問われるプライバシーと利便性の境界線。デジタル資本主義の未来は?

個人情報が『21世紀の石油』と形容される中、その規制を求める動きが世界中で広がっている。
欧州連合による、一般データ保護規則、通称GDPRは、そんな流れの先駆けとして個人情報保護の下で議論が進んでいるのだ。

GAFAに代表される巨大IT企業は、個人情報の収集と引き換えに、高品質なサービスを無料で提供するビジネスモデルを確立した。そして、その先の人工知能の活用でも、先陣を務めている最中、EUは、これらプラットフォームへの監視の目を強めようとしている。

5月に施行されるGDPRでは、EU市民の個人データを勝手にEU域外に持ち出す事を禁止するなど、厳しい規制の網を敷いている。そして、それに違反した場合には、莫大な課徴金を課す事を定めているのだ。

GDPRなどの規制の背景には、産業のパラダイム・シフトがある。
それは、労働力を付加価値に変換する旧体制から、『情報』から価値を生み出す産業への転換だ。

例えば、現在世界中で急速な発展を遂げているライドシェアであるが、このビジネスの本質は、利用者と自動車の位置情報をリアルタイムでマッチングする事で対価を得る。つまり、収益の源泉は『データのマッチング』と言えるのだ。

このような個人情報の利用は、人々の生活を豊かにする一方、その使用や取扱いを間違えると、プライバシーを侵害する事になる。そこに対し、明確な線引きをしようとするのが、GDPRの理念でもある。

この欧州から始まった流れは世界中に波及し、直近ではブラジルでGDPRが採択され、インドでも個人情報保護法案が年内にも成立する模様だ。そして、我が国日本でも巨大プラットフォーマー規制強化に向けた基本原則を発表。専門の監督組織を設ける事になりそうだ。

ただ、一口に規制と言っても簡単ではない。
過度な規制強化は、生活の利便性向上や、イノベーションを阻害してしまう為だ。これには、当然であるが賛否両論が存在し、その制度設計は難航が予想される。

その原因はプラットフォーマー、特に海外大手の力が、余りにも巨大だからだ。
GAFA4社の時価総額は、2兆5000億ドルにも及び、これは世界第5位の経済大国である英国の国内総生産に匹敵する。その上、これらの企業は、現在でもM&Aを繰り返し巨大化し支配力を高めているのだ。

そして、更に各国の危機感を強めているのが、中国の存在だ。

現在中国は、国を挙げて人工知能への開発を強めており、既にある分野に於いては、世界のトップレベルにある。それは、人工知能の開発に不可欠なビックデータに関し、そのアクセスが比較的容易な事も原因の1つと言える。
欧米と比べ、プライバシー意識が希薄な中国は、便利さの為にプライバシーが制限される事を許容する傾向がある。その上、全体主義的な国家制度が、それを助長しているのだ。

この事は、人工知能技術の発展に関し非常に有利な環境を作り出している。
手枷足枷を付けられたGAFAと、自由に情報にアクセスできるBATを代表する中国企業では、その開発スピードに大幅な差が生まれる事は明確だからだ

人工知能を制した者が、世界を制する。

今や、そんな時代が到来しようとしている。
人工知能は、私達の生活を各段に便利にしてくれる反面、故ホーキング博士や、イーロンマスク、ビル・ゲイツなど、様々な人間が、その危険性に関し警告を発している。擁護派、警告派が存在し様々な意見が飛び交うのは、人工知能の不確実性の存在だ。

人類は、初めてシンギュラリティという人類の英知を超えた物を経験しようとしている。その中で、果たしてそれを人間がコントロール出来るのか、それは誰にも分からないのである。

私自身は、どちらか言えば肯定派ではあるが、不安が無いと言ったら嘘になる。
実際に、昔『アルファ碁』という人工知能が、韓国のチェスの世界チャンピオンを打ち負かした事件があったが、その開発者が、『実は、なぜアルファ碁が強くなっているのか、私には分からないのです。』と言ったのを聞いて、ゾッとした感覚を覚えたのも事実だからだ。

が恐れるのは、この米中の開発競争が、米ソ冷戦時代の核開発競争のように進展する未来だ。

核問題が、危ういバランスを保ちながらも歯止めが掛けられているのは、人間がコントロール出来ているからだ。そのコントロールが外れた時、果たしてどのような状況が訪れるのか、結局のところ私達には、想像すら出来ないと言わざる負えないのである。