ウォルマートがAmazonを打ち負かすと断言出来る理由。

Amazonエフェクトという言葉さえ生み出した小売業界の中で、実店舗の逆襲が始まろうとしている。その原動力となっているのが、生鮮食品分野だ。

1兆5000億円もの巨額投資での、大手生鮮食品スーパー『ホール・フーズ』の買収や、Amazonフレッシュという新サービスで、実店舗を基盤とした食品事業に乗り出したAmazonであるが、思った程の成果を上げられていない。

その原因となっているのが、『物流』だ。

生鮮食品をネットで扱う際の、最大の難点は『コールド・チェーン』の存在だ。

これは、常温で輸送出来る他の商品とは異なり、物流の過程で冷蔵(冷凍)車や冷蔵(冷凍)倉庫の存在が不可欠な上、敏速な配送が要求される。全国的なサービスの展開を考えた際に、これらを整備するコストは、ネットの優位性を打ち消してしまう。

一方、ウォルマートのような実店舗を持つ業態にとっては、これが逆にプラスに働く。それは、店舗を倉庫兼配送拠点として利用出来るからだ。
米国国民の90%が、半径10マイル(16㎞)圏内に収まるという店舗網を持つと言われているウォルマートは、この点に絶大な優位性を持つのだ。

現在、小売実店舗はオムニチャネル化に注力しており、専用のストアアプリを用いたシームレスな買い物体験を導入している。つまり、実店舗がEC側の市場を侵食しているのだ。

これにより、ネットで注文して店舗で受け取る、又はインスタカートのようなデリバリー業者を利用して自宅まで配達して貰う、というサービスを利用する事で、本来のECの欠点を補っているのだ。利用者にしてみれば、いつも買い物している実店舗の野菜なら、商品を見なくても安心して購入出来るし、1時間で配送して貰えるなら、家に居ながら、よりリアル店舗に近い形の買い物体験を得られるのだ。

食品分野は、数あるECの中の一分野に過ぎない。
では、なぜこの分野が重要なのかと言うと、その市場規模やEC化が遅れている、という側面もあるが、重要なのは使用頻度だ。

人間は、一番良く使うサイトにロイヤリティを持つ性質がある。
つまり、頻繁に使用するサイトでは、様々な『ついで買い』が期待できるのだ。利用者にとってみれば、1回の配達で済んでしまった方が利便性が高く、時間も節約にもなる。

現在、小売業界ではオンラインと実店舗の境目がなくなりつつある。
つまり、AmazonなどのEコマース業者は、実店舗への展開を進め、ウォルマートに代表される実店舗は、Eコマースに進出している。つまり、オンラインとオフラインというセグメントで分ける事が、無意味になりつつある。

その為、この両者が1つの土俵での勝負を強いられる時、その勝敗を分けるのが『物流』だ。なぜなら、消費者にとってベストな買い物体験とは、ネットで得られる大量の『選択肢』と、実店舗のように商品が直ぐに手に入る『即時性』にあると言えるからだ。

この観点で、『物流』を見て行くと、都市の郊外に大規模な流通センターを建設して、そこを拠点として配送すると言う従来のやり方では対応出来ない。これでは、拠点を集約する事でコストは下げる事が出来るが、スピード面で対応が出来ないのだ。配送スピードを上げる為には、人々が生活する場の近くに在庫を確保する必要がある。

実店舗の強みは、店舗を倉庫として活用する分散在庫にある。
実際に、中国のアリババ傘下の生鮮スーパー『フーマー・フレッシュ』では、店舗から半径1キロ以内であれば、ネット注文後30以内で配達する、というサービスを行い好評を博しているのだ。

この全国に張り巡らされた店舗網と、その間の物流網は、一朝一夕に真似出来るものでは無い。それには、膨大なコストとノウハウが必要なのだ。
現在、Amazonは実店舗への投資を進めているが、まだまだ弱点を補うには至っていない。

Amazonが模索を続ける中、ウォルマートやターゲットと言った実店舗小売業者は次々と食品ECに進出し、年率40%強の凄まじい成長スピードを遂げている。これは、Amazonの食品事業が10%前後の成長率という事を考えると、脅威的と言える。勝ちパターンを確信しつつある実店舗に対し、Amazonが今後どのように戦って行くのか、風向きが変わりつつあるのは確かだと言えるのだ。