終身雇用制度の終焉。変わりつつある日本の雇用制度。

米中の小売業の最新動向をお伝えし続けている当サイトであるが、今回は、少し趣向を変えて日本の雇用制度について考えて行きたいと思っている。なぜなら現在、日本の雇用制度が大きく変わろうとしている兆候が、広く散見されるようになったからに他ならない。その兆候にいち早く気付き対応出来る者だけが生き残る事が出来る、そんな時代が訪れようとしているのだ。

2019年に入り、経団連の中西会長や、トヨタ自動車の豊田社長が、相次いで終身雇用制度の存続に関し、悲観的な意見を公の場で発表した。
これらは、あくまで彼らの『私論』としつつも、多くの上場企業が同じ問題意識を共有しているとみて間違いないと言えるのだ。

現在、世界は変革期を迎えようとしている。
そのきっかけとなっているのが、『人工知能』技術の進展だ。
且つて、ソフトバンクGの孫正義CEOが、『人工知能は全ての産業を再定義する。』と述べたように、世界的なパラダイムシフトが起ころうとしている。

特に自動車業界にとっては、天地がひっくり返る程のインパクトをもたらす。

既に豊田 章男社長は、自社のミッションに関し自動車の製造業から、移動という価値を想像するサービス業への転換を唱えている。
つまり、個々が自動車を所有する時代の終焉を宣言したに等しいのだ。

おまけに自動車業界最大の問題は、『自動運転技術』と『EV化』という二兎を、同時に追わないといけない点にある。そして、その実現の為には、莫大な研究開発費を必要とするのだ。
因みに、昨年のトヨタ自動車の研究開発費の総額は、実に1兆800億円にも及ぶ。
同社の年間の総利益が、2.4兆円(トランプ減税により、過去最高を記録)だという事を考えると、この額が如何に莫大かが分かる筈だ。

そもそも自動車と言うものは、特許技術の塊とも言える。

しかし、その多くがエンジンとトランスミッションに関わる物だ。
自動車に於いて、この2つの機関は非常に重要で、この善し悪しがクルマのキャラクターを決定づけるものだった。

しかし、中国の環境問題に端を発し、世界的に自動車のEV化の流れが加速することになる。
これにより、今まで『参入障壁』として存在していた、これら技術が意味を成さなくなり、部品数も大幅に減少。テスラを始めとした様々な新興メーカーが登場する事になる。これは、既存の自動車メーカーにとって、まさに外堀を埋めらられたに等しい事態だと言えるのだ。

また、そう言った新興メーカーだけでは無くUberなどに代表されるライドシェア業界も、大きな脅威だ。

つまり、Maas( Mobility as a service )事業において最大の利益を享受するのは、製造メーカーでは無く、プラットフォーマーだ。
このことは、既にインターネットの世界が証明している。この業界で最大の利益を得ているのは、DELLやHPなどのメーカーでは無く、グーグルやAmazon、アリババと言ったプラットフォーマー達だからだ。

業界の壁が崩壊し、まさにバトルロイヤルのような形相となった自動車業界であるが、ここに来て更に新たな問題が発生しつつある。それが、トランプ氏の存在だ。

まるで、『関税』をオモチャのように弄び、世界を不況の闇に陥れようとする彼の行動は、問題を更に複雑な物にしている。年々増大する研究開発費を賄うには、今はひたすら『日銭』が必要な時期だからだ。

この少しでもコストを削減して、利益を出さなくてはならない時期に於いて、世界中の企業は、そのサプライチェーンを崩壊させると言った危機を迎えている。

このような現状を踏まえると、多くの日本企業にとって最早、贅肉を抱える余裕などない事が分かる。今必要なのは、脂肪を取り除き筋肉質な企業体質に回帰する事だ。
冒頭で述べた中西経団連会長と豊田社長の発言は、その布石と見るべきだ。

その意味で、近い将来に雇用の流動性を担保するような法改正が行われる事は、ほぼ確実な未来と見た方が良い。それも、それは人々が思ってる以上のスピードで進展する可能性が高い。

そんな中、一番影響を受けると思われるのが中高年、それも70・80年代生まれの世代だ。

特に70年代は、謂わば悲劇の世代とも言える。

ベビーブーマーの子供世代である彼らは、幼少期から、その世代人口の多さによる競争を強いられてきた。そして、社会に出る頃にはバブル経済が崩壊しており、ひたすら、先人の馬鹿騒ぎの『尻ぬぐい』をさせられた世代だ。そして、その余波を乗り越え、ようやく管理職になった彼らは、再びリストラの危機に怯える事になる。

ただ、そのような危機を乗り越えて来たからこその『強さ』を持つのも、この世代の特徴だ。
廻りの状況に左右されず、ただ『個』に集中し生き抜く”したたかさ”を持っているのだ。

状況を嘆いても何も始まらない。この流れは不可逆な物だ。
ならば、自分が変わるしか生き残る方法は無い。その事にいち早く気付いた者だけに未来は存在すると言える。既に会社に依存出来た時代は終わったのだ。

一つ良い兆候として、日本は確実に変わりつつある。
私が若い頃は、1本のレールが存在し、そこから一旦外れてしまうと、それは人生からの転落を意味していた。多様性が存在しなかったのだ。
しかし、今は違う。確実に多様性が生まれつつあるのだ。その意味で、日本は以前より住みやすい国になりつつある。

ただ一方に於いて、多様性は『個』の重要性の高まりを意味している。

以前の日本は、考える必要のない国だった。
ただ決められたレールに乗っかって進んで行けば良かったのだ。しかし今は、何より自分で考える事が重要だ。自分の人生は、自分で切り開くと言う、当たり前の感覚が必要なのだ。その思考へといち早く転換する事こそ、今求められる事だと言える。

まず、私達がしなければならない事は、正確な情報を収集し、未来の動向を予想する事。その一助に当サイトが成れれば、有り難いと感じる次第である。