アリババ傘下のスーパー『盒馬鮮生』が最先端と断言出来る理由②

小売店にとって、最重要とも言える要素が出店戦略だ。

商圏の正確な需要を計算し、適切な場所に適切な規模の店舗を作る。この事が、ビジネスの成否を分けると言っても過言では無い。実はフーマ・フレッシュは、この領域に強みを持つ。その鍵となるのが、ビックデータと人工知能の存在だ。

アリババ傘下の金融子会社『アント・フィナンシャル』が運営するアリペイは、今や10億人が使用する電子決済ツールだ。中国の都市部では、既に財布を持たずに生活する人が20%前後存在すると言われており、人々の生活に不可欠な存在となっている。

この『決済』から得られる情報は膨大だ。

それは、お金の使い方は人間そのものを映し出す鏡のような存在だからだ。
人々のお金の使い道を見て行くと、その年収や社会的地位だけでなく、趣味や家族構成、それにスマホのGPS情報を組み合わせる事で、生活圏や行動範囲まで様々な情報が、まさに筒抜けになってしまう。

このビックデータを活用する事で、かなり正確な商圏分析が出来てしまうのだ。

そこで、彼らが最も重視するのは『立地』では無く、『地域性』だ。

具体的には、彼らのビジネスモデルはECを主体としている為、『最もお金を使い、最もECを利用する属性の住人が住む半径3㎞の地域(人口30万人規模)』を設定する事から始める。
そして、彼らが目指す場所は、その円の中心だ。

フーマフレッシュの本質が、デリバリーを主体とした『倉庫機能』である以上、立地や店舗の視認性と言った従来の指標は、それ程重要では無いのだ。

その為、人通りが少なかったりテナントが2階だったりと、一見してその戦略性は理解しずらい。しかし、そのような状況は店舗が開店すると同時に激変する。人の流れ自体が変わってしまうのだ。

・店内に散りばめられた最新テクノロジー。

フーマ・フレッシュは、会員制スーパーだ。
利用者は、予め専用のストアアプリをダウンロードして、それを自分のアリペイの口座と紐づける事で、会員登録が完了する。

このストアアプリが、実は利用者の利便性に大きく寄与していると言える。

中国人にとって、食の安全性は切実な問題だ。
その為、フーマ・フレッシュでは食材のトレーサビリティを重視している。

利用者は、このアプリを用いる事で商品の安全性を確認出来る仕組みが存在しているのだ。
具体的には、商品には全てQRコードが提示されており、それをスキャンする事で産地から店舗に届くまでの全履歴が開示されるのだ。利用者はそれにより、その食材がどこで収穫され、いつ店舗に運ばれたかまで分かるようになっている。

また、この専用アプリでは履歴だけでなく、具体的な調理法なども紹介している。
商品が気に入れば、スマホを使ってその場で決済が出来る為、わざわざレジに並ぶ必要も無い。
購入した商品に関しても、持って帰りたい物は手持ちのカゴに入れれば良いし、重いので配達して貰いたいなら、アプリ上のカゴ入れれば良いのだ。

また、料理が面倒なら調理の依頼もスマホ上から依頼できるなど、まさに至れり尽くせりな状況だと言える。

商品を持ち帰りたい人には、専用の無人レジが存在する。
ここで利用者は、自分で商品をスキャンして決済を行うが、十分な数の無人レジが配置されている為、殆どの場合は並ばずに終える事が出来る。

日本のスーパーのレジでは、行列が常態化しているが、オムニチャネル先進国の米国や中国では、如何に効率的に買い物が出来るかという点を重視して、店舗設計がなされている。

・流通を制するものが、小売りを制する。

フーマ・フレッシュの事例を見れば、既にオンラインとオフラインという定義には、何の意味も無い事が分かる。既に両者は融合し、1つの完成した小売業態となっているのだ。そして、ここで重要な役割を果たしているのが『物流』だ。

注文した商品が30分で届くなら、利用者にとってネットショッピングという意識は、殆ど無くなると言っても良い。時間軸で見るなら、目の前にある商品を買うのと変わらないからだ。

しかし、利用者が何気なく利用するフーマ・フレッシュには、細部まで考え抜かれた緻密なシステムが存在する。結果的にフーマ・フレッシュは、店舗面積当たり3.7倍という売り上げを記録し、売り上げが店舗の大きさに依存しない状況を作り出す事に成功したのだ。

共産主義国家の中国では、且つて社会のあらゆる部分に行列が存在した。

そんな効率性と無縁とも言える国が、一夜にして変わってしまったのだ。その事に関し私自身、信じられない思いは拭いきれないが、現在の中国は、小売りの世界で最先端を行ってる事を認めざる負えない。そして、その象徴が『フーマ・フレッシュ』なのだ。

確かに同じ小売先進国である米国も、決して無視出来ない。
しかし私から見ると、彼らは少し技術偏重型に見えてしまう。その点に於いて、中国人は非常に合理的で、ハイテクとローテク(人海戦術)を組み合わせて『便利さ』を最優先するという明確な意思を感じるのだ

このような状況を踏まえ、日本の小売業を見て行くと、残念ながら遅れていると言わざる負えない。

これは、Eコマースの普及に関しても言える事だが、物事の革新は『不満』から生まれる。

食の安全や、メッシュ状に張り巡らされた小売店が存在する日本では、明確な不満が存在し難いのだ。つまり、車で10分も走れば小売店が存在する為に、『わざわざ』ネットで買う必要性は無い。この『便利さ』が、イノベーションの妨げになってしまっているような気がしてならない。

ただ、世界的潮流として小売業のオムニチャネル化は、ますます進展して行く。
オンラインとオフラインという垣根は無くなりつつあるのだ。

元来、このようなきめ細かなサービスは日本の得意分野と言える。その顧客本位の意識に、テクノロジーを如何に融合出来るかが重要だ。『不便さ』は悪、そんな時代がやってこようとしているのだ。