破綻は不可避!? 86兆円もの負債を抱える中国高速鉄道。

中国の高速鉄道網は、世界に類を見ない程広がっている。
その総距離は実に2万9000㎞にも及ぶのだ。この数字は勿論、世界2位のスペインの3100㎞を大きく引き離している。

このような状況の中、中国鉄路総公司(元中国鉄道部)は、2019年、更に6800㎞を拡張しようとしている。

この中国版新幹線の最大の問題点は、その採算性にある。
タイトルにあるように、既に86兆円もの負債を抱え、利子すらまともに払えない状況に陥っているのだ。

10年前の世界金融危機以降、急速に進んだ同事業であるが、大都市圏を除いて採算性の取れていない路線が数多く存在する。中国初の長距離高速鉄道は、2009年に杭州と武漢の間で開通した。全長1100㎞にも及ぶ距離を、僅か3時間で移動出来る交通システムは、中国近代化の象徴として多くの話題を呼んだのだ。

中国高速鉄道は、その後も続々と建設され、今や距離では、世界の高速鉄道の2/3を占めるまでに成長した。

しかし、利用者の多い北京~上海間・北京~広州間を除いては、他の区間の輸送量が非常に少ない為、膨大な損失を被っているのが現実だ。
例えば、蘭州市と新疆ウイグル自治区のウルムチを結ぶ路線では、1日に160回以上往復出来る輸送能力に対し、4往復しか運航していない。これでは、電気代さえも賄えない状態が続いているのだ。

そもそも、高速鉄道の運行距離は300~500㎞が理想とされている。
それより少ないと自動車が有利になり、長くなると飛行機が有利になる。
その為、1000㎞を超える中国高速鉄道の路線は、非常に非効率と言えるのだ。

実際のところ、一番採算性が良いとされる北京~上海間でさえ、3兆5600億円の資産を基に、年間1600億円の収益しか上げていない。収益率は5%にも達しておらず、これでは金利さえ賄えないのだ。
結局のところ、高速鉄道事業は中央政府の補助金と新しい融資がなければ、立ち行かない状況に陥ってしまっている。

通常、このような企業に融資をする金融機関は存在しない。

しかし、主要な産業セクターに国有企業が存在する中国では、中央政府の政策として国有銀行が潤沢な資金を供給する。
比較的上手く行っている民間企業に対して、中国が抱える最大の問題は、この国有企業の存在だ。本来であれば、倒産を余儀なくされる『ゾンビ企業』が、非効率な資金注入により生き永らえているのだ。

この事は、必ず中国経済に深い傷を残す事になる。
更に悪い事に、習近平政権は彼らの管理を強める方向性を示しただけでなく、株式取得により民間企業への影響力も強めようとしている。

『上に政策有れば、下に対策有り。』
中国人は、常に”お上”の政策の穴を見つけ、それを掻いくぐる事で生き抜いて来ました。
その意味で、中国の民間企業は、如何に政府との距離感を最適化するかという重要な舵取りを求められています。
それを誤ると、例えテンセントのような大企業でも、今回のように大きな痛手を被る事になるのです。

進行する国有企業の負債問題は、謂わば中国のアキレス腱と言えます。
共産主義政権と資本主義経済。この相反する2つの制度の中で発展してきた中国ですが、その矛盾が無視出来ない程、大きくなりつつあるのです。

中国がこの先、さらに成長を勝ち取りたいなら、この問題は早急に解決する必要があります。但し、その事は共産党自身の自己否定につながる危険性をはらんでいるのです。この局面を如何に打開して行くか、私達は注意深く見守る必要があるのです。