米国の深刻化する住宅問題。仕事があっても家賃払えず。

サブプライム問題で、全世界を不況の渦に巻き込んだ米国で、また住宅価格が高騰している。
それに伴い問題化しているのが、ホームレス問題である。

ホームレスの割合が最も高いのが、カルフォルニア州、ニューヨーク州、ワシントンDC。ホームレス比率の高い10州の内、8州が全米で最も住宅費の高い地域となっている。

日本でホームレスと言うと、無職や日雇いの仕事をする層を思い浮かべるが、アメリカでは、もう少し身近な存在だと言える。

実に全人口の2/3に当たる世帯が、500ドルの突発的な支出に耐えるだけの貯蓄を持っていないのである。その為、ちょっとした不運に遭遇しただけで、住む所を失う可能性を持っているのだ。

以前の記事、シリコンバレーに住む、年収800万円の住民が住宅を借りられず、クルマで寝泊まりをする現実をお伝えしたが、今や、その流れは、全国の主要都市に広がりつつあるのだ。
実際、今アメリカの殆どの都市では、年収10万ドルでは住宅を購入することさえ出来ないのだ。

上のグラフを見て頂ければ分かるが、米国では戦後、リーマンショック時を除いて住宅価格は、上がり続けている。ある意味、この異常な状態が、金融危機を引き起こしたのであるが、その流れは今も変わっていないのである。

このリーマンショックの反省から、政府は住宅ローンの際の債務者の返済能力などを、より厳重に審査する方向へと転換したのだが、これにより、多くの住宅デベロッパーが、撤退や廃業に追い込まれた。その事で、供給量が減った事も住宅価格の高騰に拍車を掛けている。

また、その他の要因として、地域住民の反対がある。
住宅数が増える事で、自分の持ち家の価値が下がる事を嫌気して、新規着工には反対運動が付きまとい、住宅の最低価格などに関し、業者は配慮しなければならないのだ。

このような現状の中、現在アメリカの最低賃金の時給7.25ドルで働いて、ワンルームの家賃を賄えるのは、12郡(全米3007郡)しかないという現実がある。

この問題を抜本的に解決するには、住宅数を増やす他ないのだが、それは、口で言う程に簡単な事では無い。
例えば、カルフォルニア州を例にとると、人口増に対処するだけで、年間18万戸の住宅を新たに作り続けなければならない。しかも、サンフランシスコでは、ここ7年で雇用が8倍に増え、『手頃な価格のアパート』の建築費が、42万ドルにまで跳ね上がってしまっているのだ。

こう言った町の繁栄は、一見、良い事のように映るが、重大な問題を内包している。特にエリア内の所得格差、人口の流動性、人口構成に与える影響は甚大だ。

実際に、黒人やプエルトルコ系と言った貧困層が居住していた地域に、白人が進出して家賃が高騰、元居た住人が追い出されると言った問題が、全米中で起こっている。それにより、人種・階層間での争いや関係悪化が顕在化しつつあるのだ

今のトランプ現象に見る米国の根幹的な問題は、余りにも拡大し過ぎた『貧富の差』にある。

今回、マイクロソフト社が本社を置くシアトル市近郊で、手頃な価格の住宅を整備する為に540億円の支援を行うと発表した。これ自体は素晴らしい事ではあるが、本来このような施策は、国や自治体の役割の筈だ。

米国では、年金・医療・住宅と言った最低限の生活を保証する分野においても、国家の干渉を嫌う国民性がある。彼らが、本当の意味で問題を認識しているかは疑問を感じずには居られないが、個人的には、アメリカ式の資本主義は、既に限界を迎えている様に思えてならない。

テクノロジーの進化に伴い、経済だけでなく、政治の世界も変わって行かなくてはならない。今の世界は、社会的弱者の声を政治に反映する事を、益々難しくしているのだ。民主主義は素晴らしい制度だが、常に進化していかなければならない。現代のテクノロジーは、その進化の一助となっているのか、考える必要があるのだ。