パナソニックが存続の危機!? CATLがドイツで新工場建設へ。

中国にある世界最大手の車載電池メーカーである寧徳時代新能源科技(CATL)が、遅くても2026年までに100ギガワット時(GW/h)規模の工場をドイツに建設すると発表した。
これは、2017年に同社が年間12GW/hを製造し、世界一電池メーカーの地位を手に入れた事を考えると、大幅な生産能力の増強を意味しており、業界を驚かせている。

現在、世界最大の電池工場は米国テスラ社と日本のパナソニックが共同で運営する『ギガ・ファクトリー』だ。

同工場は、車載バッテリーとテスラの車両工場が併設された形態を取っており、現在一部はまだ建設中だ。2016年に同工場が正式稼働した際は、建物の30%しか建設していないにも関わらず、全世界の60%の生産量を誇っていた。

敷地面積が17万6500㎡にも及ぶ同工場は、現在、世界最大の建造物と言われている。
しかし、その工場でさえ年間35GW/hの生産量に過ぎない。今回CALTが発表した100GW/hからすると、半分以下の生産能力しか無いのだ。

そう考えると、今回の計画の壮大さが見えて来る。
そして、もう1つ気になるのが、なぜ工場建設が中国本土では無くて、ドイツなのか?という問題だ。

ドイツは、謂わずと知れた自動車大国だ。
国内には現在、生産台数で世界一であるフォルクスワーゲン・グループやBMW、ダイムラーと言った世界的ブランドが多数存在する。

現在、ドイツで車載電池を製造しているのは、LG化学とサムソンSDIの韓国2社に留まる。
テスラや日産と言ったEV化を積極的に推し進めるメーカーに対し、正直、ドイツメーカーは、それ程熱心とは言えない。ただ、中国市場で戦っていくならEV車のラインナップが必要な為、その対応を迫られているに過ぎないのだ。

ドイツメーカーが、EV車の生産に消極的なのは、その特性にある。
ドイツには、アウトバーンという高速道路が存在する。ここでは、現在でも一部の区間では制限速度が存在しない。ドイツが、現在の自動車大国として君臨できたのは、この過酷な環境に拠るものと言っても過言では無い。

実はEV車の欠点は、この高速域にある。
高い速度帯で走行すると、急激に電力を消耗してしまう特性があるのだ。そして、此処で問題になってくるのが充電時間だ。電池が無くなる度に、数時間の充電を要していては、商品にならない。アウトバーンを走れない車は、欧州では売れないのだ。

ドイツの自動車メーカーにとって、一番必要なのは、この問題を解決してくれる電池メーカーの存在だ。

BMWは、すでにCATLとの提携を発表しているが、ダイムラー社も秘密裏に交渉を行っている事が、昨年に現地紙により報道された。今回、CATL社がドイツに工場建設を決めた事は、ダイムラー社との交渉に進展があったからという可能性も否定出来ないのだ。

中国は、電池製造に必要なニッケルやコバルトと言った鉱物資源を有するアフリカ諸国を、自らの経済圏に巻き込み、強力なサプライチェーンを確立している。世界中の自動車メーカーにとってCATLは、もはや無視出来ない存在になりつつあるのだ。

CATL社が、中国とドイツという2か国を抑えるとなると、危機に瀕するのが日本のパナソニックだ。同社は、既に車載電池部門にかなりの投資を行っており、もう後戻りできない場所に居る。

そして、ここにきて最近ブルームバーグにより、テスラ社が現在中国に建設中の上海の新工場において、CATLの電池の供給を受ける為の協議を始めたとの報道が行われた。これは、自社で作る電池とCATL製品を併用する考えを示すものだが、マスク氏の意思なのか、中国政府から何かしらの圧力があったのかは定かでは無い。

ただマスク氏にしてみれば、主要部品である車載電池は現地で調達したいと思うのが当然だ。今の米中関係を見る限り米国からの輸入に頼るのは危険だからだ。
一方、パナソニック側は、早々に中国に現地工場は設けずに、米国からの輸出で対応する方向で、テスラと協議すると発表しており、マスク氏との間で意見の相違が存在する。

且つて、シャープが液晶事業の低迷で身売りにまで追い込まれた事は、まだ記憶に新しい。
特に電池のような汎用性の高い製品は、『スケール』を取れないと、かなり厳しい戦いを強いられるようになる。今回、CATL社が発表した100GW/h規模の工場が、正式に稼働した場合、パナソニックがコスト面で大きな問題を抱える事は、ほぼ確実と言える。それにより、大幅な単価の差が出来た時に、テスラ社がパナソニックを見捨てないと言う保証は無いのだ。

パナソニックは。今後非常に難しい舵取りを迫られる。
つまりは、進むか、戻るかだ。

ただ確実に言える事は、車載電池は将来、液晶テレビ同様に必ずコモディティ化する。そうなれば、壮絶な価格競争に巻き込まれてしまうのだ。

現在のパナソニックの戦略は、進むのでもなく、引くでも無い、謂わば非常に中途半端なものだ。勿論、イーロン・マスク氏の『大風呂敷』に散々振り回された過去も影響しているかとは思うが、完全に経営陣が決めかねていると言える。

今、このタイミングで経営陣が決断しなくてはならないのは、テスラ社と一緒に中国へ進出するか、それとも退却か?という事だ。

この判断を先延ばししても、同社にとって良い事は1つも無い。
確実に言える事は、この中途半端な状況を打破しなければ、近い将来に必ず会社の存続に関わる問題に発展する。今がまさに正念場と言えるのだ。