難しい判断を迫られる孫正義氏。DiDiに新たに16億ドル出資か?

米国のニュース専門チャンネルCBNCのインタビューの中で、ソフトバンク・グループCEOである孫正義氏が、中国ライドシェア大手である滴滴出行(DiDi)に対し、新たに16億ドルの追加出資を行う事を述べた。

尚、出資の中身についてソフトバンクG単体か、それともビジョンファンドを用いた共同出資かについては、明言を避けたようだ。

ライドシェア事業は、ソフトバンクGの生命線だ。

現在、世界中のライドシェア企業の企業価値は度重なる資金調達により、増加の一途を辿っている。しかし、それとは裏腹に多くの企業が、毎年1000億円以上の赤字を計上している。
これは、以前に記事で述べたように、このビジネスモデル自体が自動運転技術をベースとしており、自動化が達成出来ない限り黒字化は難しい状況なのだ。

実は、昨年2018年はライドシェア業界にとって重要な年となる筈だった。
それは、同年に計画されていた2つのイベント、

・グーグル傘下のウェイモによる自動運転タクシーの本格輸送の開始。
・GM社の自動運転部門であるGMクルーズによる、NY市内での走行実験の開始。

が、自動運転元年を暗示させたからだ。

しかし、これらはある事件により無期限停止へと追い込まれる。
それが、まだ記憶に新しいUberの実験車両による死亡事故の発生だ。
ニュースは、衝撃的映像と共に瞬く間に世界中に広がり、その余波の影響で上記の2件の実証実験は取り止めとなってしまったのだ。

アリゾナ州テンピで発生したこの事故では、車載センサーが事故の6秒前に歩行者を探知してたにも関わらず、緊急ブレーキが作動しなかったのだ。

この事件を期に、自動運転に対する楽観的な意見は吹き飛び、危険性が大きく強調されるようになった。まさに、世論を一変させてしまったのだ。

この事件の影響で、Uberは9ヵ月に渡り公道での実証実験を中止し、プログラムの全面変更を迫られる。また、計画されていたGMクルーズのNY州でのテストも頓挫。ウェイモの無人実験も、結局は運転手が座った状態での実験に変更されてしまった。

・滴滴出行に降りかかる度重なる試練…

更にこの事件から3か月間、更なる試練が滴滴出行(DiDi)に降りかかる。
それが、ライドシェア運転手による2件のレイプ殺人の発生だ。

これにより、市当局はサービス禁止を勧告。その後、全国的なサービスの一時停止に追い込まれる。
結局この事件を期に、規制の強化が行われ、ライドシェアのドライバーになる為の資格が厳格化されてしまう。そして、それによるコストの上昇が、同社の経営に大きな影響を与えるのだ。

・難しい判断を迫られるソフトバンクG

ライドシェアに重点投資を続けるソフトバンクGの最大の関心事は、自動運転の技術が確立するのが先か、資金が底をつくのが先か、という問題だ。

実際、今年二月にはビジョンファンド最大の出資者であるサウジアラビアが、同ファンドに対して不満を募らせているという記事が、ウォールストリート・ジャーナルに掲載された。
具体的には、投資先企業の評価額の高さと、孫正義氏の影響力の大きさ、という2点についてだ。ここでは明確に述べられていなかったが、これがライドシェア企業への投資を指している事は、容易に想像できる。

現在、完全な自動運転に関し、その達成に掛かる時間は予想出来ない。

自動運転技術は、0~5の6段階で示されるが、運転の主体が人間から機械へ移行するのは、レベル4からだ。このレベルでは、高速道路などの限定された場所では、運転をシステム側に任せる事が出来るが、アラートが発せられると運転を人間が変わらなくてはならないという段階だ。
このレベル4の到達目標として各社が挙げているのが、以下の期間だ。

・ホンダ  2025年
・トヨタ  2021年
・BMW    2025年
・メルセデスベンツ  2023年
・フォード  2021年

ただ、自動運転の商用化にはレベル5の技術が必要とされる。
それには、さらにそこから数年が必要だと思われる。

・不確実性に満ちたライドシェアの未来。

結局のところ、この事業は不確実性に満ちている。

仮に、再度同じような交通事故が発生した場合、事業化の時期は年単位で左右されてしまうのだ。さらに滴滴出行(DiDi)には、中国政府と言う政治リスクも存在する。
現状、毎年垂れ流される数千億円もの出血を止めるシナリオの策定が最優先だ。事業の中には、フードデリバリーなど利益の出ている領域もあり、とにかく今は、『日銭』を稼げる事業を立ち上げて行く必要がある。

ライドシェア市場の将来性に関しては、疑う余地は無い。
しかし、問題は事業化するまで資金を維持出来るかどうかにある。
実際、自動運転技術が確立しても初期の車両価格は、かなり高額になる事が予想される。その車両代を賄う資金も必要で、黒字化までには、かなりの年月が必要なのだ。

私が恐れるシナリオは、米中も貿易摩擦により世界的不況に突入し、これらライドシェア企業への資金が枯渇してしまう未来だ。そうなれば、結果的にソフトバンクG単体で、業界を支える事にも成りかねない。

現状、これらライドシェア企業は輸血を続けなければ、資金がショートするのは明白だ。その前に、自動運転技術が確立するか。まさに時間との闘いと言えるのだ。

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