それを猛追する2位のラッキンコーヒーの存在だ。ラッキンコーヒーの細かな説明は、以前の記事に書いたので今回は割愛するが、創業1年で2000店舗開設と猛追を見せるラッキンコーヒーと対峙する為にスターバックスが選んだパートナーがアリババだったのだ。

スターバックスの弱点は、スマホ決済と外売(デリバリー)への対応の遅れだった。
中国の飲食業では、今や外売は無くてはならないツールとなっており、多くの企業が導入している。しかし、スターバックスは自らの経営理念である『サード・プレース(第3の場所)』を固辞する事を選んだ。すなわち、家庭でも職場でも無い、第3の場所と言う空間を提供するのがスターバックスの理念なのだ。

しかし、迫りくるライバルに対し遂にスターバックスも外売への対応を余儀なくされる。そのパートナーとして選んだのがアリババの子会社の外売企業『ウーラマ』だったのだ。

それを見たラッキンコーヒーは、直ぐさまテンセントとの提携を発表した。

20年間で3500店舗を開設したスターバックスに対し、1年で2000店、そして、店舗数で今年中にスターバックスを追い抜くというのが、ラッキンコーヒーの戦略だ。
その為、昨年7月に2億ドルもの資金調達を行った同社であるが、その年の12月に、再びBラウンド投資として、2億ドルを調達して世界を驚かせた。企業価値は、一気に22億ドルにまで膨らみ、世界最速でのユニコーン企業となったのだ。

急激な出店攻勢と、無料クーポンを大量にばら撒く販促戦略の為、ラッキンコーヒーの財務状況は、お世辞にも良いとは言えない。既に140億円もの赤字を抱えていると言われているが、それでも出店のペースが緩まる気配が無いのだ。

このような投資戦略を見ていると、シェア・サイクルの『 ofo 』の例を思い出してしまう。中国の新四大発明とも呼ばれるシェア・サイクルのパイオニアで、現在は苦境に陥っている同社については、以前の記事を見て頂きたいが、ofo の経営難に陥った原因も、この無謀とも言える投資だった。

確かに、景気の良い時代には、この手法は有効だろう。ただ、この先には景気の下降局面に突入する可能性が高い。そうなると、今まで通りの資金調達が出来る保証は無いのだ。

実際、中国政府はシャドーバンキングなどの問題の重要性を捉え金融面での規制を強めつつある。これにより、ベンチャーキャピタルは大きな影響を受け、ファンド数では4割減、調達金額に於いては、前年比8割の落ち込みを見せているのだ。

現在、世界に200社前後あると言われる『ユニコーン企業』であるが、その多くが赤字経営だと言える。
中国の例は、少々極端な面は否めないが、基本的な戦略は同じだ。つまりは、まずはシェアを取りに行く、という戦略だ。しかし、それは岐路に差し掛かっているように感じる。その原因は、米中の貿易摩擦であるが、今まで潤沢に存在していた資金がショートする可能性が高いのだ。

もちろん、同様の事はアメリカにも言える。
もはや両国の経済的結びつきは無視出来ないレベルまで高まっている。これは、相手を攻撃しているように見えて、実は、自分を傷つけている行為に等しい。そして、この両国に経済のかなりの部分を依存しているのが日本である。
今、日本の大企業で北米と中国の売上を引いたら、どれだけの数字が残ると言うのか。
両国の争いを、まるで人ごとのように論調するメディアは多いが、本当の意味で、それを理解している人は非常に稀だと言えるのだ。

とにかく、世界経済は確実に転換期に差し掛かっていると言える。その環境の変化に、的確にアジャストして行く事こそが、今求められているのだ。