奨学金ローン残高が164兆円を突破。破綻寸前の米国大学システム。

米国の大学システムが破綻しつつある。

米連邦準備理事会(FRB)が開催したイベントで、現在164兆円にまで増幅した奨学金ローン残高により、システム自体が崩壊しつつあると警笛を鳴らしたのだ。

(因みに、日本の生活金融公庫により教育ローンの残高は、8800億円。)

貸出残高が増えると、当然だが融資先の質は低下する。

現在、その不良債権比率は11%にも及ぶ。
ただ、米国の奨学金ローンは通常の融資とは異なる。通常の債務は、自己破産が認められると返済の義務が免除されるが、国家が融資を行う奨学金ローンは、自己破産を行っても返済義務は無くならないのだ。つまり、その借金から逃げる術は存在しないのだ。

日本人がイメージする奨学金とは、ほぼ無金利で公的補助のようなイメージを持ってしまうが、アメリカの奨学金は、通常6%もの利子が一般的だ。その上、返済は卒業後から始まるが、利子は在学中も課される。また、仮にローン返済を延滞しようものなら、最大16%という高利の延滞手数料を請求されることになる。

・高騰する大学授業料。

このように増加の一途を辿る奨学金ローン残高ですが、その原因として挙げられるのが学費の高騰だ。ある統計によると、この20年間で2.8倍にも急騰しているのだ。
では、代表的な大学の学費について見てみよう。

・ニューヨーク大学

年間平均授業料  6万6648ドル (約 733万円)
10年後の収入の平均値  6万7000ドル

・ワシントン大学セントルイス校

年間平均授業料  6万7751ドル (約 745万円)
10年後の収入の平均値  7万100ドル

・コロンビア大学

年間平均授業料  6万9021ドル  (約759万円)
10年後の収入の平均値  8万3300ドル

・ペンシルベニア大学

年間平均授業料  6万6800ドル  (約 735万円)
10年後の収入の平均値  8万5900ドル

・イェール大学

年間平均授業料  6万6445ドル  (約 731万円)
10年後の収入の平均値  8万3200ドル

・ノースウェスタン大学

年間平均授業料  6万7887ドル  (約 747万円)
10年後の収入の平均値  6万9000ドル

・シカゴ大学

年間平均授業料  7万100ドル (約 770万円)
10年後の収入の平均値  6万8000ドル

上記のように、現在米国で名のある大学に通おうとすると、年間5万ドル(550万円)は覚悟しないといけない。つまり、4年間で2000万円近い学費が必要となるのだ。

実際には、これに寮の家賃や食費が加わるので、例えアルバイトをしていても卒業時に2000万円を超える負債を抱えることも珍しくない。この住宅ローンに匹敵する額に6%の金利が掛かるのだ。(日本の住宅ローン金利は1%以下)

・4470万人の内、1/5がローンを滞納。


『 米国経済は、何かが間違っている。』

          JPモルガンCEO ジェイミー・ダイモン

上記の言葉は、同氏が株主への書簡の中で、米国に潜む問題点の1つとして、この学生ローン問題を挙げている。

現在、米国国内では4470万人もの人間が奨学ローンを抱えており、その内の1/5が支払いを滞納している。その際は、前述のように最高16%もの延滞金が請求される事になる。ただ、以前は滞納から60日間の猶予が与えられていたが、これがトランプ政権により、この猶予期間が廃止されてしまったのだ。

・階級化が進む米国社会。

現在、日本の家庭で年間700万円の授業料を支払える人間は、果たしてどれだけいるだろうか?

米国では、医療や教育、そして裁判さえもビジネスとなる。
しかし、忘れてはならないのは、この164兆円にも及ぶ巨額のローン残高は、連邦政府や州が負担しているという事だ。いくら自己破産しても、返済の義務は無くならないと言っても、債務者に支払い能力が無ければ債務は焦げ付いてしまう。そして、その事で国家の財政は確実に悪化してしまうのだ。

また、それだけでなく、この巨額の学生ローンの返済は、確実に消費に影響を及ぼす。
そして、この事が米国民の2/3が5万円の預金すら持たない、という現実を生み出しているのだ。
では、なぜ米国人は、これ程にまで教育にお金を掛けると言えば、学歴と将来の収入(失業率)の因果関係が、日本以上に明確に存在する為だ。その為、米国人は大学に行かないという選択肢は取り難い。例え、借金漬けになると分かっていても、行かざる負えないのだ。

ただ、ここまで学費が高騰してしまうと低所得者層にとって、大学教育は最早、高嶺の花だ。
貧富の差が拡大し、階級化が進む米国社会において、その壁を超える事は年々、困難になりつつある。一方に於いて、希望を失った人間の増加は、確実に社会を不安定にする。私には最近、アメリカで頻発する銃乱射事件が、それと無関係とは思えないのだ。

教育と医療は、国家の根幹を成すものだ。
そのシステムが崩壊する事は、社会に不安と混乱をもたらす。現在、米国が宿す病巣は、この根幹に行き過ぎた『資本の論理』が存在する事にある。その意味で、私は米国型の資本主義の限界を感じずにはいられない。社会から『希望』が消え去る時、それは国家の崩壊を意味すると思うからである。