米国貿易赤字が過去最高更新。トランプ政権により11兆円拡大の誤算。

2018年の米国貿易赤字が6210億ドル(69.4兆円)にも及ぶことが分かった。
この数字は過去10年で最大で、トランプ大統領の政策が裏目にでた形だ。

貿易赤字解消を政策の目玉とするトランプ大統領であるが、実は彼の就任以降、貿易赤字は1000億ドル(11兆円)もの急激な拡大を見せている。
その原因は、減税により輸入需要が高まった事と、ドル高と報復関税が輸出への重しとなった点が挙げられる。

つまり、中国や欧州と言った国々からの輸入品に関し、関税を上げた事が相手国の報復関税を招き、結果的に輸出の妨げとなってしまったのだ。その為、減税による景気上昇で輸入は増加した一方、輸出が減少するという皮肉な結果となってしまった。

国・地域別で見ると、対中国の赤字額は4192億ドル(46兆8600億円)、対メキシコで815億ドル(9兆1100億円)、対欧州で1693億ドル(18兆9200億円)と、それぞれ増加した模様だ。

・貿易収支が悪化し続ける米国経済。

米国は、GDPの7割を消費が占める(日本6割、中国4割)消費大国だ。

人々は、所得額に関わらずクレジットカードで消費を行い、支払いを先延ばしにする傾向がある。このような旺盛な消費が、米国経済の成長を支えているとも言えるが、物を作らなくなった米国は、結果的に海外からの輸入により、そのシステムを支えていると言う側面があるのだ。

そんな米国経済も、70年代辺りまでは貿易黒字を維持していた。
しかし、その頃から日本や中国が比較的低コストな商品を製造するようになると、その煽りで赤字へと転落、その額は年々増加して行くことになる。

ただ、国が豊かになると消費が増えるのは、ある意味当然な事で、豊さゆえの現象とも言えるのだ。

・巨額の経常赤字を繰り返す米国が、なぜ存続できるのか?

そうは言っても、米国の貿易赤字は、あまりにも巨額で限度を超えていると言える。
通常、毎年50兆円以上の自国通貨が国外に流出した場合、その国は間違いなく破綻しする。

なぜなら、その流出した50兆円を得た海外企業は、社員の給料の支払いや事業活動の為に、その50兆円を自国通貨に変更する必要がある。
即ちドルを売却して、自国通貨を買う、という行動を起こす訳だ。ドルが売られ続けると、当然その価値は減少し続けて通貨危機が発生。ハイパーインフレとなり、やがて経済は破綻する。

では、なぜアメリカは通貨危機に陥らないのか、それは、ドルが基軸通貨だからだ。

現在、多くの世界貿易に於いては米ドル決済が行われている。
その為、事業者は全ての米ドルを売却するのではなく、決済用にドルを持っておく必要があるのだ。この事が、米ドルの過剰な売却を防ぎ通貨の安定に一役買っている訳です。

つまり、米ドルは基軸通貨だから存続出来ている。裏を返せば、米国が基軸通貨の地位を失った時、大量の米ドルが売られ経済に大打撃を与えるのは間違いない。米国としては、この基軸通貨という地位は、何が有っても手放せないものなのだ。
その為、米国は歴史的に見ても自国の存在を脅かす経済大国の存在を許さない。

それは、日本が台頭しようとした時の米国の反応を見れば明らかで、結局は為替ルールを根底から覆すという荒業で、その地位を守ったのでした。

さて、現在そんな米国に新たな敵が現れました。それが中国です。

現在行われているファーウェイ問題を代表する米中貿易摩擦の根底には、この問題が存在します。
その為、アリババの創業者であるジャック・マー氏は、この問題は一過性では無く、数十年続く筈だと断言しているのです。

米国にとって貿易摩擦の減少は可及的問題ではありますが、本質的な目的は、中国が経済力に於いて自国を抜き去る事を阻止する事に有ります。なぜなら、それは米ドルが基軸通貨の地位を失う事を意味するからです。

基軸通貨の地位とは、超大国だけに許された優遇的地位と言えます。先に述べたように米国経済は最早、それを前提とした経済システムとなっているのです。

今回の米中摩擦は、この視点を持って見ない事には、本質を見失ってしまいます。
ファーウェイ問題などは、あくまで局所的問題であり、それが解決したからと言って問題が無くなる訳では無い。安全保障とは、謂わば『魔法の言葉』だ。米国を脅かす全ての物が、この一語で済んでしまいナショナリズムを喚起する。

その為、問題の長期化は避けられないと言える。
その過程で、過去アメリカが、ブレトンウッズ体制を崩壊させたようなドラスティックなアクションを起こしてくるような事も十分に考えられます。そして、こと中国問題に関しては、仮に政権が変わっても、大きく変更される事はありません。

当然、これは日本にも無関係では無く、多大な影響を受けるものと思われます。我々に出来る事は、この過程を注意深く見守り、それに対応して行く事です。この先10年は、中国だけで無く、インド、東南アジアと、経済の中心が欧米からアジアに移行すると思われます。その事により、様々な摩擦が生じ、世界情勢の大変化が見込まれます。それにアジャストして行く事こそ、日本がなにより最優先すべき事だと言えるのです。