アリババ傘下のスーパー『盒馬鮮生』が最先端と断言出来る理由①


小売業のオムニチャネル化が進む中、世界的に注目を浴びているのがレジ無しスーパーの『Amazon Go』だ。同店は、店舗内に様々なセンサー・カメラを配置し、システムが利用者が何を買ったかを認識、会計処理無しに店を後に出来る。

この最新鋭の画像解析技術を用いた未来型店舗は、世界中で大きな話題を集めたが、世界には更に進化した店舗が存在する。それが、中国のネットEC大手のアリババ傘下の生鮮スーパー『盒馬鮮生』(以下フーマ・フレッシュ)だ。

世界中どこでも存在する生鮮スーパーであるが、この店舗の脅威的な部分は、店舗の売上の60%、過去半年に開店した店舗に限定すれば70%が、ネット経由の注文という点にある。
ECとの親和性の低いと言われる生鮮食品で、これだけの数値を実現している店舗は、世界中を見渡しても類を見ない。

フーマ・フレッシュは、現在世界的トレンドの中にある『グローサラント型生鮮スーパー』だ。
この業態は、グロサリーとレストランを掛け合わせた造語で、店内で販売されている生鮮商品をその場で調理して食べさせてくれる、体験重視型の店舗を指す。

・実店舗を倉庫機能として利用したフーマ・フレッシュ。

フーマ・フレッシュの本質は、生鮮ECにある。

生ものや新鮮な野菜をネット経由で販売する場合、ネックとなるのがコールドチェーンの存在だ。

つまり鮮度を維持する為には、倉庫や配送車に冷凍・冷蔵設備が不可欠なのだ。この事が、商品のコストを上昇させてしまう。この課題に対し、フーマ・フレッシュは、逆転の発想からアプローチした。つまり、倉庫を利用者の近くに持ってきたのだ。

このように、フーマ・フレッシュは店舗機能・倉庫機能・ショールームという3つの側面を持っている。利用者は、店舗に直接訪れる事で商品の質を確認でき、尚且つ、その場で調理して食べる事も出来る。また、店舗を倉庫として用いる事で、新たにコールドチェーンを整備するコストを削減出来るのだ。

・ネット注文の30分以内配送を実現。

フーマ・フレッシュの最大の特徴は、ネット経由での注文後、店舗から半径3キロ圏なら30分以内に配送をしてくれる点にある。実は、この30分というのが非常に重要になる。なぜなら、この時間は人間が待っていられる時間だからだ。

誰でも経験があると思うが、ネットでの買い物は意外と面倒だ。
商品が届くと思われる時間帯では、ちょっとした外出も出来ないし、シャワーすら躊躇してしまう。
しかし、これが30分ならピッキングの時間などを考慮して考えると、商品が届くと思われる時間帯は、せいぜい15分間だ。この、商品が届く時間帯が正確に分かる事が、何より重要なのだ。

これにより利用者は、例えば仕事帰りの電車の中でスマホ注文を行い、家に到着すると同時に商品が届く、というような使い方が可能になる。その上、グローサラントという店舗形態により、商品を調理した状態で届けて貰う事まで可能なのだ。

では、果たしてフーマ・フレッシュは、どのようにして30分以内の配送を実現しているのだろうか、具体的に見て行きたいと思う。

実は、これは想像以上に困難を伴う。
それは、配達スタッフの配置が問題なのだ。つまり、人員を増やし過ぎるとコストは上昇する一方、配送員を遊ばせる事になる。逆に、少な過ぎると30以内の配送が実現出来ない事になる。このバランスが非常に難しいのだ。

これらの要因が、店舗側として積極的に配達を誘引出来ず、デリバリー比率を上げる事を困難にしている。事実、競合他社のデリバリー率は20%前後で推移している。
では、なぜフーマ・フレッシュは、70%にも及ぶデリバリー率を達成出来たのか、実はこのアプローチが興味深い。彼らが行った施策とは、

『なりふり構わず、1日5000件のデリバリー・オーダーを獲得する事だ。』

つまりは、こうだ。
彼らは、店に買い物に来た利用者にひたすら声掛けを行い、今買った商品を無料で自宅に30分以内で配達させて貰う。利用者は、重い荷物を持って家まで帰る苦痛から解放されるので、無料ならと頼んでしまう。この経験は、既に商品の鮮度は確認済みなので、次回はネットで注文した方が楽だ、という消費者の意識を沸かせるのには十分なのだ。

コンスタントな注文を確保出来たら、後はオペレーションの問題だ。

フーマ・フレッシュの店内には、水色のポロシャツを着たピッキング専門のスタッフが50人前後存在する。ネット経由で入った注文は、彼らのスマホに直接表示される仕組みで、注文が入ると同時に彼らは店内を廻りピッキングを始める。

そうやってピッキングされた商品は、天井に配置されたコンベアー式のレールにより、配達員が待つバックヤードに運ばれるのだ。

注文後10分程でピッキングを終えた商品は、バックヤードに運ばれる。
それを受け取った配達員は、電動自転車に乗って利用者の下に走るのだ。

また、フーマ・フレッシュは積極的に多店舗展開を推進している。
これにより、配達員は特定の店舗に属するのではなく、需要に合わせて店舗間を自由に行き来することで、効率的な人員の配置を実現しているのだ。

フーマフレッシュの秀逸な所は、この出店戦略にある。
実は、ここにアリババの持つ驚異的システムが存在するのだ。それについては、次回の章に続くことにする。