Tモバイルとスプリントの合併計画に暗雲。米司法省が不承認の意向。

ウォールストリート・ジャーナルの報道によると、米携帯大手のTモバイルとスプリントの合併案に関し、米司法省が現在の計画では承認出来ない可能性が高い事を、両社に通達したと報じた。これにより、スプリントの最大株主であるソフトバンクGは、大幅な戦略の変更を強いられる可能性が出て来た。

16日、両社の合併案に関し、司法省が不承認の意向を示した事で、スプリントの株価は、時間外で10%を超える下げ幅を記録した。それに伴い、翌17日のソフトバンクG株価も2%近い下げで始まり、ウーバーのIPOと自社株買いにより盛り上がった同社の株価に水を差した形だ。

市場が、このニュースに敏感に反応するのは、差し迫った5Gネットワークへの整備費用の負担が、合併が無くなる事で飛躍的に高まることへの警戒感があるからだ。

オバマ政権時代に頓挫した合併計画を、3年後、再びトライする方針を固めたのは、通信行政のポリシーを決めるFCC(米連邦通信委員会)のメンバーが、政権交代により入れ替わる事で、その方針が、より寛容な物となる事を期待したからだ。

ただ、通常これらの合併では経営効率化の為の人員削減が不可欠だ。
特に設備のメンテナンスやサービス人員配置の為、大量の雇用を生み出だしている通信キャリアの場合、将来的に数千人規模のレイオフが実施される可能性が高い。(両社は合併により、より多くの雇用が創出されると主張している。)

結局のところ、米国での雇用維持と創出をスローガンにしたトランプ政権は、この合併案に対しNOを突き付けた事になる。

ソフトバンクGと言うと、ライドシェアや人工知能というイメージを持たれる方が多いと思うが、同社にとって5Gは、それらを支えるインフラとして非常に重要な意味を持つ。つまり、IoTを支えるセンサーネットワークや自動運転制御にとって不可欠な存在と言えるのだ。

しかし一方に於いて、その整備に掛かるコストは莫大だ。
その額はある調査会社によると、2025年までに米国全体で35兆円にも及ぶ。

そして、それらの投資が本格化するのは2020年以降と、すぐそこまで迫って来ているのだ。
勿論、これら全てをスプリントが負担する訳では無いが、業界4位の同社が生き残る為には、少なくても数兆円(Tモバイル・スプリントは合併後、3年間で4.3兆円の5G投資を予定している。)の投資が必要なのだ。

この費用を如何に調達するか?
この事が、現在ソフトバンクGにとって最大の課題だ。

既に高利率(利払いのみで2700億円/年)の莫大な債務を抱えるスプリント(4兆円の債務)にとって、市場から更なる資金を調達するのは容易な事では無い。そうなると、そのファイナンスに関しソフトバンクG自体が貸付・債務保証等、何らかの形で関わる必要性が出て来る。この事は、子会社の独立採算制の下、完全持ち株会社への移行を進める同社の方針に対し、大きな妥協を強いる可能性があるのだ。

さて、このまま両社の合併が頓挫した時、ソフトバンクGは大きな決断を迫られる事になる。つまりは、損失覚悟で手放すか、それとも単独で続けるか、という決断だ。

トランプ政権の合併への方針が明確になった以上、買い手を見つける事は骨の折れる作業だ。ただ、単独で続けるにしても日米両市場で数兆円にも及ぶ費用を負担する必要があり、現実的では無い。その上、ファーウェイやZTEの製品が使えない事で、更なる出費と時間を要する事になるのだ。

今回の事態は当然、孫社長は想定していただろう。
彼は一見無謀とも言える大胆な戦略を取りつつも、ある意味に於いて非常に抜け目ない老練な経営者だ。ただ、そんな彼をもってしても今回の決断は、非常に難しい経営判断だと言える。今後、同社がどのような方針と戦略を打ち出して行くか、注視していく必要がある。