米国の終わりの始まりと、彷徨える世界秩序。


今、世界は混沌の中にある。

それは、あらゆる国を敵対視し、孤立化を深める米国トランプ政権と、人権や民主主義を無視して拡大戦略を取る中国、それに内部崩壊を必死に食い止めようと、もがく欧州諸国に象徴される。戦後、各国が長い年月をかけて築き上げてきた協力体制や、エコシステムと言った『英知』が、その価値を失ない始めているのだ。

私個人の考えで恐縮だが、現在のこの状況を作り出す切っ掛けとなったのは『リーマン・ショック』だと思っている。それ以前の米国資本主義体制は、貧富の差は年々拡大しながらも、『機会の平等』という物が存在した。

しかし、ウォール街に代表される銀行、ヘッジファンドは、そこから得られる莫大な利益を基に、議会に対し強力なロビー活動を繰り広げ、『ルールの平等性』という自由競争の根本を踏み躙ってしまった。

結果、これだけの大恐慌を引き起こしながらも、誰一人責任を取らず、税金を投入するという愚行を犯してしまう。また、このロビー活動により富裕層への課税率は年々減少し、貧富の差が拡大、中案階級の消滅を引き起こした。この歪な体制は、そのままGAFAに代表される巨大IT企業に引き継がれ、近年、それらがもたらした貧富の差が社会不安を引き起こしている。

これらの不満を巧みに利用したのがトランプ氏だ。
彼は、『移民』という分かりやすい捌け口を設定する事で支持を獲得した。

しかし、現在の米国の病巣は、政治・教育・医療と言った『機会の平等』を担保する
分野において、過剰な資本の論理が入り込んでしまい、制度自体を歪めてしまった事に起因している。

驚くべき事に現在、米国民の2/3が500ドルの預金さえ持っていない。

前政権のオバマ氏が導入しようとした国民皆保険、通称『オバマ・ケア』が廃案に追い込まれたのは、月々の保険料を負担出来ない層が、米国民の大半を占めている為だ。虫歯の治療でさえ1本5~10万円の費用が掛かる米国に於いて、人々は、いとも簡単に住む場所を失ったり、生活に困窮してしまう。

■今年1月、米連邦予算の一時失効により政府機関が閉鎖。無料の食事の配給に並ぶ政府職員達。
米国では、公務員でさえ貧困は身近な存在だ。


フランスで問題となっている『黄色いベスト運動』に代表されるように、この貧富の差の拡大は世界的に進行しつつある。人々は、生活に困窮すると廻りへの配慮を欠き、自己中心的な行動を取るようになる。アメリカ第一主義を掲げるトランプ政権は勿論、人々の眼が内向的になってしまうのだ。この事は、世界秩序に於いて確実に混乱をもたらす事になる。

米国とEUとの亀裂が決定的になりつつある中、勢力を拡大しているのが中国だ。
行き当たりばったりの外交を行うトランプ氏に対し、中国は、かなり戦略的な対応を行っており、着実な成果を上げつつある。

日本にとって、中国の政治システムは到底受け入れがたいものだと言える。

ただ孤立化し、その世界的影響力を失いつつある米国と、覇権を争う中国の存在は、日本にとって頭の痛い問題だ。それは現状、憲法改正を行わない日本は法的な『軍隊』を持たない為、安全保障面に於いては米国に依存するか、中国に擦り寄るかという二者択一しかない為だ。

正直なところ、両国とも日本の命運を託すには、心許ない存在だ。
そんな中、日本にとって唯一有利な点は、その地政学的な立場にある。

米国にとって日本は、ロシア・中国に睨みを効かすには絶好の位置を有し、中国にとっては脅威な存在だ。日本は、この観点から自らの価値を吊り上げる『したたかさ』を発揮する必要があるのだ。

冒頭で述べたように、今の世界情勢は混沌としている。
数年前なら欧州と米国が安全保障面で対峙するなど、考える事も無かった。その意味で、今は何が起こってもおかしくない不確実性の中にあると言える。

更に、資本主義が岐路に立たされている事も認識しない訳にはいかない。
米国に代表される『行き過ぎた資本主義』は、確実に社会不安をもたらしていると言える。その為には、ルールの公平性が何よりも重要なのだ。

今後日本は、様々なオプションを用意する必要がある。
仮に世界の覇権が、米国から中国に変わった場合、日本にとっては大問題だ。

年間50兆円以上もの財政赤字を垂れ流し続ける米国は、基軸通貨の地位を失うと存続さえ危ぶまれるようになる。そうなった場合、外貨準備高の殆どをドルで構成する日本は大打撃を受けることになるのだ。

とにかく、日本に今必要なのはバランス感覚だ。今までのように米国にベッタリという状況が通用しなくなる事も想定する必要がある。そのような状況の中、如何にしたたかに大国間を立ち回れるか、その事が重要になって来ると言えるのだ。