Amazonやアリババを悩ます『返品』は、必要悪なのか?

先日、Amazonで母の為にスマートフォンを購入したのだが、届いた商品を使ってみると充電が出来ない。どうやら在庫中に完全に放電してしまい、バッテリーが壊れてしまったようだ。クレームを上げてバッテリーを新品と交換して貰う事も考えたが、やり取りに時間が掛かりそうだったので、今回は『返品』することにした。

届いた商品を梱包し、郵便局に持って行き着払いで発送をお願いしたのだが、その際の送料が850円だった。勿論、これはAmazonが負担してくれるので、私が払う必要は無いが、意外と高い送料に驚いたのも確かだ。

日本人は、一度購入した商品を返品するという行為は、余程の事が無い限り抵抗感を感じる。しかし、米国では返品は当たり前の行為だ。
私達には驚くべき事だが、米国では、あらゆる店があらゆる商品について理由を問わず、返品に応じる。それが、例え殆ど食べてしまった食品であってもだ。

このアメリカの消費社会に根付いた『返品文化』は、意外と歴史は古い。
それは、1800年代後半まで遡る。当時は、まだ自動車も普及しておらず、人々は近くの店舗の少ない選択肢と高い値段で買い物するしかなかった。

そんな人々の不満を解決したのが、シアーズが開発した通信販売だ。

人々は、カタログに載っている当時としては、膨大な数の商品の中から選び、小切手を送る。ただ、カタログという少ない情報量の為、シアーズは、カタログの最後に、『商品が気に入らなければ、お気軽にご返品下さい。』と記載した。この文化が、現在も続いている訳だ。

全米小売業協会のデータによると、米国の小売業での返品率は12%にも達する。
商品を実際に見る事が出来ないネット販売では、当然、返品は不可欠な物となっており、米国のホリデーシーズンや、中国の独身の日などの期間では、実に25~30%の商品が返品されるのだ。これは、思っていたイメージと違ったという物から、予め返品を想定して様々なタイプの商品を購入、その後に気に入った物以外を返品するという確信犯的なものまで、存在するのだ。

Eコマース業者にとって、この返品は頭の痛い問題だ。
返品に掛かる送料の負担は当然として、送り返された商品の仕分け、また、再販できれば良いが、Amazonでは、返品商品の内の半分以上が再出品負荷と判断され廃棄されるのだ。

このような状況の中、Eコマース業者の取れる方策は限られている。

あるアンケート調査によると、米国のオンライン消費者の63%は、購入前に返品ポリシーを確認し、48%は面倒の無いリターンポリシーの店で購入するとあります。その上、60%の消費者は年1回以上の返品・交換を行っており、ポジティブな返品・変更をした消費者の95%は、その店で再購入をしている、という結果が出ているのだ。

つまり、EC先進国の米国や中国では、『返品』自体がマーケティング・ツールとして活用されているという側面があるのだ。その為、業者の中には返品伝票を予め同封する業者や、集配の手配まで行う事例まで存在するのだ。

ただ、忘れてはならないのが、この返品に掛かるコストは商品価格に転嫁されるという事だ。
私達は、ネット購入のメリットは、店舗家賃などの固定費が掛からない為に安くで購入出来るというイメージを持っている。しかし、今では返品問題や、配送スピードを上げる為の分散在庫などの問題により、そのコスト的優位性は薄れつつあると言えるのだ。

ただ、このような社会的課題を解決する事に、大きなビジネスチャンスがある事も確かである。
中でも、米国で展開する『HAPPY RETURN』などは、まさに三方良しとも呼べる秀逸なビジネスモデルだ。このように今後、人工知能やVRなどを活用する事で、新しいビジネスが生まれる余地は、非常に大きい領域と言えるのだ。