Uberが来月にもIPOを申請 !? 同社が抱えるジレンマと未来。

ロイターの報道によると、米ライドシェア大手のUberが、来月4月にもIPOを申請する可能性があると報じた。昨年同じく同業のLyftが上場の発表を行ったが、相次ぐライドシェアのIPO申請にスポットを当てて見たい。

先月Uberは、2018年第四半期の決算の発表を行った。
そこでの数値を見て行くと、売上30億ドルに対し、損失8億6500億ドルという物で、優遇税制を差し引くと実質的には12億ドルという巨額の損失を計上した事になる。年間ベースで見ると、2018年の損失は18億ドルとなり、2017年の22億ドルの損失から若干改善した形だ。

同じく同業のLyftの決算を見て見ると、売上22億ドルに対し、損失が10億ドルを計上しており、黒字化の目途は立っていない。

このような問題は、米国だけでなく中国の滴々出行(DiDi)など、大手ライドシェア企業は、軒並み1000億円以上の損失を計上している。

そして、その損失の要因として挙げられるのが、ドライバーの確保だ。
既にコモディティ化したライドシェアでは、ドライバーの争奪戦が繰り広げられている。ドライバー達は、少しでも有利な条件を求めて企業間を彷徨い出したのだ。その為、事業者達はボーナスや特典を付与する事で、ドライバーを繋ぎ止めようとするが、結果的に大きな損失を生む事になった。

さて、ライドシェア業界で絶大な影響力を持つソフトバンクGであるが、元来、孫正義氏の投資戦略は、『上場を遅らせる』事にある。

上場によるリターンを目的にした投資で、それを遅らせるというのは一見辻褄が合わないように聞こえるが、彼の本意はこうだ。
つまり、ベンチャー企業は成長の過程で大きな資金負担の山を超えなくてはならない。しかし、融資や債券で得られる資金は、ほんの一部で、最終的には上場により巨額の資金を調達する事が求められるのだ。しかし、ベンチャー経営者にとって、上場は必須であるにも関わらず、経営的にはステークホルダーの増加により経営に横やりが入り、時には自らの更送にさえ繋がりかねない。謂わば、諸刃の剣なのだ。

孫正義氏の狙いは、そんな経営者に資金を融通する事で、その成長戦略を吟味する十分な時間を与える事にある。それは、彼の口癖である『THINK BIGGER(大きく考えろ!!)』という言葉に集約されるよう、企業価値を最大化してからの上場を求めていると言える。この投資先を無理に上場させない、という事が彼の投資戦略のユニークな点なのだ。

この視点で今回のUberのIPOを見て行くと、少し疑問が残る。
それは、事業自体の黒字化が見えず、尚且つ株式市場自体も決して地合いが良くない状況でのIPO申請だからだ。

結論から言うと、ソフトバンクGは毎年数千億円単位で垂れ流される損失に耐えられなくなっている、という事だ。

そもそも、ライドシェア事業は自動運転を前提としたビジネスモデルだ。
それは、現状を見れば分かるように、車を人間が運転していてはコスト割れを起こし儲からないのだ。しかし、目前と言われていた自動運転技術の確立には、最近になって悲観的な意見が大勢を占めるようになってきた。この事は、ライドシェア事業への同社の方針を揺るがせた可能性があるのだ。

今回UberのIPO申請決定の過程では、筆頭株主のソフトバンクGの意向があった事は、ほぼ確実だ。それは、なかなか進まない技術開発に対し、無尽蔵に膨らみ続けた投資への危機感の表れに他ならない。

今回のIPOは、ライドシェア市場にとってブレーキが踏まれた事を意味するのかもしれない。これは、勿論ソフトバンクが離れてしまうという事は意味しないが、一定の距離を置く事に繋がるかもしれない。つまりは、事業化が達成する前に資金が尽きてしまっては意味が無いのだ。

そこで、孫氏は自社の影響力を減らす一方で、トヨタなど多くの企業を巻き込んで広く浅く投資を募る方針への変更を余儀なくされた、とも取れるのである。

まだまだ紆余曲折ありそうな自動運転技術であるが、最後の壁が思った以上に高かった事は、最近の関係者の言葉を聞く限り明らかなようだ。
そして、同時に思う事は孫正義氏の投資への抜け目の無さだ。

彼は、激情型の経営者というイメージがあるが、あるところでは非常に冷静な面も持ち合わせている。物事に猛進しつつも、きちんと逃げ道は用意しているのだ。投資は実行は容易いが、エグジット(投資回収)のタイミングを計るのは非常に難しい。それは、人間の『欲』が邪魔するからだ。
エヌビディアへの投資の件でも、彼は絶妙な舵取りを見せたが、常人では計り知れない面が多く存在する事も確かなのである。