米国型資本主義に、果たして持続可能性はあるのか?

何か米国が変わりつつある。
明確にそう感じ始めたのは、2000年頃。
丁度、ブッシュJrが大統領に就任した辺りからだ。重要ポストにはウォール街出身の閣僚が多く就任するようになり、富裕層重視の税制改正や、金融の規制緩和が続けざまに進行して行った。

その行き過ぎた政策のアンチテーゼとして登場したオバマ大統領は、国民皆保険の導入や様々な労働者向け政策を行うも、十分な結果を残す事は叶わなかった。

その結果として生み出されたのが、中産階級の崩壊だ。
今や米国は、5%の富裕層と、95%の貧困層という事態に直面しつつある。

現在、米国では国民の2/3が、突発的な5万円の支出に耐えられるだけの貯蓄を持っていない。
その上、国民の15%は健康保険にすら加入していないのだ。

高騰する医療費が問題化する米国では、ちょっとした歯の治療でさえ20万円程の請求が当たり前となっている。それは、日本や欧州のように医療費を国が決めるのではなく、医者自身に決定権がある為だ。
その為、米国では自己破産の原因の6割が医療費となっている。

これに対し、医者を攻める事は簡単だが、問題の根底には教育のビジネス化がある。
少し古いデータになるが、2012年の米国の大学の学費を示したデータを見て見ると、私立大学の1年間の学費の平均値は以下の通りとなる。

・4年制大学……2万4,525ドル(約269万7,750円)
・2年制大学……1万4,129ドル(約155万4,200円)

価格的に言うと、日本のおよそ2.5倍の金額と言えるが、これは有名大学になればなる程、価格は高騰する傾向にあるのだ。

・シカゴ大学……4万5,609ドル(約501万6,990円)
・ハーバード大学……4万866ドル(約449万5,260円)
・マサチューセッツ工科大学……4万2,050ドル(約442万7,500円)
・スタンフォード大学……4万1,787ドル(約459万6,570円)

 このクラスになると、通常の大学と比べ4~5倍の学費が必要になる。これらは、あくまで普通学科の話であって医学部となると、日本同様さらに学費は高騰するのだ。

しかし、歴史的に見ると20年前までは米国の学費は、日本と大差がなかった。
近年になって、その額は急上昇しており現在も続いている。それは、過熱する大学間の競争により、有名教授の人件費が上がった事もあるが、高額でも学生が集まってしまう現実が、そうさしているのだ。

この高額な学費と生活費を殆どの学生は奨学金で賄っている。

日本で奨学金と言うと、あまり利子も付かずボランティアに近い印象を持つが、実際に米国では3~5%の金利が付く。おまけにこれは、米国連邦からの借り入れの為、例え自己破産したとしても、返済義務は無くならないのだ。

日本のマイホーム購入の為の住宅ローン金利が1%前後である事を考えると、この金利負担は甚大だ。殆どの場合、借入額の数倍の額を実質返済に回さないといけないのだ。
この為、米国では多くの学生が『借金漬け』の状態で大学を卒業して行く事になる。

この事は、住宅ローンに相当する金額を毎月返済しながら、さらに住むアパートの家賃を払い、その中から生活費を捻出しなくてはならない、という事を意味する。
仮に日本の新入社員が、このような生活に陥った場合、果たして生活を維持して行けるだろうか?

このような環境では、どうしても拝金的な社会に成らざる負えないのだ。
そして、仮に失業しようものなら住む所は勿論、何もかも失って借金だけが残ると言う恐怖感が常に付き纏う。

さらに、米国ではリーマンショックの一時期を除き、住宅価格は上がり続けている。購入する住宅のローンや月々の家賃も馬鹿に出来ないのだ。

人間は、『絶望』を感じた時に自暴自棄になる。
自分が不幸だから、他人もそこに引きずり込もうとするのだ。米国で頻発する銃乱射事件や多くの犯罪は、そこに起因する。
米国の場合、その『絶望』が遥かに身近にある事が問題なのだ。

今や米国は政治の社会にもビジネスが浸透している。
ヘッジファンドや巨大IT企業から依頼を受けたロビーストは、莫大な資金をばらまき、自らに有利な制度や税制を作り出した。
それらの制度は、社会に階級を作り出し、自力では最早乗り越える事が出来ない壁を造ってしまう。

結局のところ、米国は『資本の論理』で民主主義そのものを歪めてしまった。

そのことで、本来、政治的思想において対極にある筈の中国と同じような問題を共有すると言う、おかしな状況に陥っている。
『自由の国』と言われて久しい米国だが、そこに本当に自由はあるのだろうか?、そう思わずにはいられないのである。