なぜ、ソフトBはピザ屋に400億円もの投資をしたのか?

孫正義氏率いるソフトバンクGは、『ソフトバンク・ビジョン・ファンド』を通じて、世界中の様々なスタート・アップに投資している。
2017年以降、100件以上の案件に参加し、その総額は556億ドルにも及ぶ。彼らが投資を行う重点分野は、モビリティ、フィンテック、ECと多義に渡るが、その中でも異色な存在が、本日ご紹介する米国の『ズーム・ピザ』だ。

彼らの事業領域は、その名の通りピザ屋だ。
ソフトバンクGは、昨年末に同社に対して3億7500万ドルの投資を行っている。
では、同社は果たして、どんな企業なのか?、それを詳しく見て行きたい。

彼らは、所謂『宅配ピザ』を生業とする。
しかし、ただのピザ屋では無い。彼らが提供するピザを作り出すのは『ロボット』なのだ。
彼らのビジネスモデルは明快だ。トラックの中にピザ製造ロボットを積み込み、ピザを作りながら顧客のもとに移動する。それにより、注文に敏速且つ正確に対応出来ると共に、配送に掛かる時間も5~20分も短縮できるのだ。勿論、商品も出来立て熱々の状態でデリバリーが出来る。

利用者は注文をオンライン、もしくは専用アプリで行う。
14インチ(36㎝)のピザの値段は、配達料込みで10~20ドル(1100~2200円)。おまけにチップも必要無い。因みに、競合のドミノ・ピザが15ドルからでトッピングをすると更に価格は上がる。その上、デリバリーには3ドルが必要になるのだ。

また、同社は顧客データの分析にも長けている。
同社の分析によると、顧客は同じ曜日の同じ時間帯に、ピザを注文する傾向がある。このデータを基に、注文を受ける前に、必要な数のピザをクルマに積み込み、周辺に待機させておく。そして、車内には6台のオーブンが据えられており、1時間に70枚のピザが焼けるのだ。

今までだと、常に店との往復を余儀なくされた宅配ピザであるが、データに基づく効率的な配達が可能になった事で、その生産性は飛躍的に高まったのだ。

アメリカ人は、ピザが大好きだ。
その市場規模は450億ドル(5兆1千億円)にも及び、その市場規模は着実に増加している。しかし、だからと言ってソフトバンクGがピザの宅配業に進出する訳では無い。彼らがズーム・ピザに関心を示すのは、この新しい取組みを横展開出来るからだ。

以前、『ゴースト・レストラン』が世界中で急増している、という記事を書いたが、このトラックで調理するという方法が確立すれば、それさえ必要なくなる。デリバリーと厨房の機能を兼ねる事が出来るのだ。

また、飲食業に留まらず、将来的に3Dプリンタをトラックに積み込み、商品を製造しながら配達を行う、という事まで可能になるかもしれないのだ。
つまり、メーカーは製造業の枠からはみ出し、製品データのみを販売。そのデータを受けた流通業が、ロボットにより商品を製造しながら、顧客の下に届けるという未来だ。

ロボティックスの進化により、これから製造業の在り方は大きく変わることになる。そして、それが目指すものは究極のD2Cだと言える。

つまり、顧客はオンラインや専用のスマホから、自分の好みに合ったカスタマイズされた商品を注文し、それらをロボットが製造するという究極の多品種少量生産の確立だ。当然、このやり方を採用するとなると、今までの卸業など、顧客との接点を邪魔する存在は、確実に淘汰されることになる。つまり、製造業が変わると、流通やサプライチェーンも変わらざる負えないのだ。

もはや、この流れは不可逆のように思える。
ただ、顧客にとっても全ての商品に関し、選択肢を与えられる事は逆に煩わしく感じるものだ。その為、メーカー側は、ビックデータを駆使する事で、顧客が選ばなくても、個々にカスタマイズされた最適な商品を届ける努力をしなければならない。その為、今後『データ』の価値は、益々高まって来ると言えるのだ。