Amazonが中国から撤退 !? その戦略的失敗と覇権の行方。


4月17日、ECの巨人であるAmazonが、中国のマーケットプレイス事業からの完全撤退を発表した。

米国を中心に、英国・ドイツ・日本では競争優位に立つ同社であるが、アジアの巨大市場である中国に於いては、業界6位・市場シェアが0.7%と、常にアリババ、京東という大手に対し、後塵を拝してきたのだ。

中国のEコマース市場では、T-MALLを運営するアリババと、京東の2強で市場シェアの80%以上を押さえている。そんな中、Amazonは全くと言って良い程、存在感を示す事が出来なかった

・2004年、Amazonが中国市場に進出。

Amazonの中国市場への進出は、2004年に遡る。

Amazonは、現在シャオミの創業者である雷軍氏が創業したネット書店、卓越网(Joyo.com)を買収する事で中国市場に参入を果たした。対するアリババのT-MALLは、Amazon参入の1年前である2003年に設立されている。当時は、T-MALLもまだ無名の弱小企業であり、両社は、ほぼ同時に、その歩みを始めた事になる。

因みに、この時期の中国のEC市場の90%を押さえていたのは、米国大手のEbeyだった。

・Amazonが陥った、致命的な戦略ミス。

2004年を中国Eコマース市場の元年とするなら、横一線でスタートしたレースは、その後3年で勝敗を決する事になる。それには、Amazonの戦略的な失敗が存在したのだ。

Amazonが陥った最大の失敗は、本国でのやり方をそのまま中国に持ち込んだ事にある。

つまり、中国特有の商習慣や慣習に対しローカライズを怠ってしまったのだ。
ebey・Amazonが最初に行った事は、買収した企業のシステムを廃し、自らのシステムを完全移植する事だった。しかし、欧米と違いクレジットカードは疎か、銀行口座すら持たない人が多い当時の中国では、決済面に大きな問題を抱えることになる。

・海賊版や偽ブランドが横行。

Amazonの参入当時、中国のEコマース市場は海賊版や偽ブランドで溢れていた。
Amazonが84億円で買収した卓越网(Joyo.com)は、度重なる海賊版の発覚に、忙殺されてしまう。

一方、アリババのT-MALLは、この商品の『信用』に注意を払った。
つまり、間にアリババが介入する事で代金を一時的に預かり、顧客が商品を確認した後、問題が無ければ業者に代金を振り込むと言う方式を採用したのだ。これにより、海賊版を扱う業者は、次第に淘汰されサイトの信頼度も年々増す事になる。

売り手を信用しない中国に於いて、『取引の安全性』こそが何より大切だったのだ。

・アリババはプラットフォームを無料開放。

Eコマースに於いて重要視されるのは、品揃えと価格だ。
Amazonやebeyが、売り手からコミッションを得る従来のやり方を踏襲したのに対し、アリババは最初にプラットフォームを無料開放する事で、多くの売り手を囲い込む事に成功した。

結局のところAmazonとebeyは、この3年間に本国のシステムをそのまま導入する事に悪戦苦闘する間、アリババは、ひたすら市場の拡大に邁進する事になる。この事が、決定的な差を生んでしまったと言える。

現在Amazonは、全世界から200万社が商品を供給している。
対するアリババのサプライヤーは850万社にも及ぶのだ。この為、同じ商品を複数の業者が販売すると言う事が常態化しており、壮絶な価格競争が繰り広げられている。

この『安さ』が、中国人を惹きつけている要因でもある。

・物流面でもAmazonは、強みを発揮出来ず。

Amazonの強みは、その物流機能だと言える。
しかし、中国ではこの点も裏目に出てしまった。
Amazonは、中国全土に17カ所もの物流センターを設けて、メーカーからの在庫を管理。注文に応じて全国に発送すると言う従来の方法を採用した。しかし、その運営コストは莫大で、その額は営業収入の8%に及ぶ。

一方アリババは、日本の楽天のように出品店側が配送を担う為、Amazonのように、自社で物流センターを作る必要が無い。
その上、業界2位の京東はAmazonと同様に自社での配送システムを採用しているが、その規模はAmazonを遥かに凌ぎ、全国130カ所にも及ぶ物流センターを整備しているのだ。

この両社に挟まれたAmazonは、どちらに対しても優位性を確保出来ず、非常に中途半端な立ち位置に追い込まれてしまう。

・対決の場はインドへ…。

結局Amazonは、中国市場に於いて『質』『量』『スピード』という全ての面に於いて優位性を築けなかった事が、敗因だと言える。中国ユーザーの総評として、模造品は少ないが、高くて遅いと言うイメージが染みついてしまったのだ。

その為、このまま中国での活動を続けるよりかは、次世代の有望市場であるインドやインドネシアと言った国々に、経営資本を投入した方が良いと考えるのは自然の流れだ。

ただ、そこには新たな巨人が存在する。
それは、インドのEコマース市場で最大のシェアを持つ『フリップカート』の存在だ。同社は、ソフトバンクGのビジョンファンドの投資を受けた後、ウォルマートに売却されている。つまり、インドではAmazon、ウォルマート、そしてアリババという小売業の3強が、初めて直接対決を行う場となる。

その上、フリップカートの創業者は、アマゾンの元幹部という事も有り、Amazonを知り尽くした存在なのだ。

一方、インド進出に後れを取ったアリババは、ソフトバンクと共にその潤沢な資金を用いて決済、物流、食品ECと言ったプラットフォームを急速に押さえつつある。

インド市場での3強の戦いの行方は、今後のアジアのEコマース市場の覇権に大きな影響を与える物だ。中国同様に社会・商業インフラが未発達なこの地は、Eコマースの『伸びしろ』という面において大きな可能性を秘めているのだ。

国連の予測では、2022年にはインドの人口が中国を抜くと予想されている。
急速に普及が進むスマホに40%を超える成長を遂げるEC市場。そのポテンシャルは、計り知れないのである。