過去3番目の低さとなる米国貯蓄率。景気悪化に警告信号発令。

 

国境の壁建設を巡り機能不全となった米国政治が、政府機関の閉鎖を招いている。
それにより、多くの公務員がその日の食事にも困るようになり、多くの職員が食糧配給に殺到する事態になった。

しかし、日本人から見ると、この光景は奇異に映る事は間違いない。
仮に日本で同じことが起こったとしても安定した所得のある公務員が、食糧配給の列に並ぶことなど有り得ないのだ。

今、米国経済は記録的な失業率の低さにも関わらず、危機に瀕している。
それは、貯蓄率の低下だ。実際、2018年は統計開始以来3番目に低い貯蓄率を記録したのだ。

貯蓄の低下が表すもの。それは、借金の増加に他ならない。
実に米国民の2/3が、たった500ドルの突発的な支出に耐えられない、というのが現実なのだ。そんなギリギリの生活の彼らに、今インフレの危機が迫っている。
それは、米中貿易摩擦による、中国製品への関税率の増加だ。

経済のグローバル化が進み、各国の経済は複雑に絡み合ったサプライチェーンを形成している。既に両国にとってお互いの市場は無くてはならない物となってしまっているのだ。
言うまでも無く、これはサプライチェーンを『最適化』した結果であり、その変更が招くものは『コスト増』だという事は、経済の素人でも理解出来る事だ。

先にも述べた通り、可処分所得の内、貯蓄に廻る割合が過去3番目に低い2.5%にまで急激に低下している。この事は、現在の景気が預金の切り崩しや、債務の増大によって支えられている事の証明だと言えるのだ。

 関税による商品価格高騰により、インフレ率と借入コストが上昇する中、トランプ大統領による減税処置の効果は、薄れつつある。
このような状況下で、ガソリン価格の高騰や、更なるインフレが進めば最も脆弱な層が、危機的な状態へと転落する危険性があると、一部のエコノミストが警告しているのだ。

米中の貿易摩擦は、確実に両国の経済を不況の渦に巻き込もうとしている。
これは、明らかな『チキンレース』だと言える。

おまけに、この摩擦が、不毛な競争と言われる所以は、お互いの経済が想像以上に深く結びついている点にある。つまり、お互いを攻撃しているように見えて、実はわが身を傷つける事に等しい行為だという事だ。

伸び続ける経済指標とは裏腹に、米国は確実に貧しくなっている。
膨大に生み出される富は、一部の限られた層にだけ降り注ぎ、末端には届かないのだ。
この現象が、社会主義を標榜する中国と、資本主義の権化とも言える米国で、共通して起こっている事は非常に興味深いが、この階層間に出来た巨大な壁の存在は、国民から夢を奪い、社会不安を巻き起こすのだ。

世界経済は、景気後退の方向に確実に進み出してきている。
人々が、返済できない債務に頼った生活を続ける以上、そこに出口を見出す事は出来ない。個人の債務が証券化される現代では、金融不安は、あっという間に世界に波及してしまう。
私達は今、景気の後退に備えないといけない時期に来ていると言えるのだ。