現在、西側諸国の枠組みは崩壊寸前にある。
それを加速させているのは米国を中心とした『自国第一主義』という右翼思想だ。
そんな中、それを断ち切る指導者は存在しない。
唯一期待出来るのはドイツのメルケル首相だが、彼女は既に退任が決まっている。フランスのマクロン大統領は、指導的立場には少し小粒と言えるし、何より国内で活性化しつつある『黄色いベスト運動』により、それどころでは無いという状況だ。
そんな中、ナショナリズムという病は、確実に世界中に伝染しつつある。
そして、その根底には行き過ぎた資本の原理により生まれた貧富の差による、国民の不満だと言えるのだ。
トランプ氏が自身で『ディール』と言う外交手段は、単なる『チキンレース』に過ぎない。
断崖絶壁に向けてアクセルを踏み込む彼は、自分が運転が上手いと思い込み、同乗者が次々と車から飛び降りて行くのに気付かないでいる。この事は、米国の『終わりの始まり』を意味するかもしれないし、運よく崖の手前で止まるかもしれない。しかし、一番の不幸は賢明な政治家の不在だと言えるのだ。
世界は確実に悪い方向へと進んでいる。
物事はもっと単純な筈だ。世界経済の発展には自由貿易が不可欠な事は、既に実証されているのだ。
そして、何より大切なのはルールの『公平性』だ。
米国では、GAFAに代表される巨大IT企業やヘッジファンドが、巨額の資金をロビー活動につぎ込み、自らに有利な税制を確立した。同様の事は世界中で起こっており、資本主義国家は階層化が進んでいる。その事への不満が、トランプ旋風であり、黄色いベスト運動の根幹にはある。
過剰なナショナリズムの行き着く先は、様々な歴史的事例を挙げるまでも無く明らかだ。
ローマ帝国、大英帝国、世界の覇権を狙った国々は、繁栄と衰退を繰り返し歴史から消えて行った。
しかし現代は、彼らが槍や大砲で小競り合いをしていた時代ではない。一国の馬鹿な指導者が『死なば諸共』と、世界を破滅させる事が出来る時代なのだ。
人類は、それを多大な犠牲の上に学び、戦後、共存の枠組みを作った。その事を私達は忘れてはいけないのだ。