『 b8ta(ベータ)』に見る。なぜ今、売らない店舗が必要なのか?

シリコンバレー出身の3人の男性によって設立されたb8ta(ベータ)が、今、注目を浴びている。現在、全米に13店舗を構える同社の店舗の特異な点は、『売る』という行為を目的としていない事にある。

ベータの店内に展示されている商品は、iPhoneに直接取り付けるカメラから、電動キックボード、そして、化粧品まで多義に渡る。
一見、何の関連も無さそうな商品群であるが、唯一の共通点は、それらがスタートアップのベンチャー企業によって開発された商品だという点にある。

そのようなスタートアップ企業にとっての悩みは、製品を開発しても、それが顧客の目に触れる機会を得られない点にある。なぜなら、多くの企業がネット中心の販売に頼らなくてはならないからだ。
しかし、新しい製品という物は、利用者の目に触れ実際に操作して、その意見をフィードバックして貰う事で製品改良を行い進化して行く。

その『実験』の場を提供するのが、ベータの役割なのだ。

店内には、常時100種類以上の製品が展示されており、利用者は、自由に手に取って試す事が出来る。製品の概要は、隣に置かれたタブレットで商品説明が見られる他、常勤する製品を熟知したスタッフから、説明を受ける事が出来るのだ。

利用者は、気に入った商品があれば、その場で購入する事も可能になっている。

この店舗のビジネスモデルの興味深い点は、売る事を目的としていない点にある。
確かに、そのような形態の店舗は、アップルストアのように、以前から存在した。
しかし、ベータの場合、例え商品が売れたとしても、店の収益にはならない。全ての売上が、出品企業に還元されるシステムになっているのだ。

では、彼らは何処で収益化しているのか?
彼らが売る物は、『情報』なのだ。

ベータは、一見どこにでもあるオシャレな店舗という印象だが、実は天井や壁に、膨大な数のセンサーとカメラが取り付けられている。
顧客が店内に入店すると、それらの機器が、顧客の一挙手一投足を記録するのだ。

それにより、顧客が、どの商品の前で立ち止まり、何を触って、何に興味を示したか?と言った情報を取得して、出品企業にフィードバックしている。また、常勤しているスタッフへの質問なども、活字化されて送られる仕組みだ。

ネット全盛の時代にあって、AmazonなどのEコマース企業が実店舗の運営に乗り出す理由の1つは、実はここにあるのだ。

確かに、オムニチャネルの時代において、『配送拠点』としての実店舗の存在は重要であるが、忘れてはならない点は、まだ小売り業態の80%以上の売上は、実店舗から発生していると言う事である。

小売りの実店舗では、人が介在する以上、多くの情報が集まる。

顧客が、店員に何を質問し、どう言った導線で動き、何に興味を持って、何を買ったのか?
このような、ネットの世界では20年以上前から、当たり前に取得していた情報を、実店舗では取ってこなかったのだ。だから、Eコマースでは、パーソライズされた広告をメールしていたのに対し、実店舗には、その情報が無い為に『チラシ』と言う画一化された広告しか、発信する事が出来なかった。

しかし今は、カメラやセンサーと言ったテクノロジーの進化によって、そう言った情報が取得出来るようになって来たのだ。この情報をネットからのそれと合わせる事で、企業はより的確なマーケティングが可能になってきていると言える。

買い物と言う体験は、今後明確に二極化が進行する。
それは、日用品などの『補充』の買い物と、ワクワク感や、楽しみを伴う買い物体験である。
前者は効率性を求めるネット通販が伸び、後者は、体験を伴う実店舗が強みを発揮する。その際に重要なのが、顧客情報に裏打ちされたパーソライズされた接客なのだ。

各企業は、これから、その顧客情報を如何に収集するか、その事にテクノロジーを活用すると言う視点が必要なのだ。